見出し画像

「虹獣(コウジュウ)」5章:ルノア 7話:包囲(ホウイ)

 遅めの朝を迎えたルノア達は、ほぼ同時に皆々が眠りから起き出し、寝ている間に抜けた水分を補給する為に揃って川へと降り立って行くのであった。寝ぼけながら川の水を各々が摂取する。水を飲みながら昨日の疑問を消化し切れていないパラがルノアへと疑問を投げ掛けた。
「ルノア…?あたいは知っての通り人間から虐げられた過去がある…。それによってあたいは人間に対して客観的な判断を下し難く、主観的な判断によって冷静さを失いネガティブな発想に捉われてしまう事が多々ある…。どうしたら物事をバランス良く捉える事が出来るようになるだろうか?」
パラは自分の問題点に気付き始めた事により、より良い改善を行い更なる成長を自分へと促したかった。同時に敬愛するルノアとの接点を増やす事で、より親密な関係を構築したいとの想いが強まっていたのであった。
「うん……。虐げられた事はとても辛く大変な事だったと思う。けれども、その視点だけに捉われていたら視野が狭くなり、結果的に自分を不幸に導いてしまうかも知れない…」
「例え十人の内九人が自分を虐げたとしても、その九人は百人の内の九人かも知れない…。生きているものは自分の経験に凝り固まってしまう傾向もあるが、柔軟性やバランス性を重視し、常に物事を多角的に捉える癖を養うと道が開けてくるように思えるが…どうだろう?」
ルノアはパラからの問いに対し、一定の共感を示しつつも合理的な思考の仕方を示してみるのであった。
「…、柔軟性やバランス性、それに多角的か…。すぐには無理でも意識し続ける事によって、少しずつ身に付けていけるといいな…」
パラは自分の主観に凝り固まっていたところがあったが、ルノアからのヒントを受けて何となくだが、自分を客観視する事が段々と出来るようになっていくのであった。
「人間全てが悪では無い。もちろん、全てが善でも無い。私達の立場としては、私達にとって善なのか悪なのか、その判断を敏速に感じ取り適切な対処をしていく事だと思う」
ルノア自身も身をもって人間の善き面、悪しき面を経験してきた。その経験を元にルノアは生存するにあたって、より良き選択を行う為に人という存在を深く理解した上で自分達の生存に活かそうと考えていたのであった。
「なるほど…。確かに人という存在を全てが悪と認識してしまっていたら、善なる人から得られるものを失ってしまい、それどころか善なる人を悪なる人に転じさせてしまうかも知れないな…」
パラはルノアからの指摘を深く噛み締め、より良く自分を成長させようと意識するのであった。
「ん…、当面の問題として我々は野良なのだから、善なる人を感じ取るより、悪なる人を感じ取れた方が、我々にとってはより良いプラスへと働く事だろう。そういった意味では、パラの人間への警戒心は大切なものだと思う」
ルノアはパラへダメ出しばかりにならないように、パラの良い点も挙げて伝える事によって、パラが意識をバランス良く保てるように配慮しながら言葉を伝えるのであった。

 休息も束の間、夜が深まり出した事により、ルノア達は目的の繁華街へ食糧調達と人間の動向を探る為に出掛けるのであった。目的の店を手前にした所で潜伏するルノア達、パラが違和感を感じ取り、その旨を皆へと伝える。
「…、何か…。何だろう?…。監視されているようなプレッシャーを感じる…」
パラの唐突な言葉に周囲を警戒する皆々。しかし、それほどの危険性はルノア達には感じられなかった。
「ん…。パラの慎重さや感受性は気になるところであるが、このままここに居て様子を伺うだけでは何の進展も得られない。取り敢えず、食糧調達の予定を遂行しよう」
ルノアはパラの意見に気を留めながらも、目的を果たす事に意識が向いていたのであった。繁華街の飲食店のゴミ箱へと集まるルノア達、その時サーチライトが一斉にルノア達へと浴びせられるのであった。
