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催眠術が掛かる仕組み (旧バージョン)

※ 催眠術の掛かる仕組みに関しまして今までの理論の一部が現在では古くなっているという情報が出ていますので、従来の催眠術に掛かる仕組み(旧催眠理論)を公開します。

顕在意識(意識) と 潜在意識(無意識)

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多くの催眠術師さんや催眠療法士さんが催眠の掛かる仕組みを説明する際、氷山の一角を例えとして説明しているところが多いと思われますが理解する側としては、あまり馴染みの無いものであるため今回は「水の入ったコップ」という形で説明していきたいと思います。

それでは上記の画像をご覧ください。
3DCGでモデリングされた水の入ったコップがあります。

人間には意識できる顕在意識と意識できない潜在意識という2つの意識があると言われています。画像のコップはその2つの意識を例えとして表しています。

顕在意識とはもっと分かりやすく言えば自分の頭で考えらえるもので、
潜在意識は自分の本能的なもので自分本来の力と考えられることができます。

水が入ってないところを A :「意識」
水が入っているところが B : 「無意識」として考えてください。

私たちが自分の意思で普段ものごとを考えられるのが - A : 「意識」

私たちが自分の意思で考えなくても気づいたら行ってしまっていたというものを - B : 「無意識」(勝手にお腹が鳴りその数秒後、お腹が空いたなどの本能的部分)

この意識と無意識を脳の場所で例えると一般的な催眠書などでは
この位置になると言われています。

大脳新皮質  =  A : 「意識」 (顕在意識)

大脳辺縁系  = B : 「無意識」 (潜在意識)

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顕在意識と潜在意識は常に綱引き状態で、およそ7パーセントと93パーセントという具合で潜在意識が制限されているのが通常の人間の普段の状態です。(きちんと科学的に決まったパーセンテージではありません、例えとしての表示です)

被験者(掛かる人) を催眠状態にし意識を低下させ無意識を100パーセントにすることで暗示が入りやすいプログラミングモードで潜在意識の使っていない能力を引き出す技術のことを「催眠術」、セラピーで使う場合は「催眠療法」となります。

脳波と脳

催眠状態に誘導する際には、大脳新皮質に単純なリズムや刺激を与え意識の働きを弱める必要があります。前頭葉にある「帯状回」は”矛盾”を発見するための機能を持っていますが催眠状態になると帯状回は抑えられ「あなたの目の前にあるレモンが甘くなる」と言われても「いやそんなはずはない」という思考が動かず暗示によって書き換えられた認識で実際にレモンを口にしたときに、暗示を掛けられた被験者が「このレモンめっちゃ甘い」と暗示通りの認識をするのです。

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例えば、あなたが学生時代に周りの女の子に「チビ」「背なんかもう伸びない」なんて言われ続けてたりしていたりすると意識が「背なんか伸びない」という認識になっているので否定せずに本当のようにそのまま受け入れてしまうと無意識に書き込まれ、潜在意識があなたの背の成長をストップしてしまいます。(個人差はもちろんあります)

催眠療法ではこの書き込まれてしまった過去のトラウマや言葉を催眠暗示によって取り除いてあげることで本来の力を取り戻すという形になります。

γ (ガンマ) 波   ・・・   26Hz 以上
β (ベータ) 波   ・・・   14Hz 以上
α (アルファ) 波  ・・・  8 - 13 Hz
θ (シータ) 波     ・・・     4 - 7 Hz
δ (デルタ) 波   ・・・   0 - 3 Hz

一般でいう催眠状態というのは脳波で言えば、θ (シータ波) の状態のところに位置しθ(シータ)波は、とてもリラックスしている状態や夢を観ている状態でありEEGによって観測されています。催眠に掛かりやすい人は右脳と左脳をつなぐ脳梁の先端が大きくθ(シータ)波が増加する傾向にあると言われています。

β(ベータ)波の通常の起きている状態から催眠誘導を行い
α(アルファ)波 → θ(シータ)波の順番で脳波を下げていきます。

催眠状態

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催眠状態 は 【変性意識状態】(ASC - Altered State of Consciousness) の一つで、変性意識とは、自分自身の意識が現実世界から離れてしまったことを指し軽いものから深いものまでさまざまです。

いくつか例を上げるとするならば、このような状態があります。

催眠状態
トランス状態
瞑想状態
乖離状態
覚低状態

今回は有名なものを上げてみました。
これらが【変性意識状態】の種類の一部だと言われています。

ゲームに没頭していてゲームの世界へ入り込んでしまっている

映画を観て映画の世界に入ってしまい作り話であるにも関わらず本当にように感じ泣いてしまったまたは感動してしまった

これらも変性意識による現象の結果の1つの例です。

変性意識は顕在意識と潜在意識をつなげる役割を持っており、何度も書きますが被験者を催眠状態にさせることによって無意識にアクセスし通常時でも潜在意識の効果が出るように能力を引っ張ったり書き換えたりします。

