なぜ綾波レイはゴウンゴウンいう謎の団地に住んでいるのか?
エヴァ、見てますか? ぼくは見ています。新劇場版がしばらくの間YouTubeで公開される運びとなったので、見ている人も多かろうと思います。ぼくも序・破・Qとあらためて見直しました。
さて、言うまでもないですが、エヴァンゲリオンというのは新旧通して謎が多い作品です。とくに新劇場版は、尺のつごうもあり、謎が多くなっています。「アダムスの器」とは何を意味するのか? 真希波・マリ・イラストリアスはなぜ古臭い曲ばかり歌い、碇ゲンドウのことを「ゲンドウくん」と呼ぶのか?
その中でも最大の謎といえば、
なぜ綾波レイはゴウンゴウンいう謎の団地に住んでいるのか?
です。綾波レイは、新旧を通じて工事の音がゴウンゴウン、ゴスンゴスンと鳴り響く謎の団地の402号室に住んでいます。新劇場版で言うと序の58:52から見れます。
部屋の中は、薬やゲンドウのメガネが置いてあるのが目立つぐらいで至って殺風景なんですが、問題はそこではありません。綾波レイの行動原理からして、わざわざここに住む理由はないんじゃなのでは、というところです。
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では綾波レイの行動原理とは何か。それは、効率厨の武士と要約できるのではないかと思います。以後この路線で話をすすめていきます。ここで言う武士は、室町期のめちゃくちゃなやつらとかではなく、「武士道」ということばで漠然と参照されるような存在のことです。
まず武士の面についてですが、綾波レイは ①自分はエヴァに乗るしか能がないという決意があり ②受けた恩義は決して忘れず ③それでいて意外なほど、じぶんのやりたいことはやる女です。ぼくはそう見込んでいます。そういうところが武士です。
たとえばTV版22話、エレベーターの中で、惣流アスカと綾波の
「あんた 碇司令が死ねと言ったら死ぬんでしょ! 」
「そうよ」
というやり取りがありましたが、これは綾波レイの意志のなさではなく、碇司令の恩に対して報いる意志こそを示していると取ることができます。御恩と奉公ですね。具体的に何の恩があるんだと言われるとウ〜ンとなりますが。
11話でアスカに
「あんた! ちょっとひいきにされてるからってナメないでよ」
と言われて
「ナメてなんかいないわ」
と返すのも大概でした。「ナメるな」と言われて「ナメてねーよ」と返すのは、綾波レイ以外にはアウトレイジのたけししか見たことがないです。
こういうシーンを見ると綾波レイ・ヤクザ説も唱えてみたくなるんですが、彼女にはメンツを重んじるようなところとか、人をやりこめてやろうみたいなところがないため、この線は少々望み薄かもしれません。
そして、効率厨の面について。綾波レイは、そもそも感情表現が希薄・苦手だというのもあるんですが、判断に感情をさしはさまず、目的を最短で達するための行動を取ります。自爆するのが最適となったら即座に自爆する女です。また、新劇場版:破の話になりますが、碇くんに料理を食べさせてあげたい、碇くんと碇司令にもっと仲良くしてほしい、と思ったら手づくり料理パーティを企画する女です。
「碇シンジと碇ゲンドウが同席する食事会を開こう」、たとえ思いついても実行できる人はエヴァ世界には皆無ではないかと思いますが、綾波レイはそれが最適だと思えばやります。そういう人です。指をばんそうこうだらけにして、クセ文字の手紙を各方面に出して、やります。
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これらの行動原理から考えて、綾波レイがゴウンゴウンいう謎の団地に住んでいるのには少々違和感があります。いや、団地がゴウンゴウンいってるのはべつに問題ないんですが、わざわざNERV本部から遠いところに住んでいるのはおかしいと思うんですよ。電車通勤する程度には距離があるみたいですし。
繰り返しますが、綾波レイは効率厨の武士です。住環境にこだわりがないのは明らかです。そして彼女は自分のことをエヴァに乗るしか能がないと思っています。
これらから導き出される綾波レイの居住最適解は、NERV本部の適当な部屋を貸してもらってそこに寝袋でも敷くことです。通勤0分こそ武士の心構えでしょう。たまたまあの団地が、学校とNERV本部のちょうど間にあったのだという可能性もありますが、寂れぐあいからして、それほど交通の便のいい場所にありそうには思えません。
などと思っていたら、新劇場版のアヤナミレイ(仮称)はまさにそれを実行していました。謎のコンテナの中に寝袋を敷いています。アヤナミレイは本物ではない(少なくともぽか波ではない)ですが、この一点に関してはかなり綾波レイ度が高いといえるのではないでしょうか。もっともこれはアヤナミレイの望んだことではなくて、NERVが彼女にひどい待遇をしているだけかもしれませんが。
次回の謎は「碇ゲンドウが笑顔でヒゲそってる広告ってなんだったの? 」です。それでは。
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