「何これ!まぶしい!」
咄嗟にルナが叫ぶ。
「しまった!人間に罠を張り巡らされていたか!みんな!撤退するぞ!」
ルノアは突然の事に驚きつつも冷静に撤退の判断を仲間達へと示すのであった。
「獣には獣ってね…!」
捕獲班の責任者がそう呟く、同時に随行させていた犬達に指示を与えルノア達を追わせるのであった。逃げながら皆へと指示を出すルノア、
「畑の隣にあった草原地帯で集合しよう!排水路は逃げ場が無いし居場所を知られると厄介だ!」
それを聞いた皆は各自一時分散しながら必死に逃げるのであった。各自逃げるルノア達を追跡してくる四頭のシェパード犬。その犬達は、より効率良く忠実に働かされる為に、脳にマイクロチップを埋め込まれていた。脳に対する刺激の調整によって、より忠実で効率の良い働きをするよう実験体として運用されていたのであった。

 無事に何とか草原へと逃げ着くルノア達、だが草原の奥には人間に使役された犬達が先回りをし、背後からは人間達が追い着き包囲される状況に陥るのであった。
「ちっ!まんまと人間の罠に嵌ってしまうとはな…!」
人間にすら匹敵する自分の才覚を信じるルノアは、人間が作り出す罠に嵌められた事により苛立ちを示していた。包囲態勢が整った事により捕獲班の人間は犬達へルノア達を追い詰めるように指示を促すと同時に端末によって脳への刺激を促すのであった。じわりじわりとルノア達との距離を詰めながら、より深い包囲を構築してくる犬達と人間達。包囲されつつ危機的状況に陥ったルノアが犬達へと叫ぶ、
「貴様らは動物であろうが!野生の心を忘れたのか?人間如きに使役されて情けなくないのか?」
「人間は都合良く動物を利用し、利用価値が無くなれば煮られ喰われてしまうのだぞ!」
ルノアは追い詰められた状況により焦りが生じ、感情を露わにしながら犬達へと叫んだ。狡兎死して良狗煮らる…。実際に食糧不足に悩まされていた人間達は、使役していた犬達を殺し食糧としていた事実を犬達も感づいており動揺を見せた。犬達の動揺を見て感じ取った捕獲班の責任者は端末を使って犬達の脳への刺激を強化し、指示に従うように強要するのであった。
「同族である我々が争う理由がどこにある?その結果、漁夫の利を得るのは人間達だ!」
人間達からの指示や強要、ルノア達との同族であるが故の共鳴、犬達は深い葛藤に陥り何も選択出来ず、その場でうなだれるのであった。そんな犬達の様子を観て捕獲班の責任者は端末を操作し犬達の脳への刺激を最大値まで上げるのであった。突然の大きな刺激によって犬達の脳は限界を超え苦しみ出し、その場に横たわりピクピクと痙攣を起こすのであった。犬達が役に立たぬと判断した捕獲班の人間達は、ショック弾をルノア達に向けて放つのであった。標的に当てる事により大きな衝撃を与え対象を気絶させる為の銃である。痙攣を起こした犬達に気を取られていたルノアは、人間達の放つショック弾に隙を突かれ、あわや直撃を被る事態であったが、たまたま人間達へと意識を向けていたルナが得意の空中戦で迎撃しショック弾を全て叩き落とすのであった。
「こんなもので、あたし達を何とかしようなんて甘くみないでよね!」
ルナは自分の活躍を得意気に示しながら、人間達へ更なる警戒を高めるのであった。
「うぅ…ルナ…。ありがとう…。だけど危ない真似はあまりしないで欲しい」
ルナの活躍に感動しつつも、万が一の事を考えルナに自重を促すエティであった。ショック弾を叩き落された人間達は次なる手段に出ようとしていた。犬達は痙攣も弱まり、その場で動かなくなっていた。そんな状況を把握したルノアが皆へと指示を出す、
「今が好機だ!犬達の横を通り抜け包囲を突破するぞ!」
ルノアがそう掛け声を挙げると同時に、捕獲班の責任者は散弾銃を使用するよう部下へと指示し、その銃口がルノア達へと向けられるのであった。
「何度でも叩き落としてやるんだから!」
ルナはそう自信満々に強く意気込みを発した。
