【連載5回目】『ももクロを聴け!』の堀埜浩二さんにAMEFURASSHI『Coffee』について聴く(5)
「『ももクロを聴け!ver.3』の堀埜浩二さんにAMEFURASSHIの音楽について聴いてみることにした」*1の第二弾。今回は『Coffee』について聴いてみることにしました。収録されたリード曲「Blow Your Mind」がこれまでの最速で30万再生を達成するなど注目のミニアルバムだが、前回のアルバム『Drop』に続き、現在のAMEFURASSHIの音楽性や戦略がますますはっきりしてきたようなところがある。
(ZOOMにて5月24日収録)
中西理(以下中西) このあたりでせっかくの機会なので「Coffee」収録のそれぞれの楽曲についてもお聞きしていきたいのですが。まず最初の曲が「Fly Out」。最初に聴いたときにこの「Fly Out」というのは凄くカッコいいなとは思ったんだけれど、音楽ジャンルはよく分からなかった。これは何なんでしょうか?
堀埜浩二(以下堀埜) 個々のジャンルというのはその場で(名前を)つけたりはするけれど、いまやっているものは雑駁な言い方をするとすべてEDM、エレクトロ・ダンス・ミュージックです。KPOPとかJPOPとかジャンルの説明にも使われるけれど音楽そのもののジャンルではない。ブラックミュージックもそうです。EDMは基本的には打ち込みで作っている踊るための歌です。その中でテイストとしてはいろいろあるけれど、それに対してどのようなネーミングにするかというのは実は大きな問題ではないと私は考えています。
この手の曲は大別すると2つのタイプに分かれます。ひとつはループで作る感じの音楽。ひとつのリフだったりをずっと同じところにキーをステイしてやっていくタイプ。もうひとつがメロディーのラインがあって、コード進行とメロディーが連動していくタイプの楽曲。アメフラがやっているのは主として前者のループタイプの音楽ですが、それに後者の楽曲を時折織り交ぜていくことでアルバム全体としては退屈しないような流れを作っている印象があります。曲の並べ方にはそういうことも関係していると思います。今回このアルバムの中で1曲フィーチャーするとやはり「Blow your Mind」じゃないでしょうか。
中西 そうですね。
堀埜 はっきりとお金をかけたプロモーション映像も作っているメインの楽曲。アルバムのリード曲と言っていい。
堀埜 最初の3曲(「Fly Out」「Batabata Morning」「Blow your Mind」)順番に聴いていくことでアメフラの魅力にぐっと引き込まれるような構成になっている。それを意識してこの3曲は並べられています。
中西 ライブで一番最初に聴いた時も「Fly Out」はジャンルは分からないものの「一発ガツンとぶちかましたる」という曲のように感じました。
堀埜 かましの曲ですね。これは。やっぱり結構やられると思いますよDirty Orangeはいつもそうなんですが、乗せるときのリズムというのがももクロの曲でもやっている常套手段ですが、「タンタンタンタン タタタタタタタ タカタカタカ ドロロロロロロロ ドカ」みたいな踊らせる時のアゲかた、もっていきかたを素直に使っている。そういう楽曲を1曲目に持ってきて、その後に一番聴かせたい曲を持ってくる。この最初の3曲の流れというのは完璧だと感じました。今回のアルバムの大きな評価ポイントになるかなと思います。
中西 絶対に音楽的には無関係なのですが、私が「Fly Out」を聴いた時に最初に連想したのはクイーンのフレディ・マーキュリーの「Don't Stop Me Now」でのボーカリゼーション。曲の後半に向けてどんどん加速して無限の高みに駆け上っていくようなイメージに相通ずるものを感じて、いつかAMEFIRASSHI(特に小島はな)にクイーンのカバーをやってもらいたいと思ってしまいました。すいません、これは楽曲分析というよりは単なる個人的な感想でした。
堀埜 アゲかたというか高揚感は近いかもしれません。
堀埜 今回「Blow Your Mind」で小島はなが一番高いトーンで歌うところがあるんですが、トップのAをしっかりと歌っている。ほぼファルセットに近いのですが、女性はファルセットはないので。ももクロってキーが高いのですが、ももクロのキーの高さとアメフラは違う。アメフラは全体の声域というのは中音域。それってKの特徴なんですが、あまり高いところでキャンキャン歌わないというのがあって、さびメロの一番盛り上がってあげるところをはっきり聴かせどころとして作っている。そういうことも意識してもう1度聴いてほしいんですが、意図的に本当に王道の楽曲の作り方、盛り上げ方をやっていたり、ミニアルバムとはいえ、アルバムを通して聴いた時の抜きどころとか落ち着きどころも作っている面白さというのはよかった。前の「Drop」の方が寄せ集め感があって、今回の方がアルバムトータルのバランスというのは丁寧にできているんじゃないかなと思います。今回はバラード曲もないので音楽の振れ幅はそれほどなく、ダンスということで集中しながらもその中でのアレンジのバリエーションとか歌わせ方のバリエーションがかなりいろいろあったりする。明らかにラップパートが増えていますね。それが面白いのはこの子らのラップのスキルが上がったということがベースにある。
