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【競輪】先行1周時計の考え方<1・導入>

競輪予想で最初に考えるコト「誰が逃げるか」

 競輪という競技をギャンブルとして予想するとき、ある程度競輪を理解している人ならば「誰が強いか」を最初に考える人はいない。「誰が逃げるか」を最初に考えるものである。そして、その理由はあまりにも多い。
 
・先行の番手が優位になるか
・捲りが届く先行なのか
・逃げ切れるのか
 
 単純化しても3つの理由がある。この3つの理由だけでも「結果」が大きく変わる要員になりうるから、絶対に「最初に」誰が逃げるかを考えねばならない。
 
 しかし、従来の競輪ファンによる「誰が逃げるか」の考え方は残念ながら何十年経っても進化がない。B(バック)回数を見る。なんとなく逃げそう。この状況からずっと変わらないのである。
 
 競輪は実力差が小さい番組の場合、展開が結果に及ぼす影響は計り知れない。
 
脚力×展開=結果
 
 競馬が足し算、ボートレースやオートレースが引き算ならば、『競輪は掛け算』である。競馬は予想しなければならない要素が多いギャンブルで、馬一頭取り上げても脚質・距離適性・スピード・気性・調子など要素が豊富だ。これに騎手、調教、休養状況、コースなども加わる。
 
 これら全部の要素を考える予想の方法もあれば、あえて1項目に特化した予想の方法をとり、誰も重要視していない要素で勝負するという手法も生まれている。このように競馬において多彩な予想法が存在する理由は「要素が多い足し算」だからである。
 
 そしてボートレースやオートレースは動力源がモーターである。モーター競技はF1なども同様に結果の予想には「引き算」の形をとる。モーターは故障やガソリン切れを起こさない限り、出力を保ち続ける。よってポールポジションの艇や車が強く、ミスがなければ絶対にそのポールポジションの艇や車が勝つことになる。ボートレースならば1コース、オートレースならば1号車(※1)である。
 
(※1…現在のオートレースは車番順にハンデやスタート位置が好条件になるようになっているため。昔は車番順とは限らなかった)
 
 これらと比較して競輪は「掛け算」である。掛け算になる理由は風圧・スリップストリームの存在だ。競馬なら馬が馬のスピードで走るため、1馬力が生むスピードで馬は1馬力で押し返しながら走るのだが、競輪は人が「ギヤ変換」したスピードで走るため、1人力で生まれるはずのないスピードを1人力(の表面積)で押し返さねばならない。だから、競輪は競馬以上に逃げ潰れると大失速しやすいのである。
 
 これは競輪に限った話ではなく、自転車競技において共通の状態である。ツール・ド・フランスを代表としたロードレースでも、チームの選手が入れ替わりで先頭を走ることが当然のように行われている。選手は風圧による負担をいかに分散するかに腐心するのが、自転車競技での基本である。
 
 そのため、展開を悪くし、風圧や位置取りで不利となると脚力だけでは逆転できないことになる。脚力的に劣った選手が格上の選手を倒すメカニズムにおいて「展開」の影響は計り知れない。だから、掛け算なのである。仮に脚力と展開を数値化できるならば、脚力は10だけど展開を100と良くした選手は結果が1000となる。脚力は100だけど展開が1になってしまえば、掛けて結果は100で負けるのだ。
 
 もちろん、脚力が圧倒的ならば展開の不利を乗り越える場合もあろう。現在ならば輪界のトップである脇本雄太選手がA3クラスで引退間際、競走得点が60点台の選手と100回対戦しても100回脇本選手が先着するだろう。脇本選手が9番手、A3引退間際の選手が先行の番手と絶好の展開であったとしてもである。仮に数値化できるならば、脇本選手が脚力10000×展開1=結果10000であったとして、A3の選手が脚力1×展開100=結果100、となる状態だ。
 
 脇本選手とA3選手が対戦しないようにクラス分けがされている理由はこんな感じだ。競馬も理由は近いが、動物系競技では脚力の上下差が大きくなるためクラス分け(※2)をせねば結果が見えてしまうレースばかりとなり、ギャンブルにならない。未勝利馬とディープインパクトを100回走らせたら、ディープが100勝するはずであるのと一緒だ。
 