私たちは催眠状態のことを脳のプログラミングモードと呼んでいます。

催眠は潜在意識を引き出し書き換えたとしても、催眠状態から現実世界に戻ってしまうと暗示で書き換えた効果が切れてしまいます。

これは、恒常性維持機能(ホメオスタシス)が催眠状態から現実世界に戻ったときに自分の身体や心の状態を保つ為に元に戻るという仕組みです。

実は掛けた催眠を解くとき(催眠用語では”覚醒法"といいます)も恒常性維持機能の仕組みを使って覚醒暗示で元の状態へ戻しているのです。

催眠療法(ヒプノセラピー)などで掛けてもらった催眠暗示は元へ戻らないようにするために後催眠暗示というものを掛けます。例えば被験者が朝に”時計を観る”という習慣があれば「朝起きて時計を見たときに〇〇が気にならないようになる」と入れてくれるはずです。この習慣と後催眠暗示を入れることによって掛けてもらった目的の催眠暗示を恒常性維持機能(ホメオスタシス)により固定させます。大体3ヵ月から1年が一般的な目安だと言われています。

病みぐせのある女の子の話を聞いてあげて元気にさせて見届けてあげても、すぐにまた病んでしまうのは、この恒常性維持機能(ホメオスタシス)が原因だと考えられます。なのでSNSや実際にお悩み相談を行う場合は定期的なアフターケアが必要になり軽々しく知識の無いユーザーが生兵法で行うものではないと思います。それなりの知識を持って行うことが大切だと感じます。

少し話がズレてしまいましたが

催眠状態になると

意思決定や未来に起きる予測(物事を判断して答えを出す・心配ごと など)に関係している前帯状皮質の上側が低下し、行動の切り替えやワーキングメモリーなどに関係する前頭前野の上側、味覚と嗅覚や聴覚・体感覚などに関わりがある島皮質とのつながりが増大します。そして、先ほどの前頭前野の上側と頭の中に思い浮かべたモノを描こうする初期モードネットワークのつながりが減少

することが

アメリカのスタンフォード大学のデイビット・シュピゲール氏らのMRI検査によって報告されています。

なので被験者がまるで術者に操られるように見えるのはこうした脳の動きがあるからなのです。なので 催眠 = 眠ってしまっている というのは少し違うと感じられます。

日本の催眠術のいくつかの専門書の中にも”動脈圧迫法”と呼ばれる被験者の動脈を圧迫して(本来はタッピングするぐらい・手を置くぐらいで力を入れて抑える必要はない)脳への血流を減らし相手の思考力を物理的に(強制的に)軽減させながら固定凝視法とミックスで暗示を入れて被験者を催眠状態にさせていく催眠誘導法が紹介されています。

つまり、判断力の低下 (意識・顕在意識) と 五感や体感覚 (無意識・潜在意識) などが敏感になっているので相手が何を入れられたのかは"ハッキリ"と覚えていますし、漫画やアニメなどで観る催眠術や催眠療法のイメージと現実における催眠術と催眠療法の6割が間違えているということです。

判断力が低下し矛盾が抑えられた状態で「レモンが甘いですよー」と暗示を掛け、本人に「そうなんだ」と認識させて本当は酸っぱいレモンなのに、実際に被験者にレモンを食べさせると、先ほどの暗示で本人はレモンが「甘い」と認識しているので、本人がレモンを食べると、その本人が食べたレモンが「甘い」と感じるわけなのです。

例えネットや1,2冊程度の本で読んだ情報で催眠術のやり方を知ったとしても漫画で観るようなイメージで催眠を使わないことです。暗示を耳で聞いている被験者の方を悲しませることになってしまいますし嫌な暗示を掛けた術者側も嫌われます。そして催眠そのもの自体のマイナスイメージも生んでしまうことになるのです。なのできちんとした催眠知識や道徳心を学び良い催眠活動を行いましょう。(ラポール)

本当に自己催眠?

