注意喚起中の韓国で見た、ハットグ・タピオカの次に来る食べ物

8月4日、日本の外務省はソウルや釜山で大規模な反日デモが行われているとして、韓国への渡航者に向けて注意喚起をホームページに掲載しました。

日本の外務省が韓国への旅行に注意喚起 反日デモが頻発

その頃、私は釜山・海雲台でのバカンスをのんきに楽しんでいました。

注意喚起の対象となっているのはソウルや釜山でも日本に関連する施設や韓国独立にゆかりのある場所に限定されます。私がいた海雲台は国際的なリゾート地で、欧米人や東南アジア系の人々も多いのです。だいいち目の前に広がる海に夢中で、政治問題を持ち込む雰囲気はありません。もっとも西門や南浦洞などソウルの中心街にも足を運びましたが、私が見た限りでは以前と変わらない時間が流れていました。

東アジアを旅すれば、日本の流行が先取りできる

こんにちは、白井結城(しろい ゆき)と申します。大学で化学と社会学を専攻したのち、現在は東京でウェブのエンジニアとして働いています。

中国語と韓国語を学生の間に学んだので、年に一度か二度は東アジアへ旅行に行きます。面白いのは、そこで目に留まった事物のなかから、日本でもしばらく後になって流行り出すものが現れることです。

今年の冬には台湾へ行き、そこで友人と一緒にタピオカ店を何軒か回りました。すると翌月、新元号の発表とともにタピオカの再ブームが起こりました。

去年の八月には韓国のソウルと釜山に行きましたが、そこでは小さな扇風機を手にする人々と、屋台で売られているアメリカンドッグのような食べ物を目にしました。その小さな扇風機は日本でもすぐに見かけるようになり、今年は大型量販店でも売られているようです。そしてアメリカンドッグは「チーズドッグ」あるいは「チーズハットグ」の名称で、11月頃からテレビでも取り上げられ社会現象になりました。

そもそも私が初めて韓国に行ったのは2015年の冬でしたが、その時にはスマートフォンを長い棒につけて自身を撮影する人々を目にしました。「セルカ棒」と呼ばれていたそれは「自撮り棒」と名前を変え、流行り物好きの人々に新しい撮影スタイルを提供するとともに、その使用マナーをめぐってやはり社会問題にもなりました。

こんなわけで、私の海外旅行はなかば「ブームの先取り」あるいは「流行の現地視察」という意味合いを帯びています。今回は釜山にしか行かなかったので最先端とまでは行かないのですが、それでも気になったものがいくつかあったのでランキング形式で紹介します。

● 第三位:カプセル女児向けドール「L.O.L. サプライズ!」

● 第二位:耳がピョコピョコ動く「うさみみ帽子」

● 第一位:餅とソーセージが交互に「ソットクソットク」

以下、詳しく見ていきましょう。

第三位:カプセル女児向けドール「L.O.L. サプライズ!」

一つ目は街中のおもちゃ屋で見つけた玩具です。私自身はポンチャックマシーンを探していたのですが(結局この店では見つからなかった)、東南アジアから来たとおぼしき女性観光客の一団が店員にこれらを買い求めていました。

調べてみると、世界的に流行している女児向けドールのおもちゃで、カプセルに様々なドールや装飾品がランダムに入っているようです。日本でも去年タカラトミーから発売され、タレントの渡辺直美さんを起用して商品展開したりしているようです。

L.O.L. サプライズ!|タカラトミー

日本の女児向けおもちゃと言えばプリキュアやプリパラ関連のものが現在メジャーですが、かつてはゴテゴテしているように思えたSnowやSnapchatなどの加工アプリが流行したように、こうしたバタ臭いとも言えるドールもやがて日本でも受け入れられるようになるのでしょうか?

第二位:耳がピョコピョコ動く「うさみみ帽子」

こちらは繁華街でグッズを売っている露店や海雲台のお土産店で目にしました。クラゲの触手のようになっている先の膨らみが空気ポンプになっていて、ここを押すと帽子の耳の部分がピョコンと跳ね上がる仕組みになっています。

実はこれ、日本でもすでに祭りの露店で売られていたようで、渡航前に友人がこの帽子で遊ばれている動画を目にしていました。フリマアプリで調べてみると、やはり韓国から輸入されてきたもののようです。

