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エリア51戦線 エピローグ 終わりではなく始まり

エリア51戦線 エピローグ 終わりではなく始まり

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 佐藤の人生で、これほどの修羅場は初めての経験だった。
 侵入者は、現在、リビングのソファに寝かされている。それを熱心に介抱する姉の姿を見て、複雑な心境になった。
 姉が部屋を出たことは驚きだ。自分の危機に際して止めに入ってくれたのはとても嬉しい。しかし、あの太郎への入れ込みよう

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エリア51戦線 第十二章「出た」

エリア51戦線 第十二章「出た」

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開かずの扉のその向こう。佐藤の姉は息を殺して事の成り行きを見ていた。これだけ派手な騒ぎが起きれば、いくら引き篭もっていても気になるものだ。
 「鈴木」と妹が呼ぶ男が、コートの男にどんどん追い詰められていく。背後に階段が差し迫った時、何を思ったのか手すりの上によじ登った。そんな彼の前に

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★エリア51戦線目次

○プロローグ 未知との遭遇

〇第一章 東京エリア51

〇第二章 バツ一狼の噂 

〇第三章 本当にあった都市伝説

〇第四章 マイノリティーの悲劇

〇第五章 路地裏ダークサイド

〇第六章 悲劇の南極物語

〇第七章 愛の名は執着

〇第八章 リンゴの独り言

〇第九章 働いたら負けかなと思っている

〇第十章 浦島次郎

〇第十一章 狼さんに気をつけて

〇第十二章 出た

〇エピローグ 

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★映画研究部三部作もくじ

『名探偵はいない』

○名探偵はいない1

○名探偵はいない2

○名探偵はいない3

○名探偵はいない4

○名探偵はいない5

『山陰道四谷怪談』(上記の続編。先に『名探偵はいない』を読むことをおすすめします)

○プロローグ

○第一章

○第二章

○第三章

○第四章

○第五章

○第六章

○第七章

○エピローグ

『男の純情(ある意味病的)』(上記二つの続編。先に『名探偵はいない

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エリア51戦線 第十一章「狼さんに気をつけて」

エリア51戦線 第十一章「狼さんに気をつけて」

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 佐藤はアルバイトから帰ってきた。玄関に手をかけるが、扉が開かない。バッグから、合鍵を取り出して鍵穴を回す。
 居間の扉を開ける。普段付いている電気が消えていることが、さらに不安感を煽った。明かりを付けると、座卓の上のものが目に入る。ラップのかけられたチャーハンが二つ、並べて置いて

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エリア51戦線 第十章「浦島次郎」

エリア51戦線 第十章「浦島次郎」

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 目の前の扉を、不信感たっぷりに見つめる。
 ――エリア五×一号室。
 こんな落書きをして、管理人からクレームが来ないのかと、疑問を抱く。
 前髪を指で透かし、額が見えないように改めて整える。格好は緑の寝巻きだが、隣なんだから服装に気を使う必要もない。
 吉村は、極めて平然を装いなが

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エリア51戦線 第九章「働いたら負けかなと思っている」

エリア51戦線 第九章「働いたら負けかなと思っている」

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「鈴木には悪いけどさ、あんたの兄貴って本当に最悪よ!」
 ベッドの上でくつろぎながら、佐藤は言う。ここ最近は毎日吉村の見舞いに来ている。そのついでに鈴木の部屋にあがるのが日課となっていた。
 鈴木は椅子に胡坐をかき、机のノートパソコンで何事かしている。
 佐藤は、手に抱えたポテ

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エリア51戦線 第八章「リンゴの独り言」

エリア51戦線 第八章「リンゴの独り言」

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 金属質の階段を上りながら、佐藤は学校での会話を思い出していた。

「吉村、あれ以来全然学校に出てきてへんね」
「そういえば、そうだね」
「このまま欠席が続くと留年って先生が言うてたよ」

「…………」
 佐藤は扉の前で立ち止まる。無理やり明るさを演出しながら、中に入った。

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エリア51戦線 第七章「愛の名は執着」

エリア51戦線 第七章「愛の名は執着」

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 電車を降りると、足早にホームを出た。歩道を移動する時も周囲への警戒を怠らない。お尋ね者にでもなった気分だ。
 桜木の下までたどり着き、ようやく安心する。
「律子おはよー」
「あ、おはよう」
 背中を叩かれて跳ね上がった佐藤を見て、驚いている友人。佐藤は平生を装いながら何とか

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エリア51戦線 第六章「悲劇の南極物語」

エリア51戦線 第六章「悲劇の南極物語」

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 怪獣だらけのカオス世界を、これほど愛おしく思ったことはない。佐藤は、鈴木の部屋に入るなり安堵で座り込んでしまった。鈴木は、奇怪なマントを外して棚の上に放り投げる。明るみで見ると黒ずくめの服は上下同色のジャージだった。いつもの緑色の作業ズボンではないところが新鮮だ。
 若干落ち着き

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エリア51戦線 第五章「路地裏ダークサイド」

エリア51戦線 第五章「路地裏ダークサイド」

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 ブルゾンとミニスカートを着込み、ハンドバッグを片手にA町を徘徊する女がいる。靴は足に負担をかけないようにスニーカーだ。佐藤は、バツ一狼の出現を狙ってあえて人の見当たらない道を歩いていた。
「なかなか出てこないわね、狼のやつ」
 佐藤は壁に寄りかかり、少し休憩する。晩から夜更けま

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エリア51戦線 第四章「マイノリティーの悲劇」

エリア51戦線 第四章「マイノリティーの悲劇」

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 佐藤は動揺していた。先ほどの吉村からの電話を思い出す。無邪気な彼からは想像のできない、震え上がった声。電波を通してこちらにまで恐怖が伝染しそうな怯えようだった。
「佐藤さん、佐藤さあん……助けてください、僕もうどうしたら……うわあああああ」
「何? どうしたの、吉村!」
「狼

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エリア51戦線 第三章「本当にあった都市伝説」

エリア51戦線 第三章「本当にあった都市伝説」

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 テレビではニュースが流れている。意識してみているわけではなく、単に付けていたらたまたまニュース番組だっただけだ。……とでも言いたげに画面を無視し、鈴木は台所に夕食を運んでいた。
 近所のスーパーで売っている七十円のカップメンだ。ここの店はインスタント食品が安いので、週に一度大量に買い

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エリア51戦線 第二章「バツ一狼の噂」

エリア51戦線 第二章「バツ一狼の噂」

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 寂しがり屋のカラスがねぐらに急ぐ、そんな時間帯。買い物を済ませた佐藤は、家路を歩いていた。といっても、佐藤が手に持っているのはバッグだけである。荷物は全て鈴木に持たせていた。膨大な紙袋を両手に提げ、とぼとぼと後ろを付いてきている。
「これは良好な友人関係と呼べるのかな……」
 そんな

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