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珈琲人ダブルドラゴン〜おせっかい旅情編〜

 この小説は、冒頭400文字の面白さを競う比類なきコンテスト《逆噴射小説大賞2018》の応募作です。

「畜生。変わんねぇな」
どこまでも優しい珈琲だった。一口で虜にする強く華やかな一杯ではなく、路傍の名もない花めいて。

旅のドリップ屋(珈琲を淹れる者)をしながら訪れた海辺の町に喫茶テルミヌスはあった。
店主、夏日星ルリとは旧知の仲だが、俺のことを覚えていなかった。

「ルリは、ノラ猫のようにふらりとやってきたのさ。記憶を失ったままね」
バーで隣に座る女が言う。テルミヌスの管理人、マギーだ。
「原因は?」俺は地サイダーを片手に問う。
「断片的にわかるのは」マギーはスコッチを口にする。「意に添わない珈琲を淹れ続けたってこと、ね」
「解せねぇな」
「何がだい?」
「ルリはどんな珈琲でも淹れるぜ。昼間飲んだ珈琲は《珈琲空洞アビス》の豆だろ? アイツの珈琲はあそこの個性爆裂豆すら手懐ける。なのに何でだ」
「さぁ。そこまでは」
「負けたままで納得してねぇはずだ」
「負けとかあるの?」
「ある。俺が勝たせる」

【つづく】

#逆噴射プラクティス  #逆噴射小説大賞 #小説 #珈琲 #コーヒー #喫茶店

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