風倉 森羅

毎週金曜日夜10時に何かしらのなにかをあげます。

勇者の火葬

プロローグ 勇者の火葬〜朝〜

細く長く昇っていく煙が映えそうな、雲ひとつない青い空の日だった。

勇者となった男は、鍛冶屋をやっている友人の息子で、小さい頃からよく知っていた。墓守の子とも遊ぶような少し変わった子供だった。けれども、いじめられている友達を見捨てて置けないような、正義感の強い子供だった。勇者の候補として王都へ旅立ったのは流石に驚いた。

友人が誇らしげだったのは最初ばかりで

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もうすぐ梅雨でもうすぐ夏だ

桜散る八重桜散る躑躅落つもうすぐ梅雨でもうすぐ夏だ

たんぽぽの綿毛が犬で吹き飛んでもうすぐ梅雨でもうすぐ夏だ

平成がある日突然終わっててもうすぐ梅雨でもうすぐ夏だ

干からびたカエルが道路に張り付いてもうすぐ梅雨でもうすぐ夏だ

「夏が来た!」勘違いして叫びたいもうすぐ梅雨でもうすぐ夏だ

#短歌 #創作 #夏 #梅雨 #連作短歌

6/9文学フリマ岩手お品書き

サークル春のぬかるみです。

6/9文学フリマ岩手【イ-36】のお品書きです。

『未来猫』はnoteで本編を全部読めます。頒布するものには、おまけで、閑話休題「愛すべきノラ猫たちパート1・2」と外伝「魔女の物語」がついてきます。1ページ目には猫の足跡をつけてみました。

『魔王の妃』は去年の冬コミで出した人生初の同人誌です。

#文学フリマ岩手 #文学フリマ #文フリ #文フリ岩手

未来猫

エピローグ

風が強く吹いている。風の音しか聞こえない。彼女の黒髪がなびく。私は彼女の名前を呼んだ。彼女は振り向く。
「今、私の名前を呼んだの?」
「やっと、見つけた」
 彼女に駆け寄る。彼女は変わらず、彼女のままだった。もう一度、彼女の名前を呼ぶ。彼女は私を抱きしめる。抱かれるのは好きではないが、今だけは悪くない気分だ。
「みらい」
 泣いてるのか、笑っているのかよく分からない表情だ。美人が台無

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未来猫

第五章 柏木いずみ

 魔法をまだ研究する者がいるという噂を聞いた。村といってもいいような小さな町だった。本当にこんなところに研究者がいるとは思えなかった。ただ、最近は不確かな情報にも飛びついてばかりいた。だから、何の手がかりも得られなければ、すぐ別の場所へ行けばいいと考えていた。
 大きな柏の木のある家だった。庭には、ハーブやら花やら何やらが咲き乱れている。蝶が数匹、ちらちらと飛んでいる。追いか

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未来猫

第四章 雨宮陽子

 ようやく梅雨が終わったものだと思っていた。そこに、この雨だ。無人の野菜販売所の中に逃げ込む。私の先に、買い物袋を持った女性が一人、困ったように立っていた。私と同じく、雨でびしょぬれだ。
「あら、ピンクの猫なんて珍しい」
 私はこの町をそろそろ後にしようと思っていたから、彼女の言葉には応じなかった。最近、家や土地に居座るのが癖になりつつある。
早く、彼女を探し出さねばならないと

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