中西 ゆづ(市川優月)がすごく腕を上げたのが大きい。最後のパーツとしてうまくはまった。
堀埜 歌も当然うまくなっているんですが、ラップスキルが全体的に上がっていることによって、聴かせどころの幅というのがそれぞれの楽曲の中で広がっている。
中西 萌花のパートにも女性らしい歌い方も増えているのだけれど、ゆづがすごく女性らしさの部分を担っている。特にそれを強く感じるのは「Blow Your Mind」とその後の「One More Time」ですかね。この曲のラップパートがアンニュイというか、けだるいというか非常に魅力的だなと感じました。
堀埜 先ほどから指摘している曲の流れでいうと「Blow Your Mind」まで盛り上げてきて、ここに「One More Time」というリラックスして聴ける曲を持ってきている。クレジット上はっきり分かるようにこの曲もMOMONADYの手によるもののですが、ここに入っているNeckwavというのに注目したい。
Neckwavほかその後にクレジットされている人も完全に韓国の人なんですよ。もともとDigzに入っているKORANG-Eとかもそうなんですが、韓国人が入っていてその関係で引っ張ってきている韓国人が作家陣に加わってきている。NeckwavはラッパーのChazと一緒にやった「Without You」という曲がYoutubeにも上がっていて参照してほしいんですが、すごくジャジーで無駄のないトラックメイキングでいい曲なんですよ。
参考映像「Without You」
中西 今回のこれって欧米や韓国では一般的になっているけれどいわゆる「コライト」ですかね。
堀埜 そうです。コライトをしっかりやっていて、そこでまた新しい味が出てきている。いまキーワードでコライトというのが出てきたじゃないですか。これが動きとしては凄く面白くて、今現在洋楽の楽曲というのはシンガーソングライターみたいな人が単独で楽曲制作をするというよりはヒット曲というのはほぼほぼコライトなんですね。だからクレジットなんかを見てもグラミー賞とかもそうですけれど、複数人の連名になっている。そして、当然楽曲そのものもコラボが多くて、複数の人間が関与して、「あーでもない、こーでもない」と言いながら最終的に楽曲の形を整えていく。こうしたスタイルが一般的になったのはDTM(デスクトップミュージック)の影響が大きい。トラックを共有しながらここでこういう音だそうかとか、試行錯誤して作っている。昔はなかなかそういうことはできなかった。今はメールでデータのやりとりをするだけで、それができるようになったので、集まってどうのこうの言わなくても、これどうやというのをドーンと送ったら、これはここにもうちょっとこれを足してとか自在にできるようになっている。歌詞に関しても同じでもうちょっとこの歌詞はここを変えたらどうかとか。そう考えるとアメフラの曲とかはそこまでコライトというわけではなく、しかもDigzグループ内にだいたいとどまっている状況の中でこの曲でははっきりとMOMONADYが中心になってやっている。だから、彼女の存在が今回はかなり大きい。アイドルの裏方をやっている人というのは自分もアイドルをやりながら、いまは詞も作っていますというような人がかなり多い。ボーカリストとしてかなりうまいし、ダンスもできるから結構アメフラのお姉さん的にかかわっているんじゃないかと思います。
中西 事務所では期待されているんでしょうね。これはボーカリストとしてというより、クリエイターとしてということですけど。
堀埜 このアルバムで中心になっているのはMOMONADY、sty、SHOWの3人なんだけど、今後のアメフラの行く末を考えるとMOMONADYがどう化けるかがカギを握っている。
中西 この人が一発当てるとアメフラにとっても大きいですよね。
堀埜 これもただの推測ですが、このアメフラのために引っ張ってきたという気もします。
中西 そうですね。これは書きかけて途中で確信がなくて削除したんだけれど、BananaLemon公式サイトで今年になってからの活動歴がほとんど書かれていないんですね。もしかして活動休止かと思ったんですが、Youtubeに新曲がアップされて3月にはライブもしたようなので、それはなかったのですが、このアルバムの制作のために一時的に活動を絞った可能性はけっこうあると思います。
堀埜 それはあるかもですね。凄い才能がある人なので、絶対離してはだめだと思います。
中西 楽曲ですら想像で話しているので、ここから先はなかば妄想に近いかもしれませんが、Anna先生はこれまでも仲間の振付家、ダンサーに協力を求めることなどがかなりあったので、MOMONADYがAnnaを手伝って振付にも一部関与している可能性もあると考えています。
堀埜 可能性はあるし、そういう感じになるのがむしろ自然かもしれないと思います。
simokitazawa.hatenablog.com
simokitazawa.hatenablog.com
simokitazawa.hatenablog.com
simokitazawa.hatenablog.com
simokitazawa.hatenablog.com
simokitazawa.hatenablog.com
*1:simokitazawa.hatenablog.com
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?