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街道に消えた者達

廃都での聖遺物探索を順調に進める聖堂騎士団の面々。今日は幾度目かの探索を終え、久しぶりの酒場での休息を楽しんでいたのだが...。

マスター「よう!探索も順調みたいだな。みんな元気そうで何よりだ。
ところでな...。一つお前さん達を見込んで頼み事が有るんだが?」

クリスティン「マスターから直々の話とあればなるべく応えたいとは思うが、一体どういう話か?」

マスター「実はな...。今月に入ってから、何人もの剣士や騎士が西の街道に向かったっきり行方不明になってるって話なのさ。一人や二人の行方知れずは良くある話だが、場所と時期が重なり過ぎててな...。中にはウチの店の上客もいるし、出来れば様子を見て来て欲しいんだ...。」

クリスティン「分かった。引き受けよう!」

マスター「すまねぇな。あと、くれぐれも用心してくれ、行方知れずの連中の中にはかなりの手練れもいたんだ。」

翌日、街道に向かった一行だったが、道中は穏やかで、危険な兆候は微塵も感じられなかった。

フランコ「いやぁ、のどかなものですなぁ、危険とは程遠い...。拙僧思いまするに、もしや行方知れずの理由は酒場のツケがたまって逃げたとかではありますまいか?」

思わずそんな軽口も出たその時だった!街道脇の林から突如として巨大な影が踊り出た!!


「オレ、グラッガルズ!!ツヨイヤツサガシテル!!イママデタタカッタヤツ、ミンナ、ヨワイ。モノタリナイ!!オマエタチハ、オレヨリツヨイカ!?」

クリスティン「オーク!!そうか...、貴様が...。」

グラッガルズ「オマエツヨイカ?!ナラバ、オレトタタカエ!!」

クリスティン「良かろう!パーシバル、皆を下がらせろ!私とコイツの一騎討ちだ!!」

パーシバル「いや、しかし...。クリスティン様...。相手は...。」

クリスティン「怪物とはいえ、一人の武人として挑まれたのだ!私が奴に引導を渡す!!」

二人の武人は対峙し、ほぼ動かなくなった。もちろん、ただ動かないのではない。互いに相手の力量を測り、攻め時をうかがっているのだ。

傍らで見守る者達には、二人の時間が凍りついたかと思われるような静寂が続いた。そして、全く同時に両者は動いた!

凄まじい膂力で横薙ぎに繰り出されたオークの大太刀。当たれば鎧ごと両断されよう必殺の一撃!!

それを聖騎士は身を大きく沈み込ませてかわし、立ち上がる勢いそのままに剣の切っ先をオークの喉元へ突き立てた!

オークの武者は己の勝利を確信したままの表情で息絶え、やがて地に伏した。

戦いを制した聖騎士は誰にともなく呟く。

クリスティン「手強き相手だった...。僅かに呼吸が違えばこちらの首が飛んでいた...。」

その後、一行がオークの現れた辺りを探索すると、姿を消した冒険者のものと思われる遺品が次々と見つかった。街道で相次いだ冒険者の失踪は、やはりあのオークの武者の仕業であったのだろう。

マスター「辻斬りオークとはなぁ...。いや、とんでもないのが出たもんだ...。とにかく、お前さん達のおかげで助かったぜ、報酬もそちらの言い値で払わせてもらう。」

クリスティン「いや、世の乱れを正すも我ら聖堂騎士の務め故、報酬は結構。マスターのご期待に応えられて何より。それよりも気がかりは犠牲になった者の縁者...。」

マスター「遺族には出来る限り知らせが行くように手配するから安心しな。もちろん持ち帰ってくれた遺品もな。それと、流石に報酬がただじゃあ俺の面子も立たねぇ...。」

クリスティン「ならば今日の我々の酒代はマスターの奢りという事でいかがでしょう?」

マスター「なんなら半年でも奢ってやるよ。どうか好きなだけ飲み食いしてくれ!」

こうして街道の失踪事件は幕を降ろした。酒場の夜はいつもより幾分静かにふけていった。

#メタルストーリー

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