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眠れぬ夜のMidnight note「鏡の呪い」

毎日、化粧を施すたびに思うのです。
もっと違う顔で生まれていたなら。恵まれた容姿だったら。

子供の頃は、お姫様に憧れていた。可愛くて誰からも愛される王女様。プリキュアのような強い美少女ヒロインでもいい。そういう存在になりたかった。小さい時は、人の顔の良さ悪さなんて意識しなかったの。純粋だったからか。
大人になって、様々な悪意に触れるようになって、そんなものは儚い幻想だと知る。

わたしは割と、嫌なことは長く引きずってしまう。それでも時間をかければ次第に薄れていく、はずなのに。
鏡の呪いは一生付き纏うのです。きっと、わたしが生きている限り。

毎日お化粧をします。まあ特に、嫌いじゃない。遊びに行くときは全力で濃いメイクを施します。つけまつげで空が飛べるよ。
他人に女のマナーだなんだと言われるのはかなりウザいけど、わたしはやりたいからやっている。普段仕事に行くときも、めんどくさいけれど毎朝、やりたいからやっている。
普段と違うメイクをするなら色々考えたり雑誌やスマホを見ながらやるけど、仕事の時など特にこだわらない時は何も考えずただ作業。

そうして、彼らの言葉を思い出します。

「本当に目が細いね、一重でブスだし」
アイラインを引くとき。母の言葉を。
(幼い頃からずっと言われていた。だからわたしは……)

「全体的に顔が悪い癖に……」
眉毛を書くとき。S君の言葉を。
(これを眉毛書くターンで思い出すのは、その言葉を言われた後にわたしが眉毛の印象を変えようと思ったせいです)

「ブスがキモイ服を着て歩くなよ」
チークを塗るとき。竹下通りですれ違った見知らぬ誰かの言葉を。
(だけどわたしを少しでも前向きにさせてくれたのは、あなたがキモイと言うロリィタファッションだった)

「南国系の鼻してるからソッチの人にモテると思いますよ」
鼻にハイライトやシャドウをいれるとき。大嫌いな教師の言葉を。
(明らかに貶しているような言い方だったから、屈辱)

「お前ブサイク過ぎ、整形しろよ!」
化粧の工程が終わって、その日の化粧が完成したとき。町田駅の街頭で自分の部下の前でわたしを罵ったハゲのおっさん。
(その時わたしが仕事中でなかったら、あなたに何をしていたか)

毎日、毎日、毎回、毎回、こんなことを思い出すの、正直自分でも異常だと思ってます。これは病気?
言ったあなた達は、1ミリも覚えていなくて、綺麗さっぱり忘れているのでしょうね。
社会に出て、毎日化粧をするようになってから頭に浮かぶようになってきた。言われた時は悔しくて、だからこそそんな傷ついていないふりをしてきたのに、心にはこんなにも深く、大きなトゲが刺さっていて未だに抜けることはない。
でも、言われるようになるのが悪いんですよね。だからそれをカバーするために化粧はしなきゃいけないものになった。たまに地元にいく時やただ病院だけの日とかは、すっぴんで出歩くことがあるけれど、とてもそわそわする。マスクしていても人の目が気になる。実際誰も見ていないなんてのは分かっているけど、それでも人に見せてはいけないカオをひけらかして歩いている嫌悪感に取りつかれている。異常。

美容整形に片足突っ込んでも、消したいコンプレックスがありました。後悔なんてしていない、むしろ、勇気を出してやってよかった。
生まれつき綺麗で、努力なしでも可愛くいられる人にお門違いの嫉妬をしたことがあります。間違っている。人間平等じゃないし、受け入れるところは受け入れて自分なりに良くしていこうと無理矢理思いました。見の程も知らず、わたしは多くを望み過ぎる。

綺麗な人は努力もしている。だから化粧を学んだりもした。自信をつけたくて、2015年あたりからはTwitterに顔を出すことをしてきました。
もちろん嬉しい言葉を言ってくれる方もいます。本当に嬉しいのに、また翌日化粧をする時には上記の言葉たちに心が苛まれる。
どうして?
その悪意ある言葉で、嬉しかったことを消されたくない。褒めてくれた人の気持ちを蔑ろにしている気がするから。

ああ、いつもわたしは自分の容姿についていつまでもグズグズ言って、それで人一倍誰かに認めてほしいという浅ましい気持ちだけ抱えて。なんて醜いのでしょうか。
酷い言葉を言った人達なんかはどうでもよくて、そんなのはもう時効で、自分自身の忘れられない心が一番わたしを苦しめている。わかっている。これは呪いなんだ。
今はその記憶が反復するのは化粧の時くらいだからいいけれど、今後もっと酷い言葉によって、日常生活まで蝕まれるようになるかも知れない。鏡を見るのが怖かった日常には、もう戻りたくないんだけど……

かわいいお洋服ありきでもいい、わたしのことを少しでも素敵だと思ってくれたのなら、どうか、その優しい幻想が永遠に解けませんように。


つれづれなるままに、ねこねこなるままに。