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Divided Pickupの制作(4)

前回で問題となっていたオーディオインターフェイスが入荷したので、早速購入。TASCAMの16チャンネル入力。そんなに数が必要ではないのだが、10チャンネル入力などという機材はない。4チャンネル以上になるといきなり8とか16とかになる。とりあえず5本の弦だけなので6チャンネルがあればそれでもよかったのだが、今後10本の弦全部で作ることも考え、この機種にした。

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入力はXLRコネクタ、いわゆるキャノンである。前回製作したチャンネル分岐ボックスと組み合わせるが、ケーブルはモノラル標準からキャノンプラグへ変換しなければならないが、このケーブルが結構高い。全部で5本必要なのでそれなりに出費が嵩む。諸々考慮の上、プラグとケーブル(線)をパーツで買って、自分で繋ぐことにした。面倒と言えば面倒だが、一本につき4ヶ所、全5本で20ヶ所だが大変というほどのこともない。秋葉のパーツ屋の通販で注文したが、最近何故か注文が混んでいて一週間ほどかかるようだ。時は金なり、直接買いに行くこともできるが交通費が往復で2,500円ということを考えると、やはり通販を選択してしまう。

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試作のピックアップもうまく拾えそうなので、こちらも次の段階へ進む。Divided Pickupのコネクタ部を現行のものからminiDINに交換するが、ここで一つ問題が出た。miniDINのコネクタを配線しやすくする変換基板が、どうにもうまく収まらない。苦肉の策でケース自体の形を少し変え、なんとか収まるような形にした。このケースはShapwaysで外注する。こちらもおそらく10日くらいは待たされるようだが、我慢である。

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このケースが届いたらケーブルも両端をminiDINにする必要があるな、と考えていてちょっと気分が鬱になる。というのも、このminiDINプラグ、ハンダ付けする端子が小さくて、しかも密なのでちょっと面倒である。まあ出来なくはないので我慢してやれば良いのだが。その時、ふと「両端がminiDINの6ピンのケーブルは売られてないのか?」と考えて、検索すると無いことはない。その中に見つけた言葉「PS/2」。PSといってもPlayStationのことではない。USBが一般的になった後のPCユーザーは知らないかもしれないが、USBが普及(させたのはiMac)する前にPCのキーボードやマウスを繋いでいたのはこの「PS/2」という規格だった。この規格はminiDINの6ピン。普通はキーボードやマウスから伸びているケーブルの端にこのプラグがついていた。ということはこのケーブルの延長用や両端がPS/2のプラグになっているものがあるのではないか?検索の結果、あった。辛うじて。問題はこの6ピンは全て接続されているかという点で、実際使っているのはおそらく5本。残りの1本が繋がっているかは、買ってみないとわからない。黒のケーブルが欲しかったが、この頃のPCなどの色はベージュや白っぽい色が主流。ケーブルも白しかなかったが、2.5mほどのケーブルを即購入し、テスターで全てのピンの導通を調べる。繋がってる!ということは使える!

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これで手間が一つ省けた。もっと長いのが必要ならば線を買ってきて、また作ればいい。

台風一過の日差しが眩しい午前に、ようやくケーブル用のパーツが到着。箱側の標準プラグとインターフェース側のXLRプラグ。

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それと、それらをつなぐためのケーブル(線)。ケーブルは細めを買ったのだが、思ったより細い。使えないことはないが、ちょっと心許ないというかケーブルとして見栄えがしない。標準プラグとも太さが不釣り合いだ。何か手持ちのケーブルで使えそうなものないかと探していたら、古いBNCのケーブルを見つけた。結構太くてしっかりしてるし、もう使わないのでこれを使うことにする。両端のプラグをえいやっと切り落とし、長さを測って五等分に切る。被覆を剥がし、届いたばかりのプラグを両端にハンダ付けした。一本の長さは40cm足らずだが、まあ届くだろうと推測。

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早速オーディオインターフェイスに接続する。XLRコネクタはゴツい。五本の線が並ぶと結構重厚な、というか大袈裟な感じがいかにもアナログな感じである。

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さて、繋がったので早速テストする。楽器を繋ぎ、電源をオン。信号を受けるMaxのパッチを開き、弦を弾いてみる。ん〜、音が入ってこないな。あ、ボリュームが0か。半分くらい回してまた試す。ん?まだ来ない。これはMax側の問題か。入力レベルを上げる。お、反応が出てきた。1、2弦は来てるな。あれ、3弦以降が変だ。インターフェイスのリミットインジケータは5番まで反応してるってことは入力はされてる。本来なら1から5までのチャンネルをMaxが拾うはず。だが1、2チャンネルしか拾ってない。

原因はなんだ?マニュアルを読み返したり、インターフェイスの設定アプリを起動して見たりするが、原因がわからない。ふと不安がよぎる。このインターフェイスは出力が1、2チャンネルに集約されるのでは?いや、集約もされてない。1、2以外出ていない。インターフェイスの選択ミス?ちょっと焦る。

一度冷静になって考えてみる。1から5まで入力はされている。そのうち1、2番は出力されている。ならば3から5までの入力信号はどこに消えた?入力されているのにどこにも出ないのではインターフェイスの意味がないので、1、2に限定されることはあり得ない。あっ、出ていないのではない。Maxが拾ってないのか!

Maxの方ではアナログ信号を入力するのに「adc~」というオペレータを使う。Max8ではさらにマルチチャンネルで扱える「mc.adc~」というのが強化された。つまりマルチチャンネルを一つのオペレータで処理ができる。これがなければチャンネル数分並行に並べる必要がある。今回は5本しかないので並べても、大した手間ではないが、折角なので「mc.」でやっている。ここに何かありそうだ。ヘルプを見ると、「mc.adc~」の後にアーギュメントを書き込むことで、オプションの機能を使うことができる。特定のチャンネルを入力する場合にはリストの形で入力するチャンネルの番号を書くことができる。ここは…あっ、入れてない!本来書く必要があるところをインターフェイスを購入してから書こうと思ってたので入れてなかったのだ。つまり「mc.adc~ 1 2 3 4 5」で、1から5までのチャンネルが入力できるはず。結果は…出た!ちゃんと1から5までMaxに読み込まれてる。たまに隣の弦のところにも反応してるが、おそらくゲインを上げすぎて隣の振動も拾ってしまっているのだろう。この辺りは調整次第だと思う。

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一気に目の前が開けた感じである。ハードウェア的にはほぼ完成であり、現在注文中のユニットの本番ケースが到着次第、ハードウェアの最終仕上げに移行する。

なぜか国内に到着してから、一週間以上も留め置かれた荷物がようやく届いた。仕上がりは上々、やっとハードウェアの仕上げにかかれる。現在のPickupケースは手持ちの安価なFDM(プラスチックのフィラメントを溶かして積層するもの)で作ったもので、プロトタイプとしては十分機能する。だがサイズ的に大きなものが作れないため、現在のケースも分割して出力したものを接着している。そこで最後の仕上げ用に、少し値は張るがShapewaysに注文して、出来上がったものが今回届いたもの。素材がちょっとわからないが、粉末造形でグレーのもの。素材としてはしっかりしている。

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この中に現在のものの中身を移し替える。ケーブルを繋ぐコネクタをminiDINに変更したのでその部分だけ変えるが、ケースの方も少し拡張している。写真の左上の少し出っぱった部分がそこに当たる。中身を移し替える前の処理として、内側にノイズ対策として導電性の塗料を塗布する。これはこのプロジェクト用に購入したものだが、だいぶ前に購入した導電性インクと同じ匂いがするので、あえて購入しなくてもそれを使えば良かったのかとも思う。平筆で塗布をするが、乾くまでは水溶性なので筆洗などは楽。ただし、塗料は薄めるなと書いてある。

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さらに、二度塗りが必要なこと。二度塗りまでの間隔(乾燥)は3時間。最終的には24時間の感想が必要となっている。一度目を塗り終えたので、その合間にコネクタの付け替えをする。

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6ピンのminiDIN、1番〜5番までがそれぞれの弦に対応し、6番はGNDである。写真のように各線に色が変えてあるが、単にきれいだからレインボーカラーにした訳ではない。電気(工作)の中で色を情報として使う場合がある。例えば「抵抗」のカラーコードなどである。抵抗のような小さいパーツには文字の印刷ができない(多分印刷しても見えない)ので、抵抗値などを表すのに色の帯を付けている。そのコードを読むことによって抵抗を見分けているが、色は数字を表している。例えば、茶=1、赤=2、オレンジ(橙)=3、黄=4、緑=5…のように決まっている。ちなみに黒は0である。これの覚え方もいろいろあるようだが、子供の頃に何かの工作の冊子で見た覚え方は今でも覚えている。

茶を一(1)杯、赤いニ(2)ンジン、第(橙)3の男、岸(黄4)恵子、嬰児(みどりご:緑5)… 黒髪の令(0)嬢。

時代を感じる覚え方である。現代は現代の覚え方があるのだろう。

塗料の方は乾いたようだ。24時間経ってはないが湿っているという感じでも無いので組み上げに入る。

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まず新しくしたコネクタ部の位置は合っているだろうか。うん、ピッタリだ。ネジ止めで固定。つながっているDivided Pickupも同様に固定。アウトプットのジャックがちょっときつい。リーマーで軽く広げると、すんなり入った。あとは元のものと変わらないので、そのまま固定する。ネジ穴等は特に問題はないが、蓋を閉めた時のPickupの高さがちょっと合っていないので後で調整しよう。

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全部がきれいに収まったところで蓋を閉める。特に問題なしなので、記念撮影を。

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まあ、いい出来じゃないかな?まだPS/2ケーブルの接続テストが残ってるけど。ということで早速Stickに装着。サイズは問題なし、もう少し薄く作れればなお良し。出っぱらせた部分もそんなに不恰好ではないだろう。そもそも、この2つのボリュームもどうせ最大にしておくのだから、いらないと言えばいらない。また気が向いたら新しく設計し直すかな。

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さてテスト。PS/2ケーブルを挿し、弦を弾くとMaxのインジケータが反応する。ケーブルも問題なしだ。

Divided Pickupは作れるのか?という記事を始めたのが5月12日。4ヶ月半でやっと完成したが、ここまではハードウェア編。これを使って画面上のグラフィックを反応させるのが目的なので、今度はソフトウェア編になる。Maxからの信号はOSCなのでTouchDesigner、ProcessingでもBlenderでも処理はできる。夢は広がるなぁ。でも楽器も上手く弾けないんじゃ意味がないな。練習しよ。(ソフトウェア編に続く)




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