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薫玉堂と香りの記憶

薫玉堂のお香が好きだ。

うちのオフィスでは数種類が常に常備されていて、いまも「音羽の滝」を焚いている。

香りがとても鮮烈で気品がある。デザインも洒落ている。今までいろいろなお香を試してきたが、とにかくハマった。
 
最初に出会ったのは東京駅のKITTE。どこかから東京駅へ戻った帰りにふらっと立ち寄ったのだった。

薫玉堂の店の前を通り過ぎた時、なんの店だかわからなかった。それが気になって、ぐるっと一周して、また戻った。お香の店だった。

お店の人に話を聞くと、京都が本店でKITTEは本店以外で初めての出店とのことだった。印象がサンタ・マリア・ノヴェッラに似てるなと思い、それを伝えると、とても喜んでくれて、ブランドマネージャーに伝えますと言ってくれた。

しばらくして、毎日オフィスで薫玉堂のお香を焚いているうちに薫玉堂がどういうブランドなのか、とても気になってきた。もちろんウェブサイトは見ているし、歴史が古いこともわかる。

「香りの総合ブランド」というポジションが意外と新しいような気がしたし、何か骨太なブランドな気がするのだ。古くからある香りを現代に適用させることを小手先でするのではなく、体験として再構築しようとしているように思えた。

そういえば、香りは記憶をフラッシュバックさせる効果があるのだった。
マルセル・プルーストはマドレーヌの味をきっかけに幼少期の思い出が蘇り、ナポレオンはブルーチーズの匂いを嗅いで、ジョセフィーヌを思い出した。僕も薫玉堂の香りを嗅ぐうちに何かをフラッシュバックさせていたのかもしれない。

僕は居ても立ってもいられなくなり、ブランドマネージャーの方にインタビューを依頼した。弊社で作っているウェブマガジンで取り上げさせてもらいたいと思ったのだ。

突然のこちらからの依頼にもかかわらず、とても丁寧なお返事をいただいた。そのメールには、仏前線香の需要が減ってきた打開策としてブランディングすることに決めたとあった。詳しくは記事を読んでいただけると嬉しいが、ますます応援したいと思える物語があった。

僕の祖父がやっていた「一筆絞り」という染め物屋も、着物需要が減ったときにブランディングという手があったら、と少しだけ思った。思っても仕方のないことなのだけれど。
 
 
世界最古の薬局であり、古都フィレンツェで誕生しているサンタ・マリア・ノヴェッラと日本最古の御香調進所として京都で誕生した薫玉堂は似ている。薫玉堂は薬種商だった。サンタ・マリア・ノヴェッラは癒しをテーマに800年以上続いている。

薫玉堂はこの先、どのようなストーリーを紡いでいくのだろうか。

薫玉堂のお香、おすすめです。

ブランディングマガジンSINSE. | 安土桃山から続く香老舗の挑戦 “イマドキ”の線香が生まれるまで

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