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ディランとビートルズが出会ったホテル

ミッドタウンのパークアヴェニューに存在した「The Delmonico Hotel」。

32階建ての高級ホテルとして一世を風靡し、数々のスーパースターや要人をもてなしてきた。現在はドナルド・トランプが買収し住宅用コンドミニアムとなっているが、この場所に根付く伝説的な物語を紹介しよう。


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ロック史に刻まれる運命の出会い

1929年に建築家のGoldnerとGoldnerによって設計されたThe Delmonico Hotel。32階建てと当時はホテルの中でも群を抜く高層ビルで、高級ホテルとして親しまれてきた。

2002年、アメリカ大統領のドナルド・トランプによって買収され、現在はトランプ・パーク・アヴェニューという名前に。120戸のアパートメントと8部屋のペントハウスを備える住宅用コンドミニアムで、一番高い部屋は4,000万円ドルを超える高級住宅である。

この場所は、伝説的なミュージシャンの邂逅が生まれたロックの聖地としても有名だ。

1964年8月28日、The Delmonico Hotelに滞在していたのは、世の中に旋風を巻き起こしていたビートルズ。ここにロック・ジャーナリストのアル・アロノウィッツが、どうしても会わせたい人がいると一人の人物を連れてくる。

それが、ボブ・ディランであった。

ディランとビートルズ、どちらも既にトップミュージシャンの座に君臨していたが、直接会うのは初めてのことだった。

アロノウィッツは、自分が持ってきたマリファナのジョイントをその場にいた全員にすすめる。

マリファナを一度も吸ったことがなかったジョン・レノンは最初にリンゴスターにそれを試してみるよう仕向ける。

リンゴスターが吸ってみると、彼はしばらくしてすぐに笑い始めた。

その様子を見た他のメンバーも次々とマリファナを吸引。しまいには皆で大笑いし、その場の緊張感はすぐにほぐれたという。

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ディランの影響で、ジョン・レノンは社会派になった

こうしてお互いに楽しい時間を過ごしたディランとビートルズは親交を深め、ビートルズはラブソングだけでなく政治的なメッセージを含んだ歌詞を書くようになり、一方でディランはビートルズのサウンドにインスパイアを受けてフォーク・ロックを生み出したりなど、双方に多大な影響を与える存在となっていく。

このホテルでの邂逅が、ロック史の未来を変えたといっても大げさではないだろう。

特にジョン・レノンはディランの深い歌詞世界に大きな衝撃を受け、以降内省的で社会性の強いテーマを扱うように。ジョン・レノンというアーティストの方向性をガラリと変えるほどの出会いとなったのだ。

一方のディランはアコースティックギターからエレキギターに楽器を変えてライブをしはじめると、人々はおったまげ、当時はブーイングの嵐が巻き起こり、メディアからも痛烈な批判を浴びたという。

しかし、彼にしてみればエレキギターは自然な表現への新しい挑戦であり、音楽性を次のステップへと昇華させる重要な転機であった。

ディランは何食わぬ顔で演奏し、時には演奏を辞めて反抗し、自身の音楽を貫き通した。

その結果、フォーク・ロックと呼ばれる新しいジャンルが生まれ、フォークシンガーがエレキギターを持って演奏するのが当たり前の時代がやってきたのである。


現在はこの場所に宿泊することはできないが、ロック史に残る邂逅が生まれた場所の外観は当時のままである。近くに立ち寄った際は、ぜひ訪れてみることをおすすめしたい。


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