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『コロナの現実とNext stepへのヒント』 夏野剛 x 中島聡 対談連載 3.努力を努力と思わない仕事をみつける!

2021年8月24日に開催された夏野剛と中島聡氏が共同発起人を務める「一般社団法人シンギュラリティ・ソサエティ」の設立3周年を迎えました。それを記念し発起人のお二人が、コロナ禍による想定外の社会の非連続な変化と、それの影響による社会や働き方の未来について議論しています。
 日本とは違うアメリカのロックダウンの現実やビジネスの変化。コロナ禍を経てこれからのKADOKAWAの”働き方・方針、社長のあるべき姿とは!”をトップ自らが語っています。

『コロナの現実とNextstepへのヒント』
  1.アメリカでのコロナ禍の現実
  2.KADOKAWAの大ヒットに依存しない経営
  3.努力を努力と思わない仕事をみつける!
  4.終身雇用の終わり!働き方をアップデートする
  5.日本の問題とこれからの会社のありかた

9割はリモートワークもう元には戻れない?!

司会:夏野さんはドワンゴの社長時代からいち早くSlackを導入されたり、コロナ禍においては在宅手当を月2万円を支給するなど、働き方改革には非常にアグレッシブに取り組まれていらっしゃいますが、業績への影響や社員からの反響はいかがでしょうか?

夏野:僕がやっていることは、世界的に見ると、アメリカの企業がやっていることとそれ程変わらないですから、今回良かったのは、コロナ前は中間管理職の方がリモートワーク等無理と言っていたが、仕方なくやってみたら、今はもう戻れませんという状態になっている。やはり、一日往復で2時間くらい無駄にしていたじゃないですか。準備を含めると、2~3時間くらい無駄にしていたわけじゃないですか。これから解放されたことで、我々の会社は絶対に前の状態には戻れない。オフィスに通うみたいなことはありえないという会社になった

中島:本当にオフィスのデスクを無くすなどされていますか。

夏野:ドワンゴの方は机を無くしちゃいました。もちろん来た時に使えるようにフリーアドレスの席は用意した。ただしほとんどの社員は来ないです。固定席がいらないと言った人には月2万円の在宅手当を出すようにしたので、交通費もかからないからあげるよと言ったら、皆喜んで来なくなりました。

中島:KADOKAWAの方はどうですか。

夏野:ドワンゴは9割ほどだが、KADOWAKAの方は、75%程度となっている。編集者は編集や最後の校正の時にどうしても出なければいけない。それでも皆元には戻れないと言っています。

中島:素晴らしいですね。

これからの福利厚生

夏野:福利厚生についても、ホテルに安く泊まれるようなものは全て止めて、サブスクリプション手当にしました。Netflixやamazonプライム等のサービスを購読するのを月2,000円まで出すようにしたら、大好評です。

中島:そうすると、つまらない領収書の処理とか不要になるから、いいですね。

夏野:サブスクを皆に見てもらって、クリエイティビティを磨いて欲しいので、やっています。

何がヒットするかは出してみないとわからない!

中島:そうですよね。サブスクリプションはこれからのメディア戦略の出口じゃないですか。

夏野:本当にその通りです。「こんまり」とか見ていると、言語の問題ではなく、普通になり得るものもある訳です。先程のお話とは真逆にはなります。「こんまり」は凄いと思いますが、英語が全然できない不思議なアジア人というキャラであれだけの人が見ているのが凄いと思います。

中島:出してみないとわからないですね。結構前になるのですが、松田聖子や宇多田ヒカルが結構なお金をかけてアメリカでデビューしたのですが、全然売れなくて誰も知らなかったが、なぜかPUFFYがバカ売れした。だからやってみないとわからない。

夏野:出してみるというのは、すごく大事だと思いました。

オンライン会議はZOOM一択!!

司会:ここで、ニコニコ動画の視聴者より夏野さん宛にご質問を頂いております。
質問:「リモートワークに切り替えた際に大変だったことはありますか?」

夏野:いがいに大変だったことは無かったと思います。ひとつ思い出したのが、Google meetやciscoのWebexがとても使いにくく、zoom一択ということがわかりました。

中島:zoomの成功具合は面白いですよね。

夏野:大した違いは無いのですが、長く使っていると少しの違いが大きく感じます。あとは、安定性が全然違いますね。zoomは安定性が高く、低レイテンシーで良いですが、WebexとGoogle meet はどうしようもない感じ。それが一番困ったことでした。

