見出し画像

起業家がマンガ『キングダム』を愛する理由【前編】

こんにちは!女性専用ライブヨガアプリSOELU(ソエル)を運営している、ワクテクのSHO(@jiang_shihao)です。

前回ブログはコチラ。

今回は予告どおり、マンガ『キングダム』が起業家に愛読される理由について考察します。キャラクターの死に関するネタバレは避けますが、それ以外の大まかなストーリーの流れやキャラの特徴は考察する上で触れる必要があるので、それもネタバレNGな方は、自己責任で閲覧お願いしますmm

目次
■私とキングダムとの出会い
■起業家の理想の具現化した「信と政の力強い成長ストーリー」
■共感ポイント1:マイナスの状態から物語(起業)は始まる
■共感ポイント2:政の「真顔力」と「プレゼン力」
■共感ポイント3:信の「無知の知」と「生命力」
■共感ポイント4:王騎・麃公 - 憧れのリーダー達との出会いと学び
■共感ポイント5:合従軍編=HARD THINGSそのもの
■さいごに


■私とキングダムとの出会い

当社のシードステージで最初に出資頂いたVC ANRIの佐俣アンリさんにお会いした時に薦められたことがきっかけです。
当時はタイトルを聞いたことある程度でしたが、深夜、満喫で1巻目を手にとったが最後、二晩×12時間パックで合計40巻分くらいを一気読みしてしまいました。

読んだあとに知ったのですが、スタートアップ界隈で働く人、特に起業家は驚くほどキングダム好き率が高いです。知名度が高い方だとぱっと思いつくだけでもアンリさんやSkyland木下さん、けんすうさん、あやたろうさんetc…

そしてキングダム新巻が出る度にfacebookでBotのように投稿してますが、いつもティルスCEO大冨さんが反応してくれます。

■起業家の理想の具現化した「信と政の力強い成長ストーリー」

一般的に「キングダム好き」だけなら、男性に限らず普段漫画に無縁な女性ファンも多発するくらい良くできた少年(青年?)マンガなのですが、その中でも特にスタートアップ経営者は、もはやキングダムをバイブルにしてたり、社員全員に読ませたがったり、事業が停滞して辛い時の心の拠り所にしたりと、なんというかちょっとキモいレベルで愛読してるケースが多いような気もしてます(主に私です)

恐らくですが、起業家の場合、どの会社ステージにキングダムを読んでも
、信と政を共同創業メンバーに、そして秦の中華統一を自らのビジョン達成と見立て、チームの現状や、胸に抱くビジョンを彼らに重ねたくなってしまうのでしょう。

自分を信じついてくる仲間を増やし、尊敬する先輩経営者や良きライバルに出会い、どんな逆境をも撥ね退け、大いなる夢を同じ熱量で追いかけ続ける強いチームをつくりたいと渇望しているからではないでしょうか?

つまり、信と政が辿る足跡は、起業直後の起業家にとって「理想のチーム成長and自己実現ストーリーそのもの」であり、成功している経営者は、自分が経験した起業物語を彼らに重ね、彼らの行動に強く共感したり、逆に自分も同じように行動すればよかったと感傷に浸ったり出来る、強く魂を揺さぶる物語になっているのだと思います。

人によって共感するポイントはきっと様々ですが、本記事では主に私の目線からみた『キングダムで強く共感したポイント』を挙げたいと思います。

■共感ポイント1:マイナスの状態から物語(起業)は始まる

物語の始まりの登場人物は、こうです。
親友の死で悲しみにくれるが、圧倒的な行動力と潜在能力、そして成長率を誇る下僕「信」。孤立無援だがビジョナリーで胆力もある若王「政」。そして機転が効く男勝りなインターン女子?の「河了貂」。

まさしくどこかのスタートアップの創業メンバーにいそうな構成で物語はスタートします。

お金も人脈も無く、なんなら周りは敵だらけ。完全に大きくマイナスからのスタート。例外ももちろんありますが、起業家の一年目はだいたいこんな感じです。

それでも強い信念と行動力で周りの数少ない味方(昌平君・壁)を鼓舞し、中立のキーマン(楊端和・王騎)を味方に巻き込み、敵を撃破しつつ、更には敵すらをも味方にしてしまう。起業家にとっての「理想」をこれでもかというくらいに描写しています。

■共感ポイント2:政の「真顔力」と「プレゼン力」

マンガの準主人公?である政は、史実では初めて中華を統一するかの秦の始皇帝の若かりし姿なのですが、彼は終始、真顔で大きな夢を語り、周りを巻き込み、行く手を阻む政敵や外敵を潰していきます。「意志がスゴイ」とか「メンタル強すぎィイ!」とか「ひ、光…?」とか、彼の凄さを語ると切りがないのですが、一起業家として特に彼から学んだこととしては「真顔力」と「プレゼン力」の大切さです。

