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『ももいろクローバーZ “祝典” ツアーファイナル』@武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ

もいろクローバーZ(ももクロ)の新アルバム「祝宴」の全国を回ってのアルバムツアーのファイナル(6月25日)を武蔵野の森総合スポーツプラザのメインアリーナで見た。2か月近くをかけて全国14都市で計17公演のももクロとしてはかなり大規模なツアーではあったが、個人的な事情で遠征が難しく、日本武道館での公演は抽選に外れチケットが取れなかったこともあり、このファイナルが初めてのライブ参戦となった。
アルバムツアーは以前にも「AMARANTHUS」「白金の夜明け」二枚アルバム同時発売の際のドームツアー*1には行ったことがあるのだが、最初のアルバムツアーとして行った「5TH DIMENTION」ツアーは抽選にすべて外れていくことができず、ツアーではないけれどもアルバム「MOMOIRO CLOVERZ」の際の企画ライブも東京キネマ倶楽部という狭い会場で行われた超レアな公演(ももいろクローバーZ「5th ALBUM『MOMOIRO CLOVER Z』SHOW at 東京キネマ倶楽部」@ストリーミング配信|中西理|note)だったこともあり、痛恨の極みではあるがどちらも映像で見ることしかできなかった。実はももクロの演劇的趣向のライブとしてはこの二つが最高峰だったのではないかと映像を見て悔やんでいた。それだけに今回のライブは見逃すわけにはいかないものと考えていたわけであり、最後の最後とはいえ今回のライブをやっと見ることができたのは大きな喜びであった。

 ライブの本編はアルバム「祝宴」の曲順どおりに進行するが、このツアーの間に何度も繰り返し演じられてきたこともあり、アルバム音源を超えたようなパフォーマンスの完成度の高さを感じさせた。個々の楽曲を見ても「ショービズ」「HAND」「孤独の中で鳴るBeatっ!」「なんとなく最低な日々」などのように結成14年を迎え、全員が20代半ばを超え、大人の女性としての等身大の表現ができる現在のももクロだからこそできる表現が随所に見られ、アイドルのグループでは滅多にない表現の到達点に立っていることを感じさせた。
 「祝宴」という表題からしてセレモニーとか通過儀礼のような儀式的な意味合いを感じさせはするが、同じくコンセプトアルバムとされた「5TH DIMENTION」「AMARANTHUS」「白金の夜明け」がそれぞれガチの世界観を反映させたトータルコンセプトを強く打ち出したアルバムであったのに比べると楽曲の内容はよく言えば多彩、批判的に見れば統一されたイメージはない。
 「幕の内弁当」的に見えるなどと評すると批判にもなりかねないが、料理の比喩で言うならば収録楽曲にも「満漢全席」があるが、次々と趣向の異なる料理が出てくる「中華料理のフルコース」のようなイメージだろうか。
 例えばこのアルバムのリード曲は「MYSTERION」であり、この曲およびにそこで行うパフォーマンスが生み出している楽曲イメージの壮大さは「5TH DIMENTION」の「NEO Stargate」など世界観の系譜を感じさせるところがあるが、「NEO Stargate」がアルバム「5TH DIMENTION」全体のコンセプトの「進化」という主題を牽引したような役割を「MYSTERION」がこのアルバムで果たしているという風には思えない。
 「祝祭」の全体的な印象を生み出しているのはむしろ「ショービズ」「孤独の中で鳴るBeatっ!」「なんとなく最低な日々」のようなより自然体で現在の心境を歌った歌ではないか。ももクロの場合、過去にもSF的趣向、あるいは哲学・宗教的な主題を託された曲も多く、これまではそれを背伸びして演じてきたきらいもあったが、本人たちの成長もあり、ここで初めて等身大の日常が新たな曲の主題として浮上してきた感がある。
 このライブレポートを書くに際して、「DOME TREK 2016」のファイナルの時の感想を見返してみたら「名古屋、京セラ、西武プリンスの3会場6ステージに参戦することができたのだが、感心させられたのはメンバー全員歌がうまくなったなあということだ」と書いていて、逆に驚いたのはももクロというグループの本当の凄さはそれから6年たっても似たような感想が思い浮かんでいたということにあるかもしれない。つまり、ライブを重ねるごとにいまだにうまくなり続けているということだ。
 今回特に印象に残ったのは高城れにの歌の進化である。彼女はもともと声質がよく、歌手としても稀なほど透明感のある歌声の持ち主で、それがももクロの歌に独特の癒しの感覚を付け加えていたけれども、以前は若干不安定な部分もあったのが、最近は安定度が格段に増している。加えて、アタックして、立ちあがった声の高音部の力強さにはこの人でないと出せないものが出てきた。「孤独の中で鳴るBeatっ!」での最後の方の叫びなどはその典型だ。ももクロをそのエモーショナルな歌唱で創成期から印象付けてきたエース、百田夏菜子に肉薄する存在となりつつあると感じさせた。
 有安杏果のパートを数多く受け継いだ佐々木彩夏の高音部の抜けも著しいものがあるが、この日はドスが効いたような低音の響きも素晴らしかった。ストレートの声質に一層の磨きがかかってきた玉井詩織も含めて、4人それぞれのソロ歌唱は「うまくなったなあ」とつくづく思わせた。
 特にそのことを実感させたのが、本編最後に歌った「また逢う日まで」だ。武器であるユニゾンではなくあえてソロで歌い継いでいって歌唱力見せつけるようなアレンジで外部に向けて分かりやすく実力をアピールする意味では大きな武器になりそう。これからも機会を作っていろんな場所で歌ってほしいと思わせたカバー曲であった*2

ももいろクローバーZ「MOMOIRO CLOVER Z 6th ALBUM TOUR “祝典”」2022年6月25日 武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ セットリスト
SE. Opening Ceremony -阿-
01. PLAY!
02. ダンシングタンク♡
03. MYSTERION
04. 満漢全席
05. BUTTOBI!
06. ショービズ
07. HAND
SE. Intermission -闍-
08. momo
09. なんとなく最低な日々
10. stay gold
11. 月色Chainon
12. 孤独の中で鳴るBeatっ!
13. 手紙
14. また逢う日まで
SE. Closing Session -梨-
<アンコール>
SE. overture ~ももいろクローバーZ参上!!~
15. あんた飛ばしすぎ!!
16. 笑一笑 ~シャオイーシャオ!~
17. 走れ! -ZZ ver.-

6月25日(土) 16:30開場 / 18:00開演
東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ

【チケット情報】
全会場・全席種共通:8,900円(税込) / 2枚まで
販売席種
・指定席 / 2枚まで
・着席指定席 / 2枚まで※公演中は着席でご観覧いただきます。
※全会場・全席種共通:中学生未満のお客様はご入場できません。


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simokitazawa.hatenablog.com


*1:simokitazawa.hatenablog.com

*2:ベストはFNS歌謡祭で披露してくれることだが、これ1曲だけ歌うんだとなんだかなあと感じる難しさはある。

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