「いかん!ルナ!逃げるんだ!」
応戦しようとするルナに対し、勝算無く逃げる事を重視していたルノアが制止する声を掛ける。と同時に発砲される散弾銃。得意の空中戦で迎撃しようと空を舞ったルナは、不幸にもたくさんの銃弾を浴びる事となり即死するのであった…。
「ルナ!…」
自分の背の上から崩れ落ちるルナを見て咄嗟にエティが声を挙げる。大きな体にかすめた銃弾の傷など気も留めずに動かなくなったルナを一心に心配するエティ。
「エティ!ルナはもうダメだ!撤退するぞ!」
ルナが即死したショックを抑えながら撤退を強く指示するルノア。次なる発砲の為に銃弾を込める人間達。
「うぅ……」
ルナの死に悲しみながらもルノアの指示の正しさを理解したエティは、口でルナの亡骸を咥え走り出すのであった。同時に走り出し逃げ出すルノアとパラ。夜間であった事や動物の運動性に敵わぬ人間達は追跡を諦め、その場に留まるのであった。

 草原を離れ遠回りをして排水路付近の空き家へと辿り着くルノア、パラ、エティ…そしてルナの亡骸。空き家の塀の片隅にルナの亡骸を口から降ろすエティ。息切れを起こす三匹達。
「うぅ……、私がルナの尻尾を咥えてでも制止出来ていれば……」
大きな体格に似合わずエティが小さくそう呟く…、
「…、咄嗟の事だった…、仕方がない……」
そうルノアはエティを慰めるよう言葉を掛けつつも、ルナが亡くなった事へのショックを隠し切れずに居た。
「…、うん……、あたいも何も出来なかった……。あたい自身の事で精一杯だった……。それでもルナは皆を守る為に立ち向かってくれたのに……。皆を明るく元気付けてくれるムードメーカーだったのに……」
パラが涙ながらにそう呟いた。突然のルナの死をすぐに受け入れる事が出来ず空き家外の片隅で呆然と立ち尽くす三匹達…。そんな三匹の下へ、どこからともなく二羽の鳥が舞い降りて来た。ヴァロとソルカの鴉である。
「よぉー!どうしたんだい?そんな所で?。…、はっはぁん…、仲間が死んだのか。まっ!死んだ以上は仕方が無い、食糧として有効活用するべきだな!」
空き家付近の木に降り立ったヴァロが、あっけらかんと冷徹な判断を告げる。
「仲間を食糧にだと!」
ルナを失った悲しみに浸っていたルノアは、情感を無視した冷徹なヴァロの発言に怒りを示すのであった。
「はっ!…、そう怒るなって。仲間とは言え死んだ以上は仕方が無いだろう?過ぎた事をくよくよと気にするより、これから先に対して有益な選択をするんだな!」
ヴァロは悲しみに浸り情感に左右されているルノア達に馬鹿らしさを感じ、ぶっきらぼうにそう言葉を発した。
「おまえ達、鴉が死んでも同じようにするのか?伴に過ごした仲間に対し、何の想いも抱かないのか!」
悲しみに暮れていたパラがヴァロに向かって怒りを露わにする。
「まぁまぁ…、双方共、無益に争う必要なんてないだろう。ルノア達の亡きものに対する気持ちは解るつもりだ…。しかし、現実問題亡くなったものに想いを抱いていても何ら益するところが無い…」
「ヴァロの発言は想いを無視した冷徹な提案であるが、現実に即した発言である事も考慮して欲しい」
ルノア達とヴァロの言い争いを眺めていたソルカが、両者の中間を選択するよう促し発言する。
「しかし!…、仲間を食うなど…」
ソルカの言い分に一定の正しさを感じつつも、抵抗を強く感じるルノア。
「…、どのみち食べても食べなくても、亡骸はそのまま腐蝕して消え往くか、他の動物なり虫なりに食べられ消え去る結果が待っているだけだ…」
ソルカは心揺れるルノアに対し、現実を淡々と語るのであった。
「……、くそっ!何か選択が違ってさえいれば!…」
現実を受け入れ始めたルノアが自責の念を怒りとして発する。
「……、パラ…、エティ…、ルナの亡骸を食べよう…。食べる事はルナを害する事では無い…。食べる事によって我々の血肉とし、これからも伴に生きていくのだ…」
