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ブランド・レレバンスでブランドをカテゴリーで捉え直せ。その先にイノベーションがある。

ブランド・レレバンスは、ブランドをカテゴリーとの関連性で捉える見方である。
 
わかりやすく言うと、ブランドがカテゴリーの中でどのような位置づけとなっているか考えよう。

そして、そのカテゴリー内で新たなカテゴリーを創出するとイノベーションが起こせるぞ。という魅力的な内容なのだ。


アサヒスーパードライの投入が日本のビール市場を再定義した

熾烈な戦いが続く日本のビール業界が例として挙げられている。
 
1970年から86年まで、キリンは市場シェア60%という圧倒的な立場にあった。この時代、キリンは「ビール好きのビール」であり、キリンといえば芳醇で少し苦味のある低温殺菌した「ラガービール」だった。
 
1986年にアサヒは市場シェアが10%を下回っていた。その翌年、アサヒはスーパードライを市場に投入するのである。キリンのラガーとは対照的なキレがよくて爽やかで後味が軽いビールだ。広告戦略もうまくいって若者層を中心に大ヒットした。アサヒスーパードライが投入されて数年で「ドライビール」の市場シェアは25%にまでなった。
 
アサヒはこのブームによって10%を下回っていたシェアは倍増し、逆にキリンは50%に縮小した。その後12年間アサヒスーパードライの快進撃は続き、とうとう2001年にはアサヒがキリンのシェアを抜くという快挙を成し遂げる。
 
だが、キリンも負けてはいない。1990年にキリンは「一番搾り」を投入した。これは一番麦汁だけでつくるという新製法によるものだ。他社には真似のできない製法とラガーよりも滑らかで苦味が残らない味わいによって、キリン一番搾りはラガーよりも売上が上回り、キリンのシェアの低下を食い止めた。
 
さらに、<生>によるカテゴリーの戦いもあった。1994年、アサヒスーパードライは「鮮度」と「世界進出したナンバーワン生ビール」という価値提案を行った。アサヒの生に対抗するようにキリンは96年にラガービールを生ビール製法に転換。「キリンラガー<生>」に変更したが、これはうまくいかなかった。
 
そして、1998年、発泡酒というサブカテゴリーが確立された。キリンの「麒麟淡麗」の登場である。麦芽の比率を低くし酒税を安く抑えた発泡酒という今では当たり前になったビールである。麒麟淡麗はキレのよさがあった。アサヒはスーパードライとのカニバリを意識したのかこの市場に参入するまで時間がかかった。キリンはこのジャンルを得意とし、アサヒの追随を許さなかった。
 
このようにブランドをカテゴリーで見ていくことがブランド・レレバンスにとって重要になる。
 
 
このブランド・レレバンスの考え方を応用した「ブランド・レレバンス戦略」とは、新しいカテゴリーあるいはサブカテゴリーが形成されるような革新的な新商品を創造することを意味する。
 
これは競合企業が圧倒的に不利になる分野を形成し、そうでない分野は避けるという考え方をする。ライバルの強みを弱みへと転換されるように他社ブランドのレレバンスを低めるか失わせるような市場の再定義ができればチャンスが大きく広がる。
 
アサヒがスーパードライの投入でキリンのシェアを奪ったように。また、キリンが麒麟淡麗を投入して市場を再定義したように。


iPhoneはカテゴリー戦略(ブランド・レレバンス戦略)で成功した

 
iPhoneもブランド・レレバンス戦略で成功した例である。

iPhoneは小型のPCだと見ることもできる。電話のついたパソコン。小型の電話付きパソコン。このようなカテゴリーの捉え方もできる。

だが、アップルは、スティーブ・ジョブズは、「電話」カテゴリーに新たなiPhoneというカテゴリー(パソコン付き電話)を形成したのだ。パソコンの中に新たなカテゴリーをつくることと電話の中にカテゴリーをつくることは大きく違う。

iPhoneがいかに成功したかは今さら述べる必要もないだろう。
 
 
ブランド・レレバンスを意識してブランドを見直すこと、ブランド・レレバンス戦略によってイノベーションを起こすことが可能になりそうだ。


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