あの時あんなに捨てたかった青春が、あなたと一緒なら欲しくなる

(りん)
10年ほど前、私がいわゆるJKだった頃。
私みたいな陰キャのアイドルオタクは、「リア充爆発しろ」と思ってたし、学校のイベントには後ろ向きだった。彼氏がいる時期もあったけど、部屋で過ごすばかりのインドアで、デートスポットみたいなのに行ったことはなかった。

自分を着飾ったりすることよりも、推し活を優先してたし、仲間内で集まってだべる場所もファストフード店とかファミレスとか。色気のカケラも無かったし、いらないって思ってた。


しーちゃんと出会ってから、すごく変わった。
頻繁にではないけど、外にデートに行きたいと思うようになった。
出会ったタイミングがコロナ禍で、外出が出来ずに、部屋で過ごしすぎた反動もあったのかもしれない。
しーちゃんも、私と同じで青春とほど遠い人生だったし、二人とも陰キャでインドアでネガティブなのは変わりない。だけど、どちらかが思いついたように「今イベントやってるらしいから○○行く?」みたいに言い出す。
行ってみると、周りにはキラキラしたカップルがいっぱいいて、私達は顔を見合わせて「場違いだ…」って顔をしながら、気まずそうに過ごして、そそくさと帰ってくる。帰りの車の中で、「無理するもんじゃないね。」ってゲラゲラ笑いながら、身体にくっついた青春を振り落とすように、色気のカケラもない牛丼屋に入ってテイクアウトして帰って、インドア陰キャを取り戻す。

あの時、欲しく無かった青春が、しーちゃんと一緒だと、ちょっとだけ欲しくなって手を伸ばすんだけど、やっぱり気まずくて、すぐに避けちゃう。それでもまた、欲しくなって…を繰り返す。青春に手は届かないけど、その手を伸ばす行為がすごく楽しくて、「私たちには無理だね。」って二人で笑う瞬間がすごく楽しい。


自分を着飾ることにもあまり興味無かったけど、しーちゃんと買い物に行くと、しーちゃんが、「これ似合うね」って服を見繕って買ってくれたりとか、乗せられて自分で買ったりとかして、かなり服のバリエーションが増えた。
この間、久々に会って遊んだ高校の友達に、「オシャレになった」「垢抜けた」みたいに言われて、「実は彼氏に見繕ってもらった服で…」って言うのがすごく恥ずかしくもあり、嬉しくもあった。

あんなに自分に興味が無かったのに、しーちゃんが褒めてくるせいで、ちょっとくらい努力してもいいかな、って思って自分磨きも頑張れちゃう。
自分のことが好きとは言わないまでも、前よりは自信というかなんというか、私みたいなんでもオシャレしていいかな、くらいには思えるようになった。

しーちゃんと出会ってから、本当に人生が変わった。しーちゃんも同じように言ってくれる。
しーちゃんが前に言ってくれた言葉、「人生が白黒だったのが、色づいた感じ。」まさにその通り。
多分一人だったら行かない場所にも行くようになったし、バレンタインやクリスマスみたいなイベントも思いっきり楽しむようになったし、できるだけ彼の好きと言ってくれる自分でいようって努力も出来るようになった。

今日は、付き合いたての時は恥ずかしくて出来なかったような、ここに書くのも憚られる甘え方をしてしまった。
しーちゃんも驚いてたし、「熱でもある?」「ドッキリか何か?」「何か欲しいの?」とまで疑われたけど、ただただ甘えたかっただけ。
しーちゃんも満更でも無さそうだったし、ずっとニヤニヤしてたし、最後の方はデレデレになって。いつものように頭を撫でてくれる彼の手がいつもよりあたたかい感じがした。

時間が経ってすごく恥ずかしくなったと同時に、私自身の変化が怖くなってる。あんな風に好きな人に甘々になっちゃえるなんて。
しーちゃんが嬉しそうにしてくれてた顔思い出したら、またやってもいいかな、って思えちゃう。
あの頃の私が今の私を見たら「リア充爆発しろ」って言うんだろうな。

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