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たなばた願いごと【鶴亀杯スピンオフ企画】

「痛ててててっ」
今日は人間ドックの日。


よもや一番乗っけから採血とは。未だ心の準備ができてないって。
「では、採血からお願いします」と冷酷なひとこと。
「あ、はい」


腫瘍マーカーとコロナ抗体量の測定もお願いしたので、今日は何と4本も採血されるらしい。子供の頃から注射が苦手で早速正直逃げ出したい気分だ。


52歳にもなって「注射嫌だ」とも言えず、「あ、はい」と答えはしましたが、心の奥底では小鳥のように震えている自分がいる。注射なんて誰が考えたんだ。元々血液なんて抜き出すものではない。身体中に酸素を運ぶためにあるんだ。それを細く鋭い針を刺して抜き取るなんて外道のすることだよ。


身体のどこかに蛇口があって適量分だけ抜き出せるようにできていればなぁ。そんなことを考えているうちに看護師さんに呼ばれた。


「利き腕じゃない腕を出してください」
僕は野球は右投げ左打ち、ボクシングはサウスポー、はて、どっちが利き腕なんだろう。あれこれ考えはじめると、目の前の看護師さんがイライラしはじめている。


「どっち?」
あれこれ思案した挙句、結局左腕を差し出した。生贄を差し出すかのように。


「これまで採血で気分悪くなったことはありますか」
「はい、あります、ほぼ毎回です」
「、、、、、」
「いや、怖いから震えるって感じで、、、でも大丈夫です」


「痛ててててっ」


最近の採血は針だけ先に刺しておいて。後から試験管を突っ込むスタイル。なるほど、これなら余計な負荷がかからず痛みも軽減するな。でも痛い。


「あっ、ごめんなさい、もう一度刺し直しますね」
「痛ててててっ」


おいおい丁寧にお願いしますよ。
内出血しちゃったやん。でも気にしないで、もう終わったから大丈夫。


世界中から悲しい声が聞こえてくる。
注射どころの騒ぎではない。
皆が笑顔で過ごせる、普通の日常をください。
注射の痛みなんて、どれだけでも我慢しますから。


『ゆーじの願い』



note友達のしろくまきりんさんの企画、たなばた願いごとにのせて。



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