【短編小説】喫茶ダブルドラゴン 第1話
からからん
とドアベルが鳴り、暑気を帯びた夏の空気と一緒に入ってきたのは虎之介だった。虎之助は近所の小学校に通う4年生だ。皆からはトラと呼ばれている。タイガーと呼ぶものもいる。トラは、彼にはやや高すぎるカウンター席の椅子に飛び乗るように座ると開口一番、
「おっちゃん、いつもの!」
乱暴な注文を受けた男は、やれやれ、といった風情でゴブレットにかち割り氷をいっぱいに詰め、そこにマンゴージュースを注いだ。
「毎度毎度……こりゃタイガーのためのメニューじゃあないんだぜ?」