(※2…競輪では男子の場合、S級S班、S級1班、S級2班による「S級戦」と、A級1班、A級2班による「A級戦」、さらにA級3班による「A級チャレンジ戦」と3つのクラス分けでレースが開催されている。かつてB級が最下級戦として存在していたため、オールドファンはチャレンジ戦のことをB級と呼ぶことがあるのだが、私もA3はA1A2とA級同士で走れないのだからB級にしてしまってB級戦と呼べばいいのに、と、違和感は未だにある)
 
 それこそウサイン・ボルトと町内の運動会でのかけっこで1位だった人を100mで対戦させるイベントがあったとしても、結果が見えている。さらに仮に闇賭博があって、そのイベントに金が張れるとしても、誰が町内の1位だった人に期待するだろうか。ウサイン・ボルトの単勝は1.0倍からピクリともしないで、結果もそのとおりになるはずである。
 
 このような状況で起こりうる波乱はほぼ「事故」でしかない。競馬ならば「落馬」であったり、競輪ならば「落車」である。もちろんレースである以上、これらは仕方のないことなので受け入れなくてはいけないのだが、波乱の理由が「事故」だけであるならば誰も博打として魅力を感じなくなるだろう。なので、クラス分けが絶対に必要なのである。ウサイン・ボルトと対戦するに相応しいのは、せめて各国のトップ短距離選手でなければ「観物」にならないのだ。
 
 あとはハンデを設けるくらいだろう。たとえば武井壮さんと、ウサイン・ボルトを対戦させるテレビやYouTube企画があるならば、スタートタイミングを1秒程度ずらしたり、スタート位置を武井さんをすこし前にすることで、激戦を演出でき、予想するとしても難しく、面白いものになるだろう。
 
 ただこれも、武井壮さんが日本人としては上位のスプリント力を持っているから可能なことで、あまりにも脚力差が大きいタレントが対戦相手となると、実質ハンデ師のウデが見どころのバラエティになってしまう。番組の企画ならこれでもいいだろうが、出てくるタレントの能力に応じてレギュレーションを大幅に変えないと激戦が演出できない形では公営競技にすることは難しい。都度レギュレーションの理解をしなければ打てない博打など、誰も継続してやらない。ある程度の接近した脚力同士でレースさせなければいけない理由が、改めて分かるだろう。

誰が逃げるのかが不明では、展開を定められず結果を読めない


  ここまで脚力について長々と説明した理由は、このあとに説明する展開を予想することが、無駄ではないことを示すためだ。競輪ではあまりに違う脚力差の選手同士が出走することを、クラス分けなどによって防いでいる。だから安心して、展開も予想に重要だと考えて欲しいというワケだ。
 
 本題に戻ろう。競輪において展開のキーポイントは「誰が逃げるか」である。これを読もうとしない限り、あなたはいつまで経っても競輪初心者である。
 
 誰が逃げるかを考えるうえで私がとる手順と、一般的な競輪ファンが考える手順を比較してみよう。
 
<私の場合>
・(節の初日でなければ)節間のレースでの1周時計を計測する
・J(ジャン)H(ホーム)B(バック)、S(スタート)数を確認する
・全ての決まり手数を確認する
・初手を考える
・誰がどこで逃げるかを検討する
 
<一般的な競輪ファンの場合>
・B(バック数)を見る
・逃げの決まり手数を確認する
・なんとなく誰が逃げそうか過去の印象で検討する。
 
 多くの競輪ファンが出走表やスポーツ新聞、民間投票サイトで記載されている情報のレベルで競輪を打っている。一部の民間投票サイトではそこそこ情報がある場合もあるが、大半はJH数など記載されていないためBと逃げの数しか見ていない。
 
 Bはバック数、つまり残り半周での先頭通過数である。一見、逃げてみた数ではないかと思われ、この数字だけで判断される人が多いのだが、残念ながらこれだけでは予想するレースでの逃げ選手を探すには不十分である。
 
 実際のレースを想像してみよう。残り半周となったB(バック)線上ではどうなっているだろうか。もちろん逃げた選手が先頭できれいに通過した場合が多いだろう。しかし、実際にはB線ですでに捲られていて捲りの選手にBがついていたり、B線前に番手捲りを打たれて番手の選手にBがついていたりする。
 
 つまり、逃げの仕掛けを打ったものの、B線の先頭通過ができなかった場合は往々にして存在しうるということである。逃げにいってみたことを先行を企画するとも言われるので「先行企画数」と呼べばよいだろうか。少なくともB数は先行企画数と一致する保証はない数字なのである。
 