第一位:餅とソーセージが交互に「ソットクソットク」

正直先の二つはあまり爆発的には流行らないかなと思っているのですが、個人的にポテンシャルを秘めていると感じているのがこちらです。ソ(牛の意味だが、ここでは単にソーセージの肉のこと)とトック(韓国の餅。棒状のものもこう呼ぶ)を交互に串に刺しているので、ソットクソットク。単純なネーミングですね。お店の中で焼いてもらったあと、バーベキューソースやケチャップとマスタードをかけて食べます。味は見たまんまでした。

実はこちらも、日本ですでに流行の兆しがあります。どうやらとある韓国アイドルグループのメンバーがこのソットクソットクを食べる様子が配信されて、そのファンがわざわざ韓国のSAにまで食べに赴いているようです。ただ名前がちょっと長ったらしいので、日本では「ソットク」と適当に名前を縮めて出回ることになるのではないでしょうか。

ブームはどこからやってくるのか:流行に関する一考察

最後に、こうしたブームがやってくる経路について私なりに考察してみます。以前、インターネットミームが世間の流行語になるまでの流れが、次のような図式でまとめられるということが話題になりました。

仮説:巨大掲示板や動画サイトで流行したネタがTwitterなどのSNSに持ち込まれ、そこで流行りに敏感な女子高生がキャッチして拡散、それをマスコミが若者の流行として取り上げることで一般社会にも広まる。

こうしたインターネットミーム由来の流行語は枚挙にいとまがありません。そもそもJK(女子高生)という略語からしてアングラインターネットでの隠語だったわけですからね。

そしてタピオカやチーズハットグといった食べ物や事物についても、同様の図式が成り立つと思います。もっともタピオカがなかばミームとしての側面を帯びていたとはいえ、食べ物であり商品であるこれらには何らかの流通経路がなければなりません。そこで重要な役割を果たすのは次の二つ、「的屋や屋台などの露天商」、および「国際的アイドルのファン」です。

まず一つ目の露天商について。韓国や台湾、その他の東南アジア諸国では、繁華街に行くと露店や屋台が日常的に見られます。それらは日本の祭りやイベントにおいて一時的に出される屋台や露店とは異なり、側の建物に入居する代わりに路上に簡易の店舗を構える半固定的な露天商です。こうした店舗の利点はフットワークが軽いことで、新しい商品を専門店としてすぐに展開することができます。チーズハットグのようにそのまま屋台として展開するものもあれば、スマートフォンケース店のように収益が大きく店舗型に移行するものもあるようです。

こうした動きを日本の露天商も捉えており、流行の兆しがあるとすぐに取り入れます。とはいえ日本では露天商は興行での出店が主であるため、祭りなどのイベントが集中する7月から8月、10月から11月にかけてのシーズンに商品展開が集中します。それがブームの土壌を用意し、そのなかから特に若者に受け入れられた事物が「流行」や「社会現象」としてマスコミに取り上げられるに至ります。

さて、ここで「若者」と一くくりに書きましたが、その中でも韓国などのスターアイドルのファン層が大きな影響力を持っている、と私は睨んでいます。たとえば先の手持ち扇風機も、訪問時すでにBT21(LINEが展開する防弾少年団の戯画化キャラクター)の関連商品としてグッズ展開されており、未発売の日本でも高値で取引されていたようです。もっとも彼女たちはかつての「女子高生」であり、もともと流行にすばしこい層というわけです。

したがって先の図式を書き換えるなら、次のようなものになるでしょう。

仮説’:東アジアをはじめとする海外の露天商や専門店で流行した事物が的屋や屋台によって祭りなどのイベントに持ち込まれ、そこで国際的なアイドルのファンが真似をして拡散、それをマスコミが若者の流行として取り上げることで一般社会にも広まる。

「的屋や屋台などの露天商」、あるいはその上層にいる何らかの組織が流行に強い影響力を有しているのは、先のタピオカブームから見てほぼ間違いないと思います。つまり最初は的屋や屋台を使ってタピオカを若者に膾炙させ、流行が乗ってきた段階で店舗化を一気に推し進めるというマッチポンプが、おそらく組織的・計画的に行われていたんじゃないかと考えています。これはビジネスモデルとして非常によくできており、見習うべきところが大いにあると感じています。

もっともそのようなビジネスではなく、純粋な意味での流行という観点においては、私が着眼した「国際的アイドルのファン」、もっと具体的には「韓国アイドルのファン」が実際いかほどの影響力を世間に及ぼしうるかが、個人的には注目ポイントです。「ソットクソットク」が実際に流行るかどうかは、その試金石となることでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?