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「場合による」というゴミ返答

今回は、サイレンスキャットが日常で少々気になっていることを、競馬を例にして紹介します。

上記の記事で、今の時代は結論を保留しがちであることと、結論を保留する連中は養分という話を書きましたが、それに関連する内容です。
 

「場合による」という安全コメント

物事は0と100の2択ではなく、どちらにも転ぶような事象がほとんどです。

例えば、5位で終わるようなチームじゃない中日ドラゴンズについて、私は今年も95%Bクラスだと感じています。気持ち的には99%なんですが、賭けるかどうかを考えると95%以下が許容ラインです。つまり、
Aクラス→20倍 Bクラス→1.052倍
というオッズなら賭けてもよいですが、
Aクラス→100倍 Bクラス→1.01倍
というオッズなら賭けません。
賭ける行為をしない想定なら99%を主張するということですね。

では、「ドラゴンズは今年何クラスかな?」
と質問された場合は、どう答えるでしょうか?
私なら、相手に合わせた返答をすると思います。
ドラゴンズの大ファンにBクラス予想を伝えてしまったら、お互いバトルフェイスをする羽目になるかもしれません。

こういった返答場面での安牌発言が
「場合による」
です。どんな物事においてもこの返答は(事実を発言しているという意味で)間違っていない返しになっています。
 

「場合による」の情報量

では、「場合による」という返答の情報の価値を考えてみましょう。

汎用度と価値は反比例します。
「川田将雅、C.ルメール、松山弘平って知ってる?」
という質問に対し、最もよい返答は
「栗東の現役トップジョッキーだね」
です。「現役」や「栗東の」は必要に応じて省略します。
「男だね」
「人間だね」
という返答は、正しいですが情報としてはほぼ意味なしです。競馬を知らない人にとってルメールは男か女かわからないので、前者は雀の涙くらいは意味のある情報ですが。

つまり、いつでも使える「場合による」という返答はただのUnkoです。
「今日は寒いですねえ」の足元にすら及ばない無意味な発言です。
 

競馬中級者ほど「場合による」

競馬において「場合による」を言いがちなのは中級者です。
例として、
「小倉競馬場の芝は前が有利なんですか?」
という質問の答えを考えてみましょう。

1.初心者
超初心者は、そもそも直線が短いコースということも知らなかったりするので、答えられません。ダビスタなどをやる初心者なら、「前有利です」と言えます。

2.中級者
中級者になれば、最終週で外差しになったり、重馬場で内がボコボコになったりすることを知っているかもしれません。また、当然ですが逃げ馬ばかりだったら差されます。
以上のことを考慮し「場合による」と言ってしまいがちです。
言ってる本人は正しさを追求してそうなっているのですが、質問した側からすれば何の益もない回答です。

3.上級者
上級者は、少々話をすることによって相手の競馬レベルが想像できるので、相手に合った返しができます。
超初心者には「前が有利だよ」と言い、初心者~中級者には場合に応じて「開催後半は差しが利いたりするね」などと言います。「場合による」を発言するなら、前置きではなく最後に付け足すことでしょう。

3次元4次元など、本来の意味の「次元」において、高次元から低次元を観察することができます。それは日常にも当てはめることができ、次元の高い上級者は相手がどのような意図で質問しているかを読み取る余裕があります。
中級者は、相手の望むことを考えるよりも「自分はこんなに知っているぞ」ということに囚われがちなため、場合によってしまうのです。
 

事実的な正しさは情報的にゴミ

競馬において、初心者の知りたいことは「指標」です。
少々の齟齬があろうとも、ある程度正しい
「調教はラスト12秒台が出てると嬉しいね」
「ハービンジャー産駒は2000mが得意」
「リーディング上位への乗り替わりは勝負がかり」
などを知ることを望んでいます。それらを知識として集めてから、個々の場面を考えていけばよいのです。

初心者の質問に対して「場合による」という発言を先行させるのは、数学知識0の人に「この数学の問題は解き方が様々あるよ」とアドバイスするのと同じです。

正しいことを言って得意になっている無様な自分にならないためにも、「事実的な正しさを伝えるのが正しくない」場面が多々あることを肝に銘じたいものですね。

蛇足:タイガーマスク

かの有名な佐山道場でも、
「相手に効かなきゃ意味がない」
と教えています。教え通りに思いっきり行動しないと
「ナメてんのか!?」
とビンタされること確実です。あえてビンタされるのも、技術のうち。

「投げ銭」はストレート、「サポート」だとオブラート。 物は言いよう。もらえたら喜びます。