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Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第四回 中島聡 x 増井雄一郎 書き起こし その4

2018年11月26日(月)に開催された「Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第四回 中島聡 x 増井雄一郎」の書き起こしです。
ソフトウェアエンジニアである中島聡と、高校在学中からプログラミングをはじめ大学時代に起業、現在でも第一線で続ける有名エンジニアの増井雄一郎氏がエンジニアの未来に関して議論します。

もう1つ、エンジニアから見た働き方の多様性っていう意味では、これは本当に昔からよく言われる35歳定年説みたいな話で、今でも時々引き合いにだされますが、もう今35歳が定年だと思っている人はたぶんいないんですね。これ、なぜおこったかというと、SIer的な考えかたとして、単価を上げるために管理職、マネージャーというタイトルがつかないと単価があげられないというのが元々じゃないか言われています。もう1つ理由があると思って、みなさん学生を卒業して会社に入る22〜23ですよね。そこから2〜3年は勉強します。なぜなら新しい会社に入り、プログラムや仕事の勉強をします。25歳ぐらいになるとだいたい仕事のことも一通りわかってきて、日々の業務もこなせるようになります。そうするとみんな勉強しなくなるんですね。1つの技術って10年くらいだと思うんですよ。すると25歳で勉強しなくなった人は35歳の時に、25歳の時に勉強した、いろんな知識を使いはたすんですよね。35歳になったときに、そこから新しい技術、今から10年前ってまだiPhoneでたばっかりです。そういった時に技術を使っても、その話をできなくなるので、今から彼らは勉強しても追いつけない。10年間勉強する癖も抜けているから。ということで、僕は35歳定年説の一番の理由は、勉強してこなかったかなと思っています。そういった中で35歳です、というのも僕はある種、一理あると思っています。

こういった35歳定年説を超えてずっとエンジニアとして働くとしても、一つの会社でキャリアを全うできるかって言うと、まっとうできないわけです。皆さんだいたい転職すると思います。なぜなら自分の職業人生の長さよりも、会社の寿命の方が短いからです。自分がどんなに働きたくても、ほとんどの会社は皆さんが定年する前に会社がなくなります。もしくは、吸収なり合併なり、ピボットして、その仕事はなくなります。そういう時、何が起こるかというと、僕が今できること、エンジニアのことができます、会社から望まれることは何か、会社に貢献する一番わかりやすいものは何か、僕の立場でいうとCTOなので、マネージメントをして開発チームを強くするとか、そういった採用をすごく強くするとかっていうことになります。

これは僕の場合ですが、他の皆さんの場合は、それぞれ違うと思います。例えばJavaの新しい何かを覚えて欲しいとか、新しいフレームワークとかReactを覚えて欲しいとか、会社から望まれる技術とか、会社が売りやすい技術とか、今の会社が必要なもので、今できることをどんどん皆さん勉強して、会社が望まれることに近づけます。

こういう風に、今できることっていうのと、会社から望まれること、自分のやりたいことってのは、どんどんみんな会社が望まれる方に近づくんですね。で、なんでかって会社が望まれることをやると給料が上がります。もちろん会社望んでいるからです。それは売上があるから会社が望んでいるのです。それと同時にすごい喜ばれます。褒められます。なぜなら会社が望んでいることをやっているからですよね。なので短期的には自分にとってメリットがすごく大きいですね。ただ、さっき言ったように会社のライフタイムというのは、自分の職業人生よりも短いので、あるとき、その会社がなくなったときに、別の会社に望まれる事ってなると、またその同じ会社を見つけられればいいですけど、見つけられなかった場合は別の方向を追っかけることになります。

で、そうなので、そちらへまた動く。ここのギャップが大きいと就職すらできなくなる。年齢が上がってると新しいキャッチアップが違う、全然違うことは難しくなってくるので、こういった形で自分が会社から望まれることをやっていると、短期的にはもう自分にプラスですが、ある時突然破綻をするという状況が生まれると思っています。じゃあ、何をするかというとみんな言うのは自分のやりたいことをやりなさいと、結構言うのですけど、やりたいことやってて飯が食えるのかで問題が必ず出ます。