 ならば、どうすれば「先行企画数」が見えてくるのだろうか。

「先行企画数」を知るには他の情報を組み合わせる


 若手(の選手)は逃げたほうがいい。今も昔も競輪界ではよく言われることである。そして、在籍するクラスで全く通用していない選手が、勝てもしないのに逃げまくってるという成績欄を見かけることがよくある。
 
<在籍クラスで通用していない若手先行選手Aの成績例>
B11 H15 J20 S0
逃1 捲0 差0 マ1
 
 こんな選手Aが出走しているところに、以下のような格上の自力選手Bが出走していた場合、単騎のいない3車同士のシンプルな2分戦だったとして、これらの情報だけを見て、逃げる可能性の高い自力選手はAとBの、どちらだろうか?
 
<同レースに出走している別線格上自力選手Bの成績例>
B15 H10 J2 S7
逃7 捲7 差2 マ0
 
 ちなみに私の答えは「五分五分」である。だが、多くの出走表など情報が少ない状況で予想する競輪ファンは、7割がた「Bである」と答えるだろう。残り3割の「Aである」と答える人は過去の印象で答えている可能性が高い。おそらく「五分五分」と答える人はほとんどいない。
 
 選手Aの成績を見ると、Jが20もあり、H、Bに進むに従って数字が下がっている。だが、BはJの半数以上の11ある。Jで鐘が鳴り始めるときに先頭に立っている実績は多いが、Bまでに半分近く、カマシか捲りに屈していることが推測できる。また、Jが多いわりにSがないので、初手での前受けを嫌っていることも推測できる。残り2周から外を上がり、Jからの抑え先行を試みているだろうということだ。もしSもJも多いなら、そのJの一部にはSを取って、Jで誰も抑えてこずに前にいるだけのパターンも含まれるからだ。
 
 ただ、弱いので逃げ切り、逃げ残りは1回しかない。マの1回はおそらく捲られたが捲りの後ろが千切れて、そこにハマって流れ込んだものだろう。捲られた番手に飛びついていく力があるならば、もう少し逃げか差し、マークの決まり手がついているはずである。
 
 私の推測をまとめると、選手Aは「在籍クラスで上位に絡める脚はなく、逃げたら末が保たない脚力しかないが、健気に逃げて脚力と周りの信頼を得ようとしている。初手は後ろ攻めを好み、J前には抑えて、抑え先行を試みるが半分は格上にカマシか捲りでB前には飲み込まれている。ただ、半分はBまでは先頭を保っているので、番手がBからの捲りでゴールまで保つ選手がいるならば、ラインの番手やその後ろの選手を狙える可能性はある」
 
 JHが掲載されていない出走表・スポーツ紙・一部民間投票サイトからではなく、一部の専門紙や民間投票サイトで得られるJHBS数や決まり手を見るだけで、ここまで推測できるのである。
 
 選手Bについて、私の推測をまとめるとこうだ。
 
「Sが7回とそこそこある。前受けを好むほどではないが、誰もSを積極的に取りに行かない、または、初手Sを取りに行っても展開不利ではないと考えれば取る選手である。Jが2しかないので、抑え先行は好まない。2回はおそらく、Sを取ったうえで誰も抑えにこなかった場合のものだろう。Sが0ならば抑え先行が2回だった可能性は出てくるが、そうではない。H10、B15で逃げと捲りが7回ずつなので、H前後を中心にカマシ先行を割と好みそうだ。H線通過後に先頭に立っているパターンも少しあるだろう。ただ、捲りが7回のうちB前に先頭だった数も入っている可能性があるので、H後に先頭となったカマシは割合が少ないのではないだろうか」
 
 つまり、この選手Bは初手は前受け割合は少し多目だが読みづらく、基本はH前にカマシを打つか、B前後に捲りを狙うタイプ。H後にカマシ切るようなカマシとなる赤板4角以降からの踏み出しは少なく、カマシで踏み出すのはJ後から赤板4角までが多そうである。という推測になる。
 
 こうして整理すると、選手Aと選手Bの走り方から見ればこのような展開が浮かぶ。
 
・初手
 選手Bのラインが前受け、選手Aのラインが後ろ攻め。
 
・赤板通過後
 選手AのラインがJ前までに選手Bのラインを抑えて下げさせる。
 
・J通過後
 選手Aは選手Bの叩き返しを警戒しながら、スピードを一旦落としてスタミナを温存する「ペース駆け」狙いか、決めた距離から全力で「全速戦」を挑むかを選択する。選手BはAが「ペース駆け」狙いと読めば残られることを嫌い、J過ぎから赤板4角までのどこかで「カマシ先行」を狙いダッシュをかけ、H前を目標に襲いかかることになる。だが、Aが「全速戦」を選択すると読んだ場合はAのスタミナが早めに切れて前団が失速する可能性が上がるので、B線前後での「捲り」を狙う。
 