ルノアは熟考し、ルナへの想いを昇華させつつも、合理に適った判断を下すのであった。
「……、そうだな…。せめてルナの死を無駄にしない事が、ルナへの手向けかも知れない…」
パラは悲しみと冷静さが入り混じった内情を抱えつつ、ルノアの提案に同意しルナへの想いを語るのであった。
「うぅ……、私さえもっとしっかりしていたら…。うぅ…ルナには元気に明るく長生きして欲しかった…」
ルナへの想いが溢れるエティが後悔の念を言葉にする。
「うぅ……、私は体が大きいばかりで仲間の役に立つどころか…、うぅ…多くの食糧を必要とし仲間の足を引っ張り負担を掛けてしまった…」
ルナの死に深い自責を覚えたエティは自身を強く責めるのであった。
「そんな事はない!エティが居なければ開けられなかったゴミ箱もある。調達出来なかった食糧もある。エティの大きな体格は私達に安心感を与えてくれた…」
エティの自責に対し、ルノアはエティを肯定し励ます言葉を掛ける。
「そうさ!エティはあたい達みんなをいつも包容してくれる優しさがあった…。ルナの事は残念であるけれども…、エティがそこまで自分を責める事はないさ」
ルノアの発言に続いてパラがエティを肯定し励まそうと言葉を掛ける。
「うぅ……、体ばかり大きく、食糧を多く必要とし、最愛のルナを死なせてしまった…。うぅ…、今回の事だって私が居なければ目立たず逃げれたかも知れない…。うぅ…、私がたくさん食べなければ、もっと余裕を持った生活が出来て危険を回避する事が出来たかも知れない…」
ルノアやパラの気遣いは届かず、エティはひたすらに自分を責めるのであった。
「うぅ………、ルナが亡くなった今…、私にはもう生きている意味が無い……。ルノアさん…、パラさん…、どうかお幸せに…。私の無駄に大きい体を食糧として下さい!」
そう言うやエティは、空き家の崩れ掛かり突き出て尖った太い木の棒へと頭から突っ込み自害し果てるのであった。
「エティ!」
突然走り出したエティに向かい制止するよう咄嗟にルノアが叫ぶ。しかし、その言葉は届かず制止する事も間に合わず、太い木の棒に頭から突き刺さり血を流すエティの姿がそこに遺るのであった。
「…エティ…、どうしてさ……」
突然の事や立て続けに亡くなる仲間の死に対し、パラは激しくショックを受けていた。
「ふぅーん…。お前ら無駄にややこしいな。まっ…、結果だけみれば食糧が増えたって事だ、俺らにも分け前をくれるとありがたいな!」
ルナに続いて突然のエティの死により深く動揺していたルノアとパラに向かいヴァロが言い放つ。
「ちっ!貴様ら鴉は同朋の死に何の想いも抱かないのか!」
ヴァロの情感を無視した発言に怒りを露わにしたルノアが、鴉二羽へと怒りをぶつける。
「…、ん…、想う事は想うな。だが死んだ以上は何を想っても無駄だろ?まだ生きている俺達の血肉とする為に食糧にするのが合理的だな」
ヴァロは情感を無視したような、すっ飛ばしたような、過程を無視し結果だけを捉えるような、冷徹でありながらも現実的な言葉をルノア達へと浴びせるのであった。
「…くっ…、確かに合理的かも知れない!だが…、伴に過ごしてきた仲間をそうも簡単に割り切れるものなのか?」
ルノアは激高しながらも冷静に努めながらヴァロへと反論する。ヴァロの粗い発言を補正するかのように怜悧なソルカがルノア達へと発言する。
「…、んー…。割り切れるかどうかでは無く、割り切るしかないんだよ。現実問題、私達は何かによって保護され安泰を得ている生き物では無い。そんな立場や環境である以上、感傷に浸る事は自らを危険に晒す行為となる。ともなれば、割り切って未来を活かす事に視点を向けるのが、結果的に亡くなったもの達への手向けとなるだろう」
「……、確かに…言ってる事は解る…。けれども…ルナも…エティも…、大切な仲間だったんだ…」
情感と理性の狭間で許容量を超えたパラが小さく呟く…。
