見出し画像

『インパクト投資消費者意識調査2022』の解説(前編)

SIIF インパクト・エコノミー・ラボ 織田 聡


はじめに 

SIIFではインパクト投資に対する消費者意識の定量調査を実施しており、2022年度の調査結果がこのほど纏まりました[1]。その内容を当ブログにて2回に分けて解説します。

【調査概要】
調査期間 :2022年8月8日~9日
調査形態 :インターネット調査
対象 :20歳から79歳までの全国の一般消費者
回答者数 :4,414人 (昨年4,127人)

なお、本稿制作にあたっては、『平均値だけを見ていてもあまり意味はない』との考えのもと、多様なクロス分析を行いセグメント別の意識や行動の違いを明らかにすることを心がけました。

1 消費者の投資経験率 -- 微増傾向にあるもまだ5割に届かず

この調査では毎回、インパクト投資についてたずねる前に、(株式や投資信託などの)投資をしたことがあるかどうかをたずねています。この問いを設けたのは理由があって、元々投資をしている人であればインパクト投資という新しい概念に対するアクセプタンス(受容度)が、投資経験のない人よりも高いのでは?との予想に基づいています。(ブログでもこののち触れますが、投資経験の有無は、インパクト投資の認知度や関心度の高低と相関関係にあります。)

投資したことのある割合(以下、投資経験率)は微増傾向にあります。それでも2022年での投資経験率は46.0%と半分に届いていません。
いわゆる「年金2000万円問題」で投資の重要性が叫ばれ、日本政府も貯蓄から投資へのスローガンを掲げているので、投資経験率の増加傾向は続くと思われます。

図表1 投資経験率の経年比較

このブログの最初のほうで「平均値だけ見てもあまり意味はない」と書きましたが、この投資経験率を性別と世代でクロス分析すると、男性は40代で少し落ち込むものの50代で再び増加に転じています。一方、女性は世代の上昇とともに投資経験率は一貫して増加します。

図表2 投資経験率 – 性別・世代クロス

さらに世帯金融資産額でクロス分析を行うと、より明確な相関関係が認められます。

図表3 投資経験率 – 世帯金融資産別クロス

2. インパクト投資の認知度

SIIFでは、「インパクト投資という言葉を聞いたことがある」だけでなく、意味を多少なりとも知っていることを「インパクト投資認知度」と定義しています。
その認知度は2022年に7.1%となり、初めて7%を上回りました。

図表4 インパクト投資認知度の経年比較

この認知度も平均値だけ見るのではなく、クロス分析を行うことで消費者像が見えてきます。
SIIFで様々な軸を試した結果、①投資経験の有無。②性別、③世代別の軸を掛け合わせることで、認知度が大きく異なることが分かりました。
具体的には投資経験ある20代、30代のセグメント(世代的にはZ世代とミレニアル世代)の認知度が高くなっています。
特に投資経験ある20代では、男女の差がほとんど無い点に着目しています。一方30代以降では投資経験ある人のなかでも男女差があります。Z世代の特徴と言えるでしょう。

図表5 インパクト投資認知度 -- 性別・世代クロス

もちろん、グラフから言えるのはあくまでも相関関係だけであり、「投資経験の有無が認知度に影響を与える」という因果関係は不明です。
もしかすると、新しもの好きや好奇心というパーソナリティが共通因子となり、株式投資をしたり、様々な情報源に触れてインパクト投資という言葉を知っている、と考えられるのではないでしょうか?

3 インパクト投資を行うことへの関心度

インパクト投資を実際に行うことに「大いに関心がある」と「やや関心がある」を合わせた数値をSIIFでは「インパクト投資関心度」と定義しています。
このインパクト投資関心度の経年比較を見ると2022年度は17.7%となり、コロナ禍で社会全体の投資意欲が減退した期間を脱し、上向きに転じました。

図表6 インパクト投資関心度の経年比較

このインパクト投資関心度も認知度と同様、投資経験ある20代、30代で高くなっており、さらに20代では男女差がほとんどありません[2]。将来、新しい世代が投資に参入してくることを考えると、インパクト投資関心度の性別による差はなくなっていくと考えられます。

図表7 インパクト投資関心度 – 性別・世代クロス

[1] 2019年より毎年継続して実施。
[2] 投資経験ある20代と30代の女性のサンプル数が100未満であり、統計的な有意性は十分とはいえない点に注意。

後編につづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?