例え言葉が通じるかどうか分からない獣と恐れられている異民族の王の前で素っ首がはねられる寸前だろうと、敵か味方か分からないカリスマオネエ大将軍(隠居中)が「私の宝刀は不遜を許しませんよォ〜ンフォウ」と威圧してきても、常に「自らのビジョン」と「相手の本当に欲しいもの(=自己実現)」は利害が一致するんだと。真顔で、ただひたすら真顔力とプレゼン力を駆使して相手にぶつけます。ソフトバンクの孫さんもこんなかんじでSlackやAirBnBを口説いていったんでしょうか。

これはまさしく起業家が、信頼出来る仲間や、投資家を口説く時に必要なスキルで、偉大なリーダーになる上で磨き続けるべき大事なスキルでしょう。

そして、相手を味方にしたい時に、自分のビジョンへの共感と相手の自己実現のどちらか片方だけではワークしないことも、最近痛感しています。

彼を知り己を知ればなんとやらですね。

■共感ポイント3:信の「無知の知」と「生命力」

本作の主人公である信は、「天下の大将軍になる」という、亡き親友と誓った夢を実現するため、がむしゃらに前に進みます。「どんな逆境でも前に進む」ポジティブ思考は政と共通するものの、彼らには決定的な違いがあります。それは、政はビジョンを達成する上で何が必要で、誰を味方につけるべきで、今の現状と、課題が何かを「すべて知っている」ことです。スタートアップに例えるなら、ビジョンを達成させるための事業解像度や課題認識力、マイルストーン設定力が非常に高いのです。

だからこそ、王弟の反乱に勝つために山の民を味方につけたり、当初最大の政敵である呂不韋陣営との戦力差を埋める為には、リスクを取ってでもかつての敵であった王弟を味方につける必要がありました。

一方、信は下僕の身分であるため、学や常識は一切ありません。代わりに、親友と天下の大将軍になることを夢見て、木刀による打ち合いを毎日のように続けたことで、並外れた胴体神経と生命力を獲得しています。
(ちなみに二人の勝負は1253戦334勝332敗587分と、わずかに漂が上回っています)

信は無知ですが、バカではありません。逆に無知だからこそ、戦場の略奪・虐殺等など当時中国に蔓延る非合理的な常識を真っ向から否定したり、その一点の曇もないピュアさが、彼の恩師とも言える大将軍達に可愛がられ、得難い経験や学ぶチャンスを獲得していきました。

「無知力」以外にも、強敵に何回薙ぎ倒れても致命傷を躱し、しぶとく立ち上がる「生命力」という強烈な武器を持っています。とある投資家と会話した際に「投資するときは、経営者に強い生命力があるかは大きな判断基準の一つ」と話していましたが、すごく正しいと思いました。

死なずに打席に立ち続ければいつか、その間に成長し、チャンスが訪れます。「99回負けても、100回目で勝てれば総勝ち」という信の名言は、まさにその生命力・しぶとさを上手く表現しています。

■共感ポイント4:王騎・麃公 - 憧れのリーダー達との出会いと学び

キングダムでは、圧倒的なカリスマ性を誇る大将軍が自国・敵国問わず何人もいます。その中でも一際強烈な印象を読者に与えたのは、間違いなく王騎と麃公でしょう。第一印象は、外見・言動も相まってめちゃくちゃ癖がありそうな二人でしたが、当時の中華でトップ10に入る実力者です。

「王騎軍や麃公軍は、主君が最前を駆けて矛を振るう時、後ろにいるメンバーは鬼神と化す」みたいな表現が何度もされていますが、これがまた絶妙に若手起業家達が目指す先輩経営者達のメタファーとなっています。

信にとって二人は自らの将軍像形成に大きな影響を与えた人物で、「本物の大将軍」とリスペクトし、彼らから「視座の高さ(将軍の景色)」や「大炎の大切さ」(作中での「大炎」は、勝負どころを見極める大切さや、強い意志を持ち続けるなど、複数の意味がある)を教わりました。

自分も含め、若い起業家は実績も経験もありません。よって、如何に尊敬できるメンター経営者を見つけ、貪欲に彼らから必要なことを獲得し、学び、血肉に出来るかで自分と会社の成長率が大きく変わります。いきなり我流で勝負するのもロックではありますが、勝率を最大化したいのであれば守・破・離で、まずは上手く行ってる先人に倣うのが一番良いです。