「…っ!、私の作戦行動のミスだ!パラの警戒心をもっと注視していれば!人間への警戒心をもっと高めていれば!」
行き場の無くなったルノアの想いは自責へと向かうのであった。
「……、ルノア……」
情感と理性の狭間で揺れるパラは、ルノアの名前を呼ぶ事でしかルノアを気遣う事を伝えられずにいた。
「…、感傷に浸っているところ悪いが、エティとやらの亡骸を私達にも喰わせて欲しい。どの道、ルノア達が全てを食べ尽くせるほどの量ではない。食べ切れずに残したとしても、他の獣や鳥や虫が喰い尽くすか、腐敗させて無駄にするだけだろう」
ソルカは現実的な事実を述べ、ルノア達へと交渉するのであった。
「……、生きる…、野生…、久しく忘れていたよ…、良き伴との出逢いによって…」
ルノアは夜空を見上げながら、そう呟いた。
「良き伴だった…、良き仲間だった…、孤独を抱えて生きてきた私に、温かいぬくもりを与えてくれた…。彼らと伴に長き生を歩んで往きたかった…」
夜空を見上げたまま、ルノアがそう続けて呟く。
「…、ルノア!まだ、あたいがいるよ!あたいはいつまでもルノアと一緒に居るさ。ルノアの傍にいつでも居るさ…」
ルノアがどこか遠くへ消え去りそうに感じたパラは必死にそう叫んだ。
「…、パラ…ありがとう…。そうだね、せめて私達だけでも生き延びて、エティやルナの死を無駄にしないようにしないとね…」
ルノアは見上げていた夜空から視点をパラへと移すと同時に、感傷に浸っていた自分を現実に適合させた自分へと切り替えていくのであった。
「ソルカ、ヴァロ…。エティの亡骸を君達が食べる事を許可しようと思う…。ただ…心の臓に近い部分は私達が食したいと思う…。非現実的な話かも知れないが、エティやルナの心をこれからも伴に連れ立っていきたい。私達の心の中でエティやルナが生き続けていけるように…」
ルノアは現実的な判断をしつつも、心を大事にした理想的な判断を複合させた結論を下すのであった。
「…、ん…構わないよ。私達はおこぼれにありつけるだけでもありがたいからね」
そうソルカは淡々と返事をするのであった。
「ルナの亡骸はあたいに預けて欲しい…」
いよいよもってエティとルナの亡骸を食する段階に入り、パラがそう発言する。同じ雌同士の気持ちからだろうか、パラはルナが他のものに食される事へ、ルナが凌辱されるような想いを抱いていた。同じ雌であり猫である自分が食するのであれば、その凌辱感は薄まると感じたのであった。
「解った…。ルナの心はパラに任せる…。ルナの想いをこれからもパラの中で活かし続けて欲しい…」
グループの中で一番幼かったルナ、けれどもムードメーカーとしてグループを明るくしていたルナ。そんなルナの心を大事にしようとするパラの想いへの反論は無く、ルノアはルナへの想いをパラへと任せるのであった。
「はっん!話は済んだようだな?早速食事にありつこうぜ!」
ルノア達の様子を眺めていたヴァロが、ルノア達の想いを無視するかのような、せっかちな発言をする。
「……、そうだな…。感傷に浸り時間を費やしても腐敗を招くだけだな…」
ヴァロの気遣いの無い発言に怒りを覚えつつも、現実的な判断を下しルノアは返答するのであった。返答した後にエティの亡骸を前に一呼吸を置くルノア…。そして、まだ生温かいエティの胸の付近へと牙を差し込みエティを食していくのであった。それを観たソルカとヴァロはエティの下半身部分をクチバシで突きエティを食していく。そんな三匹の姿を眺めながらルナの亡骸と向かい合うパラ…。
「…、守れなくてごめん…、いつも場を明るくしてくれてありがとう…。これからも、あたい達と伴に生きて欲しい…」
そう呟くや決心したパラはルナの亡骸を食し始めるのであった。エティやルナの亡骸を食しながら、エティやルナとの想い出を回想するルノアとパラ。声を押し殺したまま自然と涙が溢れる二匹であった…。



サポートよろしくにゃ(=^・▽・^)人(^・▽・^=)