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ASUS Chromebook Flip CM3(MT8192版)雑感

快適なクラムシェル型

 以前、の記事で「ASUS Chromebook Detachable CM3(以下、デタッチャブル)」を愛用していることを書いたのですが、昨年末ごろに「同 Flip CM3(以下、フリップ)」のCPUが従来の「MT8183」から「MT8192(Kompanio 820)」にアップグレードされたというのを知り、早速導入してみました。

 ちなみに、前回の記事は下記。Windowsマシンを使っている人や、まだChrome OS の特徴などがわからないという人は、お読みいただければと思います。

 前回の記事の結論としては、『Chromeブラウザへの依存度が高い人なら選択肢に入る、鈍重なWindowsと訣別できる軽快なマシン』という感じだったのですが、今回はクラムシェル型(フリップ)と、分離型(デタッチャブル)の違いといったところに焦点が当たります。

 ざっと今回の比較でポイントとなっている点をまとめてみました。そうなんです「一長一短」なんですよ! デタッチャブルをとっとと下取りに出しても良かったんですが、まだ手放せないでいる理由がここにあります。

  • 画面のpixel数:◎デタッチャブル > △フリップ

  • 動作の軽快さ:△デタッチャブル < ◎フリップ

  • 軽さ、サイズの小ささ:◎デタッチャブル > ○フリップ

  • 膝の上使用:×デタッチャブル < ◎フリップ

  • USBポートの多さ:×デタッチャブル < ◎フリップ

  • 内蔵ストレージ:◎デタッチャブル > ×フリップ

  • microSDスロット:×デタッチャブル < ◎フリップ

  • カメラ:◎デタッチャブル > ×フリップ

  • ガジェット感:デタッチャブル = フリップ

眼にやさしい画面解像度

 まず画面のpixel数ですが、デタッチャブルが「1920x1200(Full HD+)」で、画面サイズが10.5インチ(16:10)ということもあり解像度が高い。フリップは「1366x912(HD+)」の12インチ(3:2)なので、相対的に1ピクセルがデカいということになります。

 前回の記事でぼくは「1366x768」は縦に短いためノーサンキューである旨を書きましたが、縦が長いため許容できるということになります。もちろんさらに以前使っていた(今もたまに使っていますが)C101PAが「1280x800」だったので、それよりは確実に広く使うことができます。

 実は、デタッチャブルを使っていてストレスだったのがこの解像度の高さで、もともと目が悪いこともあって小さい文字がよく見えないんですね。OSやブラウザの設定で拡大できますが、それではFull HD+という高精細の意味がまったく薄くなってしまう上に、「拡大処理に余計なパワーを使ってしまうのではないか?」という疑念が拭いきれずにいました。

 フォント等のスムージング処理が当然となった現代で「ドットバイドット」であることを求めるのは間違っていると自分でも思いますが、高精細な画面を有する端末に対して、コンテンツのほうを全般的に拡大して使用するのでは、何のために「1366x768」を毛嫌いしているのか理由がつかなくなるという頑固さを捨てられないのです。

 そして、デタッチャブルはこの広い画面を処理しきれていないのか、今ひとつChromeの動きがもっさりしています。当然、C101PAに比べたら速いのですが、それでも気になってしまうようになっていたんですね。

 人間、慣れとは怖いものです。

モビリティの高さ低さの観点

 フリップとデタッチャブルを重ねてみるとわかりますが、やはりフリップは12インチなので大きめです。デタッチャブルの軽さは大変に魅力で、カバンを選ばないところも良いです。ぼくは体が大きくないので、小さいカバンに入るというのは重要です。

奥がフリップ、手前がデタッチャブル

 それでもフリップは、ビジネス用WindowsノートPCでいつの間にか主流になってしまった14インチからすれば十分小さいです。重さもデタッチャブルに加えて100グラムだけ重いという程度ですので、許容範囲ではあります。

 デタッチャブルは、画面を縦置きにもできるカバー型キックスタンドが標準装備なのですが、嬉しいポイントであったけれど、専用キーボードが使えないわけですよ、縦にすると。

 で、キーボードはたくさん持っているので、代替物はどうにでもなりそうなものですが、Bluetoothキーボードはチャタリングが嫌でなるべく使いたくない。有線のキーボードを繋ごうにもなんとデタッチャブルのコネクタはUSB-Cが1つ。画面を立てるとコネクタが底面にきてしまうので、USBハブを使おうが、ケーブル接続をしようと思ったら別途スタンドを用意して工夫して浮かせなければならない。

 カバー型キックスタンドがあって専用キーボードも付属しているのに、それとは別にキーボードとスタンドを持ち歩くというのは相当に頭がおかしい感じがしてきますが、それを乗り越えたとして、このセットアップを外出先でするのはいただけない。

 結局、画面を横にして標準的な使い方をせねばならないのですが、それはそれで次の問題があったんですね。

 キックスタンドは膝の上では役に立たない。

 とくに、ぼくのような昭和型体型の人間は、足が短い。とくに膝から下が短いので、電車の椅子に座ったり、ベンチに腰掛けたりすると、太腿から膝に向かって角度が下がるわけですよ。ここにキックスタンドを立ててごらんなさい。本体がそっくりかえってこぼれ落ちます。キーボードも打ちづらい。ハイヒールでも履くしかない。

 となるとフリップのように、古式ゆかしいクラムシェル型として使用できるのはアドバンテージになります。電車に乗るときは1日30〜1時間は座ったりしますので、その間快適に使えるかどうかはなかなか重要です。

 モビリティ、単に小さく軽く持ち運べるだけではだめで、持ち運び「ながら」使うという観点も、人によっては要るということなんでしょう。

USBポートが多い=安心

 出先で机を借りたときに有用なのがUSBポートの多さ。フリップはUSB-C端子を2つ搭載していますので、片方で充電しながら、もう片方はAndroidスマホと接続してテザリング(というかモデムとして使用)ができます。ケーブル接続の安心感よ。さらに汎用的なA端子もついているので、スマホを接続せずとも前回紹介したUSBドングル型のモデムが使用できます。ていうか、それいいな。今思いついたわ。

 前回の記事では、デタッチャブルはUSBハブ利用が必須となると書いたんですが、そんなもん使わずに荷物をへらすことに越したことはありません。 加えてデタッチャブルのUSB-C端子は「USB2.0」規格なので転送速度が480Mbpsと微妙に使い勝手が悪いのですが、フリップのUSB端子はAもCも「USB3.2 Gen1」規格なので転送速度が5Gbpsと速いです。といっても、USB3.0も3.1 Gen1も3.2 Gen1も意味は同じなので、3.1でも3.2でもいいから「Gen2」の転送速度10Gbps以上を積んでくれという感じはします。

 さらにフリップにはmicroSDカードスロットがあります。その分ストレージが64GBと少なめです。Chromebookの使い方としては、アプリをたくさんインストールしたりということは無いので、microSD併用で十分よく、ストレージが一昔前のスマホ並みという点はまったく気になりません。もしこれがAndroidスマホやAndroidタブレットだと、アプリをたくさん入れる都合上、スピードの遅いmicroSDなんか使ってられないので……。

カメラは驚きの低画素数

 フリップは画面が裏側に回せ、タブレットモードにすることができます。このため、カメラはインカメラ1つのみです。今どきというのも何ですが95万画素と驚きの低画素数。対してデタッチャブルはインが192万画素、アウトで800万画素です。

 画素数が少ない点については、きれいな写真が撮りたかったらiPhoneで撮ればいいため、写真用途にