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あの時、"12"は遠すぎた

昨日書いた記事で高校時代のバイトの話をした。
4駅分の彼も大切な思い出だが、もう1人忘れられない人がいる。

どの界隈でも必ず1回は上がる話題。
「この中だったら誰が好き?」

私は必ず同じ人の名前を即答で答えていた。
「〇〇さん!」

4駅分の彼の名前ではない。
高校生だった私がさん付けで呼ぶぐらい年上の人だ。
その人と私は同じ干支だった。

こういった話題は誰も好きじゃないと答えたらつまらない。
かといって近しい人の名前を挙げると本気にとらえられてしまう。
その人は私にとってちょうどよかった。

「〇〇ちゃんは本当に○○さんのことが好きだね~」
と周りから言われるぐらいには私がその人を好きだということは認知されていた。

だけどその好きは本気ではないことを周りも、
もちろんその人も分かっていた。

背が高くて、仕事ができて、優しい人。
素敵な人だなと思っていた。

その人は22時~8時の深夜担当の人だった。
高校生の私は絶対にシフトが被らない。
その人に会うためには21時にバイトを上がってから22時まで休憩室にいることだ。
そうすると22時前に出勤してくるその人に会える。

22時まで休憩室でみんなでおしゃべりしていたのはその人に会うためではなかったが、周りから「22時まで休憩室にいるのは○○さんに会うためだもんね~」と茶化されたら「そうです~」と答えていた。
その会話は勿論、茶化す人も私も本気ではない。
面白い話題がちょうどよくあるからふざけてする会話。

大学生になると終電ギリギリまで働くこともあるようになったし、バイト先の飲み会に参加するようになった。
高校生の時よりその人との接点が増えた。
大人と高校生はダメだが、大人と大学生はセーフのような空気が世の中にはある。
高校生の時にあった周りのノリに少し現実味が足されていく。

周りのノリがその人と私の距離を近づけさせようとしているように感じることがたまにあった。
だけど私は気づかないふりをして、さりげなくその人との距離を縮めさせなかった。

高校生の時に感じていた12歳年上の大人は、
大学生になった大人の私にとっても12歳年上の大人だった。
2,3年じゃ何も変わらない。

いや、嘘だ。変わった。
変わっていることには気づいていた。
だから私は変わったことに気づかないふりをした。

その人が私に何かしてくることはなかったが、
周りに流されることを選べばきっと2人でご飯ぐらいには誘えた。
でもしたいと思えなかった。

私は少ししか大人になっていない。
なのにあんなに離れていると思っていた12歳年上の大人との距離が急に近づいた。
怖かったわけじゃない、その現実を上手く受け入れられなかっただけだ。

私がバイトを辞める時に、"ずっと私は○○さんのファンです~今までありがとうございました。"的なことを送った。
”ファンでいてくれてありがとう。嬉しいよ。今までありがとう”的なことが返ってきた。

今の私は24歳。
その人は36歳。

私はあの時より大人になった。
いま会ったらご飯にぐらいには誘えるだろうか。


#12 #バイト  

#高校生 #大学生 #大人


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