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自己催眠は最初のうちは難しく入ったのか入ってないのか自分では分からないのが初心者にとっての悩みでしょう。自分1人で自己催眠を掛ける場合、あなたをサポートをする術者がその場におらず不安が残ります。自己催眠で有名な技法としては【自律訓練法】【漸進的筋弛緩法】(私たちはジェイコブソン法と呼んでいます) などが有名で定番の自己催眠のやり方です。

しかし、自己催眠にも限界があり上記のような自己催眠法で幻覚を見たという人は私自身は聞いたことがないのです。

他者による催眠の場合は術者の誘導により被験者は深い催眠状態(深トランス)まで導かれ幻覚を観ることが可能になります。

クリティカル・ファカルティー とは意識(顕在意識)と無意識(潜在意識)を説明する上で有名で6歳から12歳の頃までの間に顕在意識と潜在意識との壁のようなものとして作られると言われています。日本では「判断フィルター」として呼ばれており、現実と非現実を別けたり自分に必要だと思った情報だけを潜在意識に通す役割があります。被暗示性テスト(催眠に掛かりやすいか調べるテスト)の際に無意識が催眠に掛けられることに抵抗やトラウマがあると、テストや暗示は「判断フィルター」によってブロックされてしまいます。なので最初から催眠を掛けようとしても、まったく掛からなかったり、以前は掛かっていたけど以前掛けて貰った催眠術師から嫌なことをされた過去があり、別の催眠術師が掛けようとしてもその人の過去の催眠による嫌な記憶が原因で自己防衛本能が働いて掛からなかったりすることがあります。

脳の「前頭葉」の活動が不十分であると言われている12歳以下の子供は感受性が良く80パーセントの割合で催眠に掛かりやすいという研究結果も出ています。小学生の低学年ぐらいから発達がスタートされるのでおよそ12歳以下の子供は、判断フィルターを作り始めていると言われているので恐らくですが、それが掛かりやすさの理由なのではないのかなと考えています。

一般的な自己催眠では幻覚や幻聴または記憶操作が出来るということを聞いたことがありませんし、紹介されている自己催眠法で幻覚を観ると自己暗示を掛けたとしても自分の必要ない暗示だと無意識が認識すれば「その理由は?具体的で明確な必要性は?」とフィルターが疑問視してしまいます。

私自身も他者催眠と自己催眠の両方を受けたことがありますが、他者催眠では何も考えることが出来ず術師の暗示どおり導かれていくままで、自己催眠の場合は自分で自分の身体に順番に命令を掛けたりしなくてはなりませんでした。なので自分自身で自己催眠では前の章で書いたデイビット・シュピゲール氏らの実験報告から考えると意識の場所になる脳の場所は、自己催眠であった場合は自分の意思で入れているので、少し違うのでは?思います。自己催眠と他者催眠が同じであるのであれば、暗示を入れている途中に頭がボーッとして暗示を入れられなくなってしまうのではないか?と考えています。(もし違うのであれば、申し訳ありません) なので自己催眠と他者催眠は似て違うものモノだと私は考えています。

術者のサポートがあってこそ出来る『深トランス現象』だとは思うので、他者催眠 = 自己催眠 という考えは私の中では否定的です。

終わりに

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最近、催眠術師さんのブログや記事を読むと心理学や催眠術の専門書に書いてある内容のほんの一部しか見かけず、脳などについての視点から観た説明が少なく非常に勿体ないなと私も感じています。

実体験ですが、特に意識や無意識だけの説明だと被験者のモデルさんにはあまり伝わらず「えー信じられないー」だとか「実際に脳の中では何が起きているの?」と言われて上手く説明することが出来ず困ったことがありました。なのでそういうこともあってか私はそれ以降【催眠使い = 催眠術が使えるオタク】と名乗って来たのです。

催眠術師さんなどのブログをいくつか観るとその説明だけで終わっている人たちが多い印象で私と同じ体験されていないのかな?と心配になります。

テレビや漫画・アニメなどで催眠が取り上げられるも魔法やオカルトのように取り上げられたり、理論が説明されたとてもしっかりとした説明が行われず、「これだけ?」と思うようなものが多くて非常に残念に感じます。

日本で「催眠」と言えば『あやしい』『怖い』といったマイナスなイメージが強く一般的には受け入れ難い分野・技術です。そのイメージを切り離していくためには私もまだまだ勉強の身ではありますが、心理だけではなく脳や人体などについても調べて、もっと多くの人たちに伝えるべきなのではないかな?と思いました。

参考文献

催眠状態の「脳」で起きていること~子どもはかかりやすく、大人の5人に1人は全くかからない (2016)
ただのトリックではない「催眠術」 かかりやすい人の脳には特徴があった (2017)
世界基準のヒプノセラピー入門 - 今本忠彦 (2017)
脳には妙な癖がある - 池谷裕二 (2012)
催眠術のかけ方 - 林 貞年 (2003)
Secrets of Hypnotherapy - Janet Fricker & John Batler - (2001)
HYPNOSIS: Unlock the Power of Your Mind - Michael Streeter - (2004)

アップデート

催眠術の掛かる仕組みのアップデートです。
近年採用されている理論を紹介します。

クレジット - イラスト

Sihiril (オリジナル) | 2Dアート 及び 3DCG

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