そういう意味では、前述した信の武器の話に戻りますが、一下僕出身の兵卒にもかかわらずいい意味で目立ち、王騎と麃公という雲の上の存在からも一目置かれ可愛がられたのは、決して運が良かっただけではなく、「出る杭」となり、目立って初めて、一目置かれるチャンスが生まれるのです。あとは目立ち続けてエンゲージメント率を上げるだけ。

余談ですが、ヤフーに買収されたレシプ動画アプリKURASHIRUを運営するDely堀江さんがずっとメディアでソフトバンク孫さんの話をし続けて、本当に孫さんに会えて出資してもらえたというエピソードとシンクロします。

■共感ポイント5:合従軍編=HARD THINGSそのもの

スタートアップ界隈で愛読されている著書の一冊に『HARD THINGS』があります。起業家が直面する「困難(ハード・シングス)」について、現ベンチャーキャピタリストであるベン・ホロウィッツが、かつて起業したIT起業を成長させ、会社売却するまでのピンチ(HARD THINGS)の連続を赤裸々に描写した名著です。

起業家は、毎日がジェットコースターと言われるくらい、一喜一憂する出来事が怒涛のように押し寄せてきます。ヒトの問題・事業の問題・市場環境の問題など、挙げればキリがありません。

起業家達に、現在約52巻ある『キングダム』で最もHARD THINGSを感じた場面はどこか?と問えば、多くの起業家は25~32巻前後に起きた合従軍侵攻〜サイ防衛戦(以後「合従軍編」と呼ぶ)と答えるのではないでしょうか?

25〜32巻以外にも色んな場面にHARD THINGSは散りばめられているものの、25~32巻のHARD THINGSの困難の難易度と頻度は本当に想像を絶します。

ギネスで「マンガ主人公絶対絶命状態最長維持記録」なんて賞があれば全力で推したいくらいです。

もともと詰んだ盤上で悪あがきし続け、次々と訪れるピンチを切り抜き続け、ようやく安心出来たかと思えば、更にそれを上回る絶体絶命に叩き落とされる。その繰り返しです。

それでも政と信は簡単には諦めない。諦めない。諦めない。諦めない。出し尽くした力をさらに無理やり振り絞る。それでも、本当にもうだめだと思った瞬間。奇跡が起きたのです。

順風満帆に当初の計画通りに事業が成長するスタートアップは本当に一握りで、大多数の起業家は、このように波状的に訪れるHARD THINGSと向き合い続けています。それでも諦めずに、希望を失わずに戦い続ければ、いつかは悲しみの谷(課題)を乗り越えて光(会社としての大きな成長)が見えるはず。

そう信じ続けもがく起業家にとって、キングダムの25~32巻は無限に勇気が湧き上がる素晴らしいアイテムです。本当に原先生はHARD THINGSの書き方が巧い!

漫画家という仕事は詳しく知りませんが、きっと起業家の働き方と似ていて、何もない(むしろ周りは強敵の先輩漫画家だらけ)の状態から、たくさんの挫折(感動するストーリーのプロットが思い浮かばないetc)やピンチ(打ち切り候補・原稿締切etc)にぶつかりつつも、諦めずにメンバー(編集担当やアシスタント)を鼓舞し、自ら先頭に立ち矛(筆)を振るい続けていらっしゃるからこそ、こういったHARD THINGSを書けるのかもしれません。

さいごに

本記事ではキングダムの起業家が共感するポイント5つご紹介しました。
いかがでしたでしょうか?

あくまで私個人な共感ポイントの部分も多いかも知れませんが、皆さんのキングダムに対する愛を少しでも言語化できていたら嬉しいです。
今回書き切れなかった共感ポイント後半5つは、来月にアップしますので、よかったらまた読んでくださると嬉しいです。

幹部候補メンバー募集中!

ワクテクでは、キングダムを読むと滾っちゃうような熱い心を持っている人材も大歓迎です。

- リードUI/UXデザイナー
- VPoE
- オペレーショングループマネージャー
(事業の競争優位性に直結するCSチーム、インストラクターチームを管掌する執行役員ポストです)

もしご興味がありましたら是非私のTwitterfacebookにDMを飛ばしてください!^^

Twitterで質問募集中です!

極力答えます!何でも聞いて下さい。

次回予告

起業家がマンガ『キングダム』を愛する理由【後編】
-ハイパフォーマー文化と六大将軍制度
-リアリスト呂不韋vsビジョナリー贏政
-華やかさが無くても報いたい『忠臣』昌文君・渕
-李牧を目指すか、贏政を目指すか
-俺はもう何度も、お前につかまっている。共同創業の絆

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?