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ロンドンで見た新しい“場”

■ シリーズ: ESGの一歩先へ 社会的インパクト投資の現場から ■
執筆者:SIIF 小柴優子 (2019/07/31)

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インパクト投資の推進をするグローバルなネットワークGSG (the Global Steering Group for Impact Investment)のミーティングに出席するために訪問したロンドンで、新しい“場”として注目されるコンデュイ(the Conduit)を訪れました。コンデュイはいわゆる会員制ラウンジ。昨年9月に創立されたばかりですが、すでに3000人もの有料会員を集めています。

ロンドンで見た新しい場

写真:コンデュイのラウンジ
立地は高級ホテルや老舗ブランドショップが立ち並ぶメイフェア地区。インテリアや食材はエシカル調達を徹底しています。洗練されたおしゃれな雰囲気が、ソーシャル関係者だけでなくその周辺にいる層も呼び込んだといいます。
シェアオフィスやラウンジとしての機能だけでなく、ビル1棟をまるまる使ってイベントホール、カフェ、レストラン、テラス、バーなども併設。私が訪れた日も、ミーティングをしている隣の席で起業家とアクセラレーターが熱く語り合っていたり、偶然出会った人たちが自己紹介をしていたり。活気に溢れた出会いの場として、その機能を存分に発揮しているのを目の当たりにしました。
スタートアップの人たちが集まるコワーキングスペースは最近多くありますが、コンデュイは起業家だけでなく、投資家や起業家ビジネスリーダー、NPO、技術者、政策立案者などソーシャルインパクトに関心のあるさまざまなプレーヤーをつなぐのが特徴。メンバーシップ制度では、男女比や職業比などが明確に定められていて、一定の業種に偏らずに交流できる仕組みになっています。さまざまなイベントも企画されていて、そこにいるだけで毎日、新しい刺激やコネクションが得られるのです。
特筆したいのは、インベスティメントに関する①コネクト②ファンド③ファンデーションの3つの機能。「コネクト」はメンバーのみがアクセスできるオンラインプラットフォームで投資家と投資先のマッチングを行います。「ファンド」はファンドを作りたい人のためにバックオフィスを提供する サービス。そして「ファンデーション」はメンバーが投資先を決める“コンデュイ・ファンデーション”というベンチャーフィランソロピーです。これらはまだ準備を進めている最中ですが、単なるコワーキングスペースに留まらない有機的な発信基地を目指していることが感じ取れます。
5月に発表したGSG国内諮問委員会のソーシャル・エクイティファイナンス分科会の提言書「社会的インパクト時代の資本市場のあり方」でも「総合的な支援コミュニティの構築」が課題となっています。人と人が交流できるコンデュイのようなリアルな“場”を持つことも一つの答えといえるでしょう。出会いを生み出すサスティナブルな仕掛けを、私たちも模索していきたいと思います。

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