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平成ギャンブラー栄枯盛衰<4> 心地よいダメオヤジ

20代のころ、筆者は近鉄バファローズを応援し、その応援・遠征費用を公営ギャンブルで稼ぎ補うという、アルバイトとの兼業ギャンブラーだった。その頃より少し前の、一介の競馬好きだった頃に出会ったBさんとの思い出を振り返る――

後楽園7階にいつもいる普通のオヤジ

○学生だった私は、当時日本最大の競馬ブーム…ナリタブライアンやマヤノトップガン、サクラローレルといった馬たちが活躍していた頃、すでに馬券を買うようになっており、順調にクズ街道を爆走していた。

とはいえ○学生、大してお金もないなか、勝ち越すほど馬券が上手かったわけでもなく、小さく小さく賭けて、週末を過ごしていたのである。

後楽園ウインズ7階。現在はオフトに変わってしまったスペースだが、南側フロアの一番南端が私の定位置だった。そしてもうひとり、そこを定位置にしていたオヤジがBさんだった。

Bさんとどう仲良くなったのかのきっかけはよく憶えていない。だが、自然と毎週会話するようになった。競馬の情報も程よく知っており、かといって偉ぶるわけでもなく、しつこくもない。週末に会話する相手としては実にちょうどよかった。

だがBさんは正直、どの要素を見ても馬券は下手だった。まず勝ってる日を見たことがない。だが、馬券戦術はオーソドックスで、競馬の知識は普通にある。Bさんが勝てない理由はなんなのかは、結局まったく分からなかった。

Bさんが当てるパターンを見つけたのだが…

だが、毎週会って会話し、一緒に馬券を買っていると、あることに気付いた。それは、予想が一致したときに当たる場面が多かった、ということだ。

厳密には、私とBさんが会話して、Bさんが予想を変えて私の予想に寄ったときに当たっていた。Bさんと会話して、予想が最初から一致していることはまずなかったし、会話したからといってBさんがいつも予想を変えているわけでもなかった。たまにしかないBさんの予想変更時の結果が実に良かったのだ。

そうなると、Bさんからしても体感的に「あの小僧の話が納得したときはやけに勝てる」という感じになる。いつしか、Bさんは私に予想を毎回聞くようになってしまったのである。

それまで気楽に会話する相手だったBさんだったが、私としてはBさんの収支のカギになってしまったような気がして、少し嫌な予感がした……(つづく)



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