で、僕はやりたいことってのは、別に夢を追えと言うことではなくて、例えば安定して稼ぎたいとか、時間が短くても稼げるようにしたいとか、いろんな、そもそも夢ではない、自分がどうなりたいのかと言うことなんだと思うんですね。そう言う意味では、僕はよく言うのは一社に自分のキャリアっていうのは、どっかの会社のじゃなくて自分の人生だっり、もしくはこの業界から離れないって思ってるなら、エンジニアって中で依存するべきであって、会社に依存しない方がいい。僕ずっと人生の目標にしてること、少なくても十数年目標にしていることがあって、それは今持ってるものすべて失っても明日から普通に暮らせる。これは何かって言うと突然僕がいま追い剥ぎにあって、パソコンも携帯も全部取り上げられて、なぜか家に帰ったらものぬけの殻で、奥さんから三行半を突きつけられ、なぜか銀行口座も空になり、ていうような状況になったとして、僕はそれでも明日から普通に暮らせる。今なら、なんとか誰かからちょっと借りられれば、ネットで泊めてくれる友達ぐらいは見つけられますし、そこでパソコンさえ借りれば、明日から仕事をすることくらいはできます。ほかの知り合いを探して仕事をもらうのもできます。場合によってはクラウドワークスみたいなものとかランサーズみたいなものとかで仕事をとってくることができます。

こういう風にしておくことで、僕は自分で作った会社ですら、会社に依存しないと言うことをすごく気をつけています。そのためには僕が自分自身としてちゃんと評価されなければならない。自分の会社として評価されるじゃなくて、僕として評価されなきゃならないので、先ほど言ったように年に一回はものは自分で作りますとか、あとは英語で講演をする。なぜ英語で講演してるかって言うと、あの日突然日本が沈没したらどうしよう。そうなった時に、海外で仕事を取りたい、もちろん英語圏仕事をとりたいっていった時に、英語圏で僕のこと知ってるとほとんどいないわけですね。そうすると仕事が取れない。どうしたら取れるんだろう。名前を知っててくれれば僕のことを雇ってくれるかもしれない。じゃあ、英語で発信するべきだし、ただ発信するよりも、少し英語がしゃべれるので、そういういった形で年に一回必ず英語で講演をして、僕の名前で英語で検索しても、僕がどういう人か必ず出るようにしようと心がけてやっています。ちなみに英語で講演するが凄い大変なので、毎年講演する1週間ぐらい前には、俺なんてこんなめんどくさいことを・・絶対日本沈没しないじゃんて思いながら、血反吐を吐きながらやってます。今年のオンリーウィークに台湾で講演したんですけど、一週間前から、死ぬ気で資料を作って、ずーと悪態をつきながら作っていました。

今こういった形で働き方、さっき言ったリモートワークだったりとか個人事業だったりとか、いろんな働き方ってのが出ているんですけど、よくいうHowみたいなもんです。どうやってやるかって話ですけど、何をやるかって話ではないんですね。だからリモートワークをすることがゴールにはならなくて、必ずリモートワークするには理由があるはずなんですね。もしかしたら通勤電車に乗りたくないと言う理由かもしれないし、それなら会社の隣に住めばいいじゃないかとか、いろんはHowの方法がある。今の所、けっこうみんなHowの方法論にすごく話が寄っているので、僕からしたらしたら不健全に見えます。そういった意味では何を達成したいのか、自分の価値ってのは何で、それを何を価値をお金に変えて飯を食うのか、って言うのはあまり議論されてなくて、そこはもっと皆さん議論した方が、Howだけに固定すると選択肢が狭まるので、もっと選択肢が広がるようにと思います。というわけで簡単でしたが、僕の自己紹介と僕の働き方の課題感みたいなものを共有させていただきまして、ありがとうございます。

その5へ続く

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