「頑張れ炭治郎！　頑張れ！！
　俺は今までよくやってきた！！
　そして今日も！！
　これかれも！！
　俺が挫けることは絶対に無い！！」

『鬼滅の刃』が大好きである。週刊少年ジャンプで連載している、吾峠呼世春さんのマンガである。

　ある炭売りの少年・炭治郎が、家族を鬼に殺され、また、鬼に変化した妹に喰われかけたところを鬼殺隊の富岡義勇に救われたことをきっかけに、自らも鬼殺隊として剣を振るうようになる――

　という物語だ。人食い鬼が跋扈し、平和な暮らしが容赦なく壊される残酷な世界で、折れずに戦いつづける炭治郎や鬼殺隊の活躍に心が熱くなるし、テンポのよい展開や台詞回し、ぶっ壊れたキャラクター達とクソ真面目な炭治郎の掛け合いが、シリアスな中に絶妙におかしみがあって、読んでいる感覚はむしろ清々しくもある。

　とにかく全員全力なんである。炭治郎も他の鬼殺隊も、鬼すらも。必死だ。

　いまは、ファン待望のアニメ化を果たし、現在放送中だ。毎回、いつか息切れしてしまわないか心配になるくらいの神作画と声優さん達の魂のこもった演技で、大満足である。

　このマンガの魅力はいっぱいあるのだが、ぼくのハツに最も響いたのは、根底に一貫してある、
“がんばれ！　折れるな！　諦めるな！”
　という主人公・炭治郎の魂のアティチュードだ。
　それは、鬼を殲滅せんとする攻撃的なものではない。残酷な世界とそこで生きる儚い人間たちに、そして尋常の生命からは乖離してしまった鬼に対してすらも向けられる、包み込むような優しさだ。

　前述したが、物語冒頭で、炭治郎が町に出稼ぎにいっている間に家族が鬼におそわれて妹が鬼になってしまうシーンがある。
　鬼になると、人を襲ってその血肉を喰らいたい強い衝動にかられる。それが鬼の本能だからだ。
　炭治郎は、それまで自分にとって全てであった家族を無残にも破壊され、その事態を受け入れる間もなく、人食い鬼に変わってしまった妹・禰豆子に、炭治郎自身が喰い殺されそうになる。
　妹・禰豆子は、くちに生えた人ならざる牙で襲いかかってくる。炭治郎は喰われそうになるのを、薪割り用の斧の柄で必死で防ぐ。目の前には、大切な家族の見たことも無い鬼の形相！
　惨い。惨すぎるよ……！　原作を読んでてもそう思ったし、アニメを見たときも、やっぱりそう思った。
　斧の柄でかろうじて禰豆子の牙が届くのを押しとどめながら、誰もが膝を折り挫けてしまうような〈残酷〉を目前にして――
　しかし、炭治郎は叫ぶ。
「頑張れ禰豆子！　鬼なんかになるな！　しっかりするんだ！　頑張れ！　頑張れ！！」

　このとき、炭治郎は、まだ弱い一介の炭売りの少年だ。それでも、たとえ自分が死ぬかもしれなくても、何より他者の命を諦めない。
　その後、過酷な鍛錬を経て、鬼殺隊として強力な鬼たちと戦っていくこととなり、無力な少年ではなくなるが、炭治郎のアティチュードは絶対に変わらない。

　このあとめちゃくちゃ魅力的なキャラクター達がもりもり登場してくるんだけども、ともかく、この折れない剣士からぼくは、目が離せなくなった。

　とりあえず、マンガの１巻を読んでみて欲しい。アニメ１話なら、無料配信もやってるだろう。（ただ、最新話からいきなり見ても「鬼滅」の魅力にぶった切られることは可能だ）

　一緒に炭治郎たちを応援しようぜ。んで、逆に鼓舞されよう！！

余談

　ところで、アニメ第一話のあまりのクオリティに「やべぇ、これはやべぇ……」となり、いても立ってもいられず、一番身近な奥さんに薦めてみた。
　コンテンツをひとに薦められることをあまり好まないタイプなので、何も見たいテレビ番組がやっていないときに、しれっと録画を流したりした。
「これ誰なん？」「うわっ、エグ……」「むりむりむり！」
　と最初は、残酷なシーンが続くためやや引いていた奥さんだが、週を重ねて視聴してもらう内に、
「禰豆子ちゃんカワイイ」「えっ、こんなん勝てないのでは……！」「わーい、炭治郎やった！」
　と、すっかり登場人物たちに感情移入して楽しむようになり、アニメも十数話を経た今は、
「禰豆子ちゃんが戦闘態勢になったときの顔の血管がたまらん……」
　と、よくわからんことを言い出すに至った。
　とても嬉しい。身近な人が、同じコンテンツを好きになってくれるのは、嬉しいことだ。今はぼくよりハマってるからな！
　冥利！！

〈おわり〉

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