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『ジャパン・リバイバル』米国はガレージから日本は町工場から③

「日本はイノベーション後進国」という声が聞こえるようになって久しいです。しかし、イノベーションが起きていないのは、日本社会の閉塞感を強く感じている若者たちのせいなのでしょうか。それとも、社会の構造的な問題が原因なのでしょうか。本対談では、日本のイノベーションの現状と課題を、中島高英氏と中島聡氏に議論していただきます。若者たちは日本のイノベーションの鍵を握っているのでしょうか。日本の未来を切り開くためには、何が必要なのか。必見の対談です。

『ジャパン・リバイバル』米国はガレージから日本は町工場から
1.自己紹介・・・(運命を決めたパソコンとの出会い)
2.得意なこと、好きなことを見つける
3.ChatGPTとは料理をするもの!?
4.Q&A続き・・・GPTがもたらす教育の未来!?

ChatGPTとは料理をするもの!?


聡:最近はChatGPTを見ていて。あれは料理人にとってはたまらない生肉なわけです。料理のアイデアがバンバンと浮かんで、どうしたらいいか分からないぐらいうずうずしていて。

高英:ちょっと待って。ChatGPT、最後のまとめで聞きたかったんですよ。全然分かってない前提で、あれは料理するものなのですか?

聡:料理するものです。

高英:入れて、何か答え返ってくるだけではないのですか?

聡:違うのです。あそこに誰かが味付けをしないと。確かにインプットを入れると返してくれる。話しかけると答えてくれるのですけど、ただ話しかけても、話しかける内容が正しくないと。例えば、ChatGPTを使って英語の勉強をしよう。確かに正しい質問をすれば勉強できるのですけど、普通の人はどう質問したら勉強できるか知らないじゃないですか。

高英:ちょっと待って。その正しい質問というのは、どういう意味ですか? ChatGPTにとって正しい質問?

聡:そうです。ChatGPTは本当に生肉なので、例えば、ChatGPTに対して「英語を教えてください」と言っても、ろくな返事が返ってこないのです。もう少し間に立つ人が必要で。

高英:必要になっちゃうのですか?

聡:必要なのですよ。残念なことに。残念なことにというか、だからエンジニアに出番があるのですけど。例えば、英語を勉強しようと思っている人が、TOEICでまだ500点ぐらいの実力でしかない。その人は700点になりたいと思っているとしたら、今度、500から700になるのに覚えるべきボキャブラリーは何ですかというのを、ChatGPTに聞くとリストをくれるのです。

そのリストから今度はランダムに3つ選んで、この3つの単語を使った例文を英語で3つくださいとChatGPTにやると、当然ですけど、その単語を使った例文をポンポンとくれる。その例文に対して、自分がどういう意味だというのを日本語で書く。書くと、それが合っていれば褒めてくれるし、合っていなければ、どこが間違っているかを教えてくれる。そのやり取りの部分を、間にソフトウェアを挟んでやらないと教育できないのです。

僕はどういうふうにChatGPTを作ればいいか分かるから、ChatGPTに「TOEIC が700点になるには何が必要?」と聞いて、プログラムを書いて、そのうちのランダムを3つ出して、それで例文作ってこれでと。そのやり取りを僕はできるけど、普通の学生は絶対できないですよね。間に会社があって、そこがアプリとして作ってあげないといけないんです。

高英:会社ではなくてもいいのよね。オープンにして出しちゃってもいいのですけど、なんらかの介在が必要だということですよね。急にぶち込んでも無理。

聡:そうです。あまりにも生なので。AIとの喋り方なんか、みんな知らないじゃないですか。

高英:そうですよ。全然分からないです。

聡:今、ChatGPTで遊んでいる人はいっぱいいると思いますけど、たぶん何をしていいか分からないし、そのすごさを理解している人は、本当にごく一部しかいないと思う。

高英:昨日かな? 新聞でも世界的にChatGPTは学生には使わせないと。

聡:大間違いですよ。

高英:大間違いですよね。

聡:とんでもないですよ。ものすごい価値がありますよ。僕、今日、実はドローンの会社のためのあるアルゴリズムを思いついたのですけど、それが本当にいいアルゴリズムかどうか検証したくて。普通だったらGoogleでサーチして、他の人が何を作っているか比べるじゃないですか。そうではなくて、ChatGPTに説明したのです。「僕、こういうアルゴリズムを作っているのだけど、どう思う?」と聞いたら、「それはいいアイデアだね」と。

高英:それは、直接Siriみたいに喋っているのではなくて打ち込むのですか?

聡:打ち込むのですけど。

高英:プログラムとして? Pythonで書いているとか?

