彼女慣れ

(りん)
私と会った頃のしーちゃんは、ちょっと触れると、すーっと身体を避けたり、手を繋いでても何だかぎこちなかったり、すごく緊張してた。私からするとオドオドしてる彼が可愛くて、そういう彼をからかってた。

だんだん二人の距離が近づいていったある時、しーちゃんに「ちゃんとしたお付き合いの経験がない」的な話をされた。
「りんちゃんにからかわれると、どうすれば良いか分からなくなる」って吐露されて、
しーちゃんの気持ちも知らずにズカズカと土足で足を踏み入れたり、気持ちを弄んだりしてしまった自分が嫌になった。

でも、この頃から、しーちゃんは少しずつ自分の嫌いな部分とか弱いところを私に見せてくれるようになった。今思えば、しーちゃんは自分のパーソナルな部分を少しずつ私に公開してくれていた。「こんな自分でもいいですか?」って付き合う前の最終確認。私も今まで人に相談し辛かったこととか、少しずつ話したし、心の距離は確実に縮まっていた。

付き合ってからも、しーちゃんからスキンシップってのは手を握ったりとか、抱きしめたりとかくらいで。私が肩にもたれかかったりするだけで、「ドキドキする。」って言ってて、それがすごく可愛かった。真っ白なものを汚してる感覚で、背徳感もあった。私みたいな薄汚れた感覚の人間が、しーちゃんと一緒にいることが少し申し訳なくもあった。

ある時、しーちゃんが、私のこと好きなんだけどそれを上手く表現できなくて思い詰めてしまっていたので、「もっと甘えたり、スキンシップとかしてくれていいんだよ」って伝えた。もっと早くに言葉にすれば良かったのかもしれない。しーちゃんも少しずつ私に触れられるようになってきた。

でも、私に触る前に「髪触っていい?」「抱きしめていい?」とか聞いてくる。ある時、「いちいち聞かなくていいんよ。」って言ったら、「うーん…」ってすごい顔で悩み始めちゃった。しーちゃんにとっては、私に許可を得ることがセーフティだったんだって気づけたので、前言撤回して、しばらく許可制を続けた。

少しずつ触れる機会を増やしていって、しーちゃんも恐る恐るで触れてたのが、いつの間にか私に触れられるようになってきた。
褒められながら頭撫でてくれるようになったのが一番嬉しい。一人っ子の私にとって、しーちゃんは初めて経験する年上のお兄さんでもあるから。

あと、私が髪乾かすのサボりがちだから、しーちゃんが乾かしてくれるようになった。私の髪触るのが好きらしい。触り方もすごい優しくて、「きれいだねー」って言ってくれるし、あの時間の全てが嬉しい。乾かしてもらう時間が少しでも多いと嬉しいから、髪切りたくないなって思っちゃうほど。

触り方にいやらしさを感じないというか、純粋なんだな、とは思う。彼氏なんだから、もっと何というか、いやらしさあってもいいのに。
だから、時々心配になって、私から「触って」って言わないといけなくなるから、そこだけはもっと塩梅を見つけて欲しいかな、とは思う。

こうやって書き出してみると、結局しーちゃんは、自分の性の部分を私に伝えるのが苦手なんだな、って。しーちゃんと付き合う前は、男の人のそういう性的な目線がちょっと嫌だった。多分今まで付き合ってた人が、付き合い出してから露骨にそういう面を見せてきたから。恋愛ってそういうもんなのかもしれないけど、私には嫌悪感しかなかった。
けど、しーちゃんの私に対する触れたいけど触れられないみたいな葛藤してる純粋な姿を見て、彼の欲求を満たしてあげたいって思えるようになった。どうしてあげるのがいいのかは手探りだし、試行錯誤だけど。

それにしーちゃん、純粋装ってるけど、本当ぶりっ子で、実はちゃんと男の子だし。
ある時、共用PCで見たいページがあって、「それさっき見てたから履歴開けば見れるよ」って言われて、履歴を見たら、いやーそれはもう凄まじい数の履歴が下の方に見えちゃって 笑。黙っておくかどうするか、本当一週間くらい悩んだ挙句、しーちゃんに見てしまったことを伝えた。見たことないくらい真っ赤になって、すごい謝られたけど、あの時何で謝られたのか私は分からなかった。私も私でそこら辺の感覚はおかしいのかもしれない。

私がそういう履歴を見た時に最初に感じたのは、安心だった。しーちゃんもちゃんと男の子なんだな、って。で、履歴のタイトルを見て、「あっ…そういうの好きなのね…」ってのも分かって、ちょっとだけ嬉しかった。知らない一面が見れたみたいで。

しーちゃんは、本当に浮気したくらいの感じで謝って来て、購入したものとか全部削除するので許してください、まで言って来て。必死すぎて私は笑っちゃってた。
いい機会だったから、「私が全部受け止められるわけないし、私のことばかり考えてしてると飽きちゃうだろうし、そこは勝手にどうぞ」ってちゃんとお伝えした。怒られると思ってたしーちゃんは、その場ではポカンとしてたし、やっぱり私の考えが異常なのかもしれないけど。

しーちゃん自身は悪いことしたって思ってるみたいだったので、ちゃんと裁いてあげるのが優しさだなって思って、履歴にあったタイトル全部読み上げさせてもらったし、面白そうなのは見せてもらった 笑。横ですごく居心地悪そうな顔してるしーちゃん見るのが楽しくなって、それ以降、彼のそういう履歴が見つかる度に「読み上げ・同時視聴の刑」に処してる。(なんなら同時視聴は、雰囲気を盛り上げるために割とありだと思った。)

けど、そうやってオープンにしたことによって、しーちゃんも私に対して露骨に隠さなくてもいいって思ってくれたみたいで、スキンシップ出来るようになったのも相まって、私にそういうムーブをしてくるようになった。言ってさえあげれば、しーちゃんはちゃんと出来る子だから 笑。

どんな趣向があったとしても私は女で彼は男の身体だから、湧き上がる感情ってのは抑えようがないし、それを隠さず相手に伝えれないと、悶々とするだけで良くないと思う。しーちゃんがそういう表現をしてくれるだけで嬉しくなるのは、そういうこと。

私も、彼氏がそういう風に見てくれてるって、幸せなことなんだなって分かって来た。だって、好きな感情がそれだけ溢れてるってことだし、そんなに思ってくれてるなら、それに答えたいって思える。
しーちゃん、ずっと優しいから、なおさら、我慢しなくていいよ、って言ってあげたくなる。私でいいなら。

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