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【レポ】日本語教師を増やすためにはどうしたらいいと思いますか?

日々聞いてきたFMラジオ局J−WAVEのニュース番組、JAM THE WORLDがやっと日本語教育・日本語教師の現状に目を向けてくれた!という思いでしたが、実際に昨夜の放送を聞いて率直に感じたのは、期待していたほど掘り下げた話がされなかったということです。

今夜、皆さんから募集するメッセージテーマは『日本語教師を増やすためにはどうしたらいいと思いますか?』。大学で日本語教育を学んだ方、「日本語教育能力検定試験」を受験した方、教えた経験がある方からのメッセージもお待ちしています。

先のツイートに加えて上記のような募集もありましたが、わずか2時間ほどの放送時間内に他のテーマについても話すということもあり、番組に寄せられた現場の声や経験・体験談、要望といったメッセージはほとんどと言っていいほど紹介されませんでした。

radikoプレミアに加入すれば、タイムシフト、エリアフリーで昨夜の放送内容を聞くことができると思いますが、Twitterで「 #jwave #jamtheworld 」と検索すれば、番組へ寄せられた数多くの思いを見ることができます。


さて、メッセージのテーマでもあった「日本語教師をふやすためには…?」について、番組に意見したことも含めて二、三書きたいと思います。


日本語教師の成り手不足に関して問題点は多々ありますが、まず第一にいえることは「不安定な収入」ではないでしょうか?

番組内でも「日本語教師雇用形態」が少しだけ話題に上がりましたが、現在国内で働く日本語教師の約57%がボランティアで、次いで約30%が非常勤講師として働いています。(平成29年度国内の日本語教育の概要/文化庁 http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/nihongokyoiku_jittai/h29/

このような非正規雇用の場合は、担当する授業に応じて給与が支払われ、番組内では時給2000〜2500円と話していましたが、一般的には担当コマ数計算されることが多く、1コマ(約45〜50分)あたり1500〜1800円という記載をよく目にします。最近は教師不足ということもあってか、少し高くなったような印象がありますが、私が勤めはじめた頃はコマ給が1400円、研修期間は1000円程度でした。

中には収入を増やすため、いくつかの学校での授業を掛け持ちしたり、夏休み、冬休みなどの長期休暇中は収入が激減してしまうので、アルバイトをしたりする人もいるほどです。
各教育機関にもよりますが、国公私立の学校と同じように、給与の発生しない授業時間以外の業務・雑務(教材作成、準備、試験の採点、作文の添削 及び 授業記録の記載、引き継ぎ連絡 等)も多く、単に担当する授業数を増やすと手一杯になってしまい、続けるのが難しくなってしまうこともあります。


次に「待遇の悪さ」です。
もちろん、先に書いた「給与・収入」も待遇のうちに入りますが、授業外の業務時間がカウントされない、月々の収入が一定ではないといったことが理由で、雇用保険に入れてもらえない、定期券が購入できないというケースもあります。
中には、有給や代講手当てまである待遇のよい学校もあるそうですが、私は未だに巡り会えてはいません。

また、授業で使うテキストや教材費が自費、もしくは一部負担という学校もあり、学生の対応や引き継ぎ業務、ミーティングに追われていると休憩時間に満足に食事することもできず、トイレにすら行けないということも日常茶飯事です。
学校側に改善を求めても取り入ってもらえず、嫌だったら辞めてもらって構わないとまで言われたこともありました。

激務ではある反面、外国人留学生たちの成長を側でサポートすることができ、彼らの文化にも接せられるなどやりがいも多く、私自身今後も日本語学校で働きたいという思いもあります。しかし、家事や育児との両立を考えるとなかなか難しいのが現状です。


そして最後に「日本語教師の認知度の低さ」があげられると思います。
日本語教師を職業にしはじめて約8年、勤め先を変えたり、異業種に転職したりもしてきましたが、トータルして5年ほど国内の日本語学校で外国人留学生を対象に教えてきました。その間に友人、知人から言われることといえば…

英語ができるからいいよね、教えられて!
日本語で教えるなら、私も先生やりたい!
小学校?中学校?国語の先生と何が違うの? など

日本語教師の間ではあるある話ですが、こういった質問をされるたび、これほどまで「日本語教師」という職業が日本人にすら認知されておらず、軽視、誤解されているんだと思わされてきました。

番組内でも堀潤さんがゲストの山本弘子さん(日本語学校「カイ日本語スクール」代表)に確認していましたが、日本語教師は、どんなところで、どんな人たちを相手に、どうやって日本語を教えているの?とあまり知られていないのも確かです。
一時、テレビドラマ『日本人の知らない日本語』が話題となり、それを見て日本語教師という職業を知った!日本語教師になりたいと思った!などと話す人もいましたが、やはりドラマはドラマ。実際の現場とは異なります。

山本さんが話していたように、日本国内の学校のほとんどで「直接法」と呼ばれる媒介語を介さない指導法が用いられているため、日本語を日本語で教えることになります。
それなら日本人や日本語が話せる人、誰でも教えられるかというとそうではなく、例えば「から・ので」の違いや、「きれい」「美しい」は同じ意味か、「入る」と「入れる」漢字は同じでも何が異なるのか など、何気なく使っている日本語の言い回しや細かなニュアンスの違いを、まだ日本語のつたない学習者に教えなければならないのです。
教師が理屈っぽく説明をしても伝わらないので、例文やイラストを使い、繰り返し練習させます。また、国籍も年齢も性別も様々な学習者たちに接し、定着しているか様子を見ながら、バランスよく発話させることも大切です。

日本語教師としての普段の仕事内容や教え方などを話していると、あっという間に時間が過ぎてしまい、仕事の楽しさや大変さを伝えることはおろか、自分自身のことも話せずに初対面の人との会話が終わってしまうということも多々ありました。そんなもどかしさを感じつつも、自分の職業に興味を持ってもらえたこと、一人でも多くの人に「日本語教師」の役割を知ってもらえたことを嬉しく思います。
もし、日本語教師が専門職として広く認知されるようになれば、先に述べたような給与や待遇の改善にもつながると考えています。また、コンビニや飲食店などでアルバイトをする外国人留学生も多い今日、どんな目的で日本へ来たのか、どのようにして日本語を習得したのか、彼らの努力や苦労がわかれば、ほんの少しでも身近に感じられるはずです。

国を挙げて外国人労働者を多く受け入れていくことを決め、先月6月には『日本語教育推進法』が成立した以上、今までうやむやにされてきた日本語教育の現場が淘汰されることを強く望んでいます。そして、一人ひとりの日本語教師がやりがいや自信を持ち、活躍できる場や可能性が広がっていくことを期待しています。


◾️J-WAVE   JAM THE WORLD 
https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/


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