聡:普通の英語で。

高英:英語でいいのですね。

聡:僕が「これこれ、こういうアルゴリズムでこういうふうにやろうとしているのだけど、どう思う?」と言うと、ここの部分はすごくいいアイデアだけど、ここの部分はこうした方がいいよとか、ちゃんと返答が返ってきたの。僕が知らないアルゴリズムまで調べてくれて、教えてくれる。

高英:初めて知りました。それは。

聡:散々説明した挙句に、僕が何をしようとしているか分かったよねと。だから論文書いてと言ったら、サラッと書いてくれる。信じ難いのですよ。論文のクオリティが。

高英:初めて今日素晴らしい、面白い話を聞かせてもらいました。そんなことまで?

聡:できます。論文にしたおかげで、ものすごく僕のアルゴリズムが分かりやすくなったのです。英語で綺麗に書いて。それをチームメンバーに、「ちなみに、こういうアルゴリズム思いついたから」と言って論文をポンと投げたら、みんな感動していましたよ。すごく綺麗に分かりやすく書いてあるので。

高英:それって、今ニュースで見ていると、学生が宿題をChatGPTにやらせるから規制をかけると言いながら、逆に先生が生徒にできたと出しているという、そんな世界ですよね。

聡:大間違いですよ。規制するなんて。ChatGPTを使うと、今まで以上に深い勉強ができるのです。自分が思いついたことを相談できるし、アルゴリズムを良くしてもらえるし。例えば、こういうことを思いついたのですがと言ったら、そういうアイデアは、この会社が出しているとかも教えてくれる。何が新しいか、何が新しくないかとかも調べてくれるし。本当にすごいです。

高英:最後にお時間もあるので。人工知能(AI)と人間の関係は今ずっと問われていて、人間の仕事はいらなくなる。いらなくなってもいい仕事はいっぱいあると思うのだけど、人間とAIとの関係は知らない方は恐れている。すごく不安なのですよ。お前の仕事はなくなるぞと、脅かされているのですから。ロンドン大学の誰かが出していましたけど。いびつな形で理解されている。だからこそ言われている通り、規制をかけましょうという話になってしまうのだと思っていまして。聡さんが見る人間とAIとの関係というのは。人間はなくならないですよね? ずっと重要なのですね?

聡:そうですね。人間はなくならないし、将来は分からないのですけど、少なくとも今のAIには意思とかないわけです。すごく賢くはなっているけど、意思とか、こうしたいとか、欲望とかは持っていないので、そういう部分は人間が。こういうものを作ったら売れるのではないかとか。そもそも売りたいという思いとか、儲けたいという思いだとか、世の中の役に立ちたいという思いみたいなものをAIは持っていないので、そこは人間がドライブしないといけなくて。今起こりつつあるのは、まずAIを使いこなす人が現れ始めていて、その人たちの生産性が飛躍的に上がるのです。

例えば、僕が今まで論文を書こうと思ったら、たぶん2~3週間それだけやらなきゃ駄目だったのに、今日、朝1時間ぐらいで1本論文を書きましたからね。プロダクティビティの向上具合が、ものすごいわけです。それは大きなプラスだけど、私のプロダクティビティが上がるということは、相対的に見ると下がる人がいるわけですよね。残念なことに。使いこなせないとか。

もしくは、私の息子はベンチャーキャピタリストをやっているのですけど、ベンチャーキャピタリストとして普通だったら彼の規模のファンドを持っていると、人を雇って、その人たちに簡単なリサーチとかをさせるんですけど、彼は今ChatGPTを使ってリサーチさせているので、人を雇わないです。ということは、職が奪われているといえば奪われている。個別に見ると、使いこなせばすごくいい。クリエイティビティが上がるのだけど、マクロで見ると、実は仕事量というか職は減るでしょうね。

高英:そこで止めなければいいと思う。職がなくなったけど、新たにまたアイデアが出て、そういうプログラマーが出てくれば、また新しい職種、お仕事が出てくるじゃないですか。だから循環だと思っていて。消えていくところは消えていけば良くて、新しいものをどんどん作っていった方が僕はいいかと思って。あまりそこは心配をしてないところはあるんですけど、世の中の人はすごくこだわっているから。今日のすごく大事なことは、間に人がいて、それはなんと言うのですか? やる人。

聡:今は、言葉としてはプロンプトエンジニアリングという言葉が出ています。ChatGPTに対して与える言葉のことを、プロンプトと呼ぶのですけど。プロンプトをどう使うかという意味で、プロンプトエンジニアリングという職が、今まさに生まれつつある。

高英:プロンプトエンジニアリングという新しい職種が出てくる。AIと上手に付き合うためには、そういう新しい職種がいるし、当然そこにはリスキリング、リ学習が必要になるということですね。上手にそうやって付き合っていけば、ものすごいパワー。今のお話だと論文1つ書くのに100倍以上ですよ。そういう爆発的な力を、実は人類は手に入れようとしている段階に入ったと。逆に不安に駆られている人は、そこに大きな力、圧力がかかるけど、こういうことは今までの歴史でよくある話で。従来の打ち破る潜在力があると認めてくれたようなものなので、ぜひプロンプトエンジニアを育てていただけるとうれしいと思いました。すいません。

司会者:まだ大丈夫です。

Q&A


高英:まだ大丈夫ですか。今日はせっかく若い人とか皆さん来ていただいているので、ご質問を受けましょう。いくらでも喋っていられますよ。一晩中喋っていられますよ。

司会者:では皆さん。質問のある方、いらっしゃいますか? じゃあO君。

O(質問者):まず中島さんに1つ質問があります。

聡:2人とも中島です。

高英:「はーい」「はーい」になるよ。

質問:論文や他の創造的な作業において、ChatGPTがどの程度役立つのか疑問です

O:中島聡さんに質問があって、ChatGPTが素晴らしいものだと確かに分かったのですけど、ChatGPTを超える創造力の人間が現れた場合、ChatGPTには限度がある感じがしています。論文とかの創造力と限度を上げるためには、ChatGPTはどうなのかなと思っています。それについて、ご意見をお願いします。

聡:ChatGPTは結構賢くて、文章を書くのも上手なのですけど、ただ単に書いてと言っても書いてくれないのです。手取り足取り説明しなきゃいけないのです

僕の論文のケースも、論文の文章そのものはChatGPTが書きましたけど、内容は全部、僕が指定しているのです。こういうアルゴリズムで、こういうロジックで。こうやるから、こういう利点があるのだというのは全部GPTに教えると、それを綺麗な英語にしてくれる。それだけの役割なのです。

実は創造性は僕の部分で生まれていて、ただ、その中で綺麗な文章にするとか、もしくは私がちゃんと語らなかった部分のアルゴリズムを、どこかから拾ってきてくれるみたいな、割と補助的なことをしているだけなので。それほどChatGPTに創造性があるとは思わない方がいいですよね。

あと、単にポンと質問すると、結構間違った答えが返ってきます。もっともらしい台詞を言うので、一見もっともなのだけど、意外と間違ったことも言うんです。だけど、僕が知っている知識を、こういう知識がありますと例えば箇条書きで渡して、これをきれいな文章にしてと言うと、すごく得意なのです。ある意味、魔法のような文章生成器なのです。

O:ロジックとかも全部自分で考えると、その人の創造力で論文が書けることで、結局ChatGPTを活用できていると。

聡:今、Twitterとかで、ChatGPTがプログラミングもできると言って大騒ぎしているけど、実はものすごく単純なプログラミングしか書けなくて。複雑なプログラムを書かせようと思ったら、ちゃんとアルゴリズムを教えてあげないといけないのです。ただ、アルゴリズムからコードに直すのは割と手間がかかるので、手間のかかる部分だけを、ChatGPTがやってくれている感じです。

O:なるほど。了解しました。ありがとうございます。

高英:O君は、専攻はなんだっけ? コンピューターではないよね?

O:物理学です。

高英:早稲田理工学部の2年生で、物理学専攻なのですよ。

聡:いいですね。いろいろ試してください。物理学の質問をするとか。僕も物理学で、いまだにちゃんと把握できてない部分があります。この前もChatGPTと話していたのだけど、結局解決しなかったのですけど…。
量子もつれの話、あとで終わったら話を聞きたいけど。直感的に理解できないと思いません? 量子もつれの。

O:そうですね。確かに直感的には理解できないと思います。

高英:すいません。今日、量子学があまり分からない人もいるので、もつれとかは、また後ほどゆっくり。量子コンピューターの世界ともつれは、今注目の的だということで、お勉強されていたと思うのですけど。ゆっくり彼を育てて、100倍ぐらいのスピードで答えをもらいましょう。

聡:量子の話をしたかったのではなくて、僕がChatGPTに対して量子もつれを中学生に分かるように説明してと言っても、答えは出てこないんです。なぜ出てこないかというと、僕が理解してないからです。分かります? その辺をちゃんと理解している人が正しいロジックをChatGPTに与えると、それが出てくると思います。

O:ChatGPTは、個性もちゃんと表してくれるのですか?

聡:そうですね。本当に使いこなし方次第で。電卓を手に入れたおかげで人間は計算が早くなったけど、何を計算するとか、そもそもの式を立てるのが人間の役目じゃないですか。それと同じで、ああいうものが出てきたのは新しい道具なのです。例えば数学のテストで電卓を使ってはいけないと、まだ言いますけど、間違いだと思いません?

O:そうですね。

聡:これから論文を書くときとかレポートを書くときに、ChatGPTを使ってはいけないと言うのは、僕はものすごく間違っていると思います

司会者:他にどなたか? Tさん。

質問:ChatGPTに教えた(与えた)内容は、ChatGPTのビッグデータに入って、他の人が同じような質問をしても活用されるのでしょうか?

T:Tです。すいません。私はおじさんですけど、おじさんなりにいろいろ知りたいので。先ほどのつながりで、中島聡さんがいろいろ教えたから論文ができたとおっしゃったのですけど、教えた内容というのは、ChatGPTのビッグデータに入って、他の人が同じような質問をしても活用されるものなんでしょうか?

聡:そうは作られてないです。

T:それは、中島さんのアカウントの中での話?

聡:アカウントどころか、会話をするときに。実はあれどうなっているかというと、例えば、私がAと言うとBと返ってきて、次にCと言うとBが返ってくるときに、ちゃんとAとBを参照しているじゃないですか。でも、あれは記憶しているのではなくて、僕がCの質問をするときに、A、B、Cを全部渡すんです。会話の度に、渡すものがどんどん長くなってくるのです。それを毎回全部読んでいます

T:毎回、最初からつながりを全部渡していくと。

聡:そう。ChatGPTは何も覚えていないので、もう1回全部Aから読んだ結果、Dの答えが出てくる。そういう仕組みなのです。

T:それは1回の質問のやり取りの中で、行ったり来たりしているうちに。それはつながっているわけですね?

聡:つながっているのを、毎回全部渡さないといけないのです。例えば、10回やり取りした後の11回目の質問をするときには、今までの10回分のやり取りを全部渡したうえで、11個渡す。

T:では、全部それを覚えてくれているわけではないと。

聡:何も覚えてないです。ある意味短期記憶ゼロなのです。

T:過去の金融データを全部ChatGPTにぶち込んだら、今後の金融の指標が分かるということをやりたがっている人がいたのですけど。

聡:そもそもそれで正しい答えが出るかどうか分からないけど、少なくとも過去の株価データを全部与えて、次の株価を予想しろと言ったら喜んで予想します。

T:過去のデータを、その時に1回与えないといけないと。

聡:毎回与えないといけない。例えば、過去のAppleの株価のデータを与えて、予想しろと言うと出てくるじゃないですか。次にテスラの株価を与えたときには、Appleのことはすっかり忘れている。

T:そういうものなのですね。

高英:株価で試されたことはあるのですか?

聡:いや、株価のデータは。

高英:大金持ちになるような気がしたよね。こうやって身近に具体的に話しされて、アホな部分? アホという言い方がいいのかな? ChatGPTのアホな部分とか、使い方はすごく大事で、恐れずにやってみよう。道具に過ぎないということですよね。

コンピューターは、もともとは人間のサーバントですよね。それを支配者のようにSFが作ってくるから。『2001年宇宙の旅』でハルという、IBMを用いたすごいコンピューターがあった。それは、ある勢力がそういうふうにやっているけど、僕はコンピューターというのは我々人間にとって大事な友達でもあるし、サーバント。言い方が悪いけど、使いこなし方次第かと思ったりしていますので、ぜひもう少しChatGPTの基礎知識の普及をやりましょう。

司会者:それは大切ですね。

高英:否定しないでね。

聡:もっとみんなに気が付いてほしいので、どういう形でそれを発信するのがいいかと思っています。ひょっとしたら、ライブがいいとも思い始めているのです。例えば、ゲームとかをライブ配信している人がいるじゃないですか。あれと同じように、ChatGPTと私の会話をライブ配信するのは、意外と面白いかなと思ってやってみようかと。

高英:それは面白いかもしれない。イメージ湧いた。一生懸命やっているのを、ビデオで撮って流れているだけという。

聡:必ずしも僕がやっても、毎回上手くいくわけではないです。やっぱり試行錯誤しているので。その試行錯誤のプロセスも見た方が、分かるかもしれない。

高英:その番組作ったら、きっと売れるよ。『マインクラフト』だって、あんなにヒットしたのだから。

聡:そうですね。ライブGPTで。

高英:やりましょう。楽しい会話になってきましたけど、もっと楽しい会話はこの後ということで。

『ジャパン・リバイバル』米国はガレージから日本は町工場から④に続く
(6/3(日)に掲載予定)

『ジャパン・リバイバル』米国はガレージから日本は町工場から
1.自己紹介・・・(運命を決めたパソコンとの出会い)
2.得意なこと、好きなことを見つける
3.話題騒然のChatGPTとは?
4.Q&A続き・・・GPTがもたらす教育の未来!?


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