中島:不思議だと思います。目の前にzoomがあって、彼らにも開発者がいるのだから、頑張ればよいのにできない。

夏野:いくらでもできると思います。Teamsに至っては本当に使いにくくてどうしようも無い。真似れば良いのに。簡単なことだと思うのですが。

中島:たぶん大変なのだと思います。

英語が話せるエンジニアには最高の時代

司会:続いては中島さんに質問が来ております。
質問:「勤め先のmmhmmのCEOでいらっしゃる、Phil Libin(フィル・リービン)さんがとある記事で金沢に住んでみたいと仰っていたそうですが、世界的にどこにいても働ける人材になっていくために必要な資質や条件はどのように考えているでしょうか。」

中島:今までであれば、近くに住んでいる人が有利であった部分が取り払われたので、生産性の問題になったと思います。特にソフトウェアエンジニアはソフトウェアが書けるかどうかだけだと思います。ただ、英語が話せないときついかもしれないです。なので、英語が話せるエンジニアにとっては最高の時代になったと感じます
 Googleは、リモート勤務の方の給料を下げると言っているが、自分が勤めるmmhmmはそこ(勤務場所)の差別はしないと言っていて、どこに住んでいてもシリコンバレーの給料が出るので、日本の田舎等の物価の安いところに住んだら、べらぼうに得だと思います。結局どのようにしてリモートで働けるようになるかというと、ネット上のプレゼンスを増やしていくしかない。
 最近、Appleからリクルートが来たが、appleのAR/VR開発部門のトップを務めている方が、オープンソースで公開しているGitHubのソースコードを見て、雇いたいと言ってきた、ということがありました。面白いですよね。そのようなチャンスは今から、あらゆる人に巡ってくると思います。

自分に何ができるのかを知っている人が強い

司会:為になるお話をありがとうございました。
夏野さんは理想の働き方などはございますか。

夏野:僕自身はあまり理想の働き方というものは無いのですが、中島さんが仰っていることは、自分ができることは何というのを自分でしっかり分かっている人が強いのだと思います。もちろんですが、それが人に認められるくらいの力があるのが大事です。やはり皆が、自分は何ができるのかをあまり意識していない人が多いなと、日本の場合は特に感じます。だから、自分はこれができるというものをもっと前面に出して、そこを磨いていくキャリア設計をした方が良い。仕事は会社から与えられるものではなく、自分で選んでいくものなのだと意識を持っている人が世界中で何処にいても働ける人になるのだと思います。

努力を努力と思わない仕事をみつける

司会:ありがとうございます。
自分に何ができるかというところと、加えて今後は働き方に関して、AIの影響が出てくると考えられますが、中島さんのメルマガで、2021年はAIに仕事を奪われる最初の年になると大胆予測されていますが、そこについて詳しくお聞かせいただけないでしょうか。

中島:2021年が初めというわけではないですが、AIができることがどんどん増えているので、特に単純作業は人間から奪われていくわけです。企業としては生産効率を上げていきたいわけでして、できるだけ一人当たりの生産効率を上げるということは、簡単な仕事はコンピュータにさせて、人間にはクリエイティブなことをさせることになりますが、その場合はどうしても仕事の数は減ると考えています。
 そのような中でどうやって自分の良さを見せていくのかを考えたときに、自分にしかできないこと、自分が光るもの、自分が夢中になれるものをはっきりと把握している人が強いと考えています。
 特に私の場合はプログラミングが趣味ですが、私の場合はプログラミングに関することを勉強するのは苦でも何でもなく、夜遅く働いたり、朝4時に起きて働いたりするのは苦ではなく、楽しくてしょうがないのです。
 申し訳ないなと思うのは、僕みたいに楽しくてしょうがなくて仕事している人と、嫌々ながら、毎週土日を楽しみにしながらプログラムを書いている人を比べたら、僕の方が優秀なのは決まっているわけです。楽しんでやっているわけですから。そこは踏み違えてはいけないと思っています。
 日本は、苦しんでいるプログラマーが多いみたいです。特にゼネコン構成で下請けにいるような人達。やはり、プログラミングが楽しくないのに、上から落ちてくる仕様書通りにプログラムを書いているので、苦痛でしかないのがわかるので、そこでは働いてはいけないのではと思います。本当に夢中になって、努力を努力と思わない仕事を見つけてほしいなと思います。

4.に続く


『創造的でなければ死んでるのと同じ』  夏野剛✖️松本徹三 対談連載1〜7

1. 地獄を知っている二人!?
2. 迷った時は遠を見ろ
3. 海外から見た日本
4. AIの未来、人類を救うのは!?
5. 知識の幅を広げよう
6. 日本の市場と会社の限界
7. 若者よ、会社や社会をハックせよ!


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