 つまり、Aの抑え先行と、Bのカマシ先行。両方の可能性がAとBの腹積もりで決まるだろうから、どちらが先行となるかは「五分五分」である。という私の結論になるわけだ。今回は敢えて難しい結論になるような例をとったが、もちろんこれだけで展開が絞れるレースが見つかる場合も多い。そうなれば、他の競輪ファンから「一つ上の人」になることができるだろう。
 
 繰り返すが、出走表などの情報が少ないレベルで打つのは上級者になるためには得策ではない。先程も言ったように、7割のファンははSBと決まり手だけで競輪を打っているため、Bの逃げで確定だと思いこむことになる。 

3割のファンは熱心にレースを見て選手を知っている 

 では、残り3割の「Aが逃げる」を選んだファンは何か? 彼らの特徴は「レースをいっぱい見て選手の走りや特徴を憶えている」熱心なファンであることだ。
 
 出走表などの数値ではBが逃げそうだと思われるなかでAが逃げるを選んでいるのは、Aの過去レースを見て特徴を把握しているからである。だから、出走表レベルの情報では気づけない「走りのタイプ」で予想することが可能なのだ。
 
 そしてなにより、彼らは一般的な競輪ファンの中では少数派である。競輪場に足繁く通うベテランファンならば多くのレースを見ているではないか、と思うかもしれない。だが、彼らは競輪場のレースしか見ていない。今はネットの時代だ。競輪では全てのレースの中継やアーカイブを、ネット環境さえあればいつでもどこでも無料(※3)で見ることができるのである。
 
(※3…厳密には中央競馬では生中継がテレビ・ラジオ、もしくはネットでは有料でしか見られないだけで、アーカイブは無料である。ボートやオート、地方競馬も今は全て無料で中継やアーカイブを見ることが可能だ)
 
 ネット環境でレース映像が見られる以前の頼りはCS中継だった。さらにごく一部のファンがスピードチャンネルにお金を払い、各地のレースをチェックしていた。この頃それを熱心にやっている競輪の博打打ちは強かった。情報も少なかったので、これが最強の手段だったのである。
 
 余談になるが、CSも普及していない頃であれば場内にある番台型の予想屋がメチャクチャ強かったといわれている。彼らは他場の予想屋と電話で頻繁に連絡を取り合っており、遠くの競輪場で走った選手の調子や走り方を他場の予想屋と情報交換することで、競輪場でしか競輪を見ることができないファンと比べて圧倒的に選手を知った「先生」になることができたのである。そりゃあ、当時の予想屋が頼りになるのは当然だよね。
 
 とにもかくにも、選手の走りを見て把握することが強いのは当たり前だということで、レースをネットでいっぱい見る、というのは今でも有効な手段なのである。競輪は中央競馬と比較すると競輪場数が多いため、総レース数は何倍も多い。そのため全レース見るのは中央競馬の何倍も手間である。ただ、全レースとまでは言わずとも、競輪場でレースを見てるだけなら、本場開催なら12Rまで。併売があっても24Rまでだ。
 
 ネットなら全場の全レースを見ることができる。たとえ毎日競輪場に通ってレースを見てる何十年のベテランファンが「いっぱいレースを見てる」と言ったところで、ネットを駆使して直近での多くのレースを見てるファンとでは「濃度」が違うのだ。
 
 私もギャンブラーとして駆け出しだった時期とともに競輪は憶えたのだが、レースをとにかくいっぱい見た。2001年当時はネット中継をする競輪場が増え始め、スピードチャンネルも契約し、できるだけレースを見て選手の調子や特徴を把握していった。数ヶ月、これをやることで、競輪歴何十年というファンより「選手を知ってる」状態になれたのである。
 
 今でも「真剣に競輪で勝ちたい」という人がいれば最初には絶対に「ネットでアーカイブを見ろ」と言う。日々の時間はとられるが、予想法を勉強して成長するレベルよりも、選手を把握していることのほうが「圧倒的にコスパがいい」のだ。勝ちたいのであれば、予想法はそのあとである。競輪はボートレースや競馬などとは違い、選手がモーターそのものである。選手を知ると、脚力と競走のタイプ、両方を把握できることになる。
 
 だが、これはあくまで初心者を脱出する一つの方法でしかない。これでは「暇人」しか競輪は勝てないのか? ということになる。また、先程の問題での私の答えである「AとBの先行確率は五分五分」という答えと「Aが逃げる」という答えは一致していない。
 
 Aが逃げるという3割の答えが悪くない理由は「少数派」だからである。少数派ということは、その展開で買う目が売れる金額が少ない=高配当寄りとなる。パチンコ・パチスロで言う「期待値が高い」状態なのだ。実際の発生確率はそれぞれ5割だったとして、その片方を選択した人の数が少ないため、オッズがつくのがパリミチュエル方式(※4)たる公営競技の特徴である。
 
(※4…パリミチュエル方式とは、投票総額から主催者の取り分を引いた額を、的中した金額で割って的中額とするギャンブルの運営形態のこと。日本の公営競技は全てコレ。オッズを主催者が決めるのはブックメーカー方式と呼ばれ、この場合、勝負する相手はブックメーカーだ)
 
 皆が思ってるよりかは起こる可能性に張る。パリミチュエル方式のギャンブルで勝つ「打ち方」として「正解」である。
 
 だが、展開予想の精度をもっと上げれば、もっと的中も増やすことができたり、投資を抑えたりすることができる。その精度を上げる努力は「レースを見る」以外にもある、という話をしたい。全てのレースを見ることができない人でも、その差を埋めるどころか逆転するにはどうすればよいのだろうか。

展開を定める情報をさらに加えるには 


 ちなみに、1年365日、競輪の全レースを見てるという人は多分いないと思っている。それをやると生活が破綻するくらい、競輪の開催数(※5)は多い。そのため、選手1人を軸に考えたときに、その選手の直近10場所くらいの全レースを見て把握しているなんて人は選手のファン以外はいないと考えてよいし、それを全選手見ている人はそれこそいないだろう。仮に見ていたとしても、憶えていられるだろうか? 無理だよねぇ。
 
(※5…とはいえ、競輪場での開催数も全盛期と比べて、選手が減ったり、レース数が減ったり、7車立てになったりと、昔から比べれば半分以下よ)
 
 あなたはパチンコで1日に打ち出した玉がどこに消えたか全部憶えているだろうか? 賞球に入ったか、下の排出口に消えたか、ヘソに入ったか、そんなの憶えてないでしょう。時間と回転数で概算を出してるパチプロはいるらしいけどさ。
 
 ともかく、記憶とは曖昧なもので、ときに中途半端な記憶が現実と乖離することはよくあることである。「あーこのあいだ見たけど、とにかくずっと逃げてるんだよな。今日も逃げるだろ」と思ってフタを開けてみたら3日間捲りにまわったりするのだ。そして、よくよく成績を確認してみると、逃げていたのは3節前までで、前節、前々節から捲りばかりになっていて、そのレースを見ていなかった、というパターンは往々にしてあるものだ。
 
 逆にそれは、データを丁寧に見れば気付けることである。むしろ「記憶と成績が違ってる」となれば異変に気づいて、さらに裏の裏で高配当が狙えるということである。決して、データを見るのをおそろかにしてはいけないのは、これが理由だ。
 
 話を戻そう。先程の問題で「五分五分」と判断したレースで車券を買うとなれば、両面作戦を取らざるを得なくなるので、点数が増え、投資額が上昇するのが問題が。
 
 仮に格上Bを軸にするとしても、Bがカマシの場合と、Bが捲りの場合とで、スジで狙うにも捲り目と差し目との比重が、また、番手が千切れると考えたとしてもAラインの後ろを狙うのか、番手が第2先行となって、さらに後ろを狙うのか変わる。Bが勝つと見込んで本命を打っても、競輪は相手を探さねばならぬゆえに、展開でそこが変わりうるのだから、展開が絞れるに越したことはない。絞れなければこの両パターンを含めた両面作戦の買い目となり、購入点数や予算が増え、儲けは小さく、外せば多くのお金を失うことになる。
 
 誰が逃げるのか「五分五分」のレースを買うのはあまり得策ではない。そんな「五分五分」割合を変える要素を別に求め、変化できれば、途端に「買える」レースになる。では、別に求める要素とはなんだろうか。
 
 ここで、私が大事にしている「時計」の話が出てくるのだ。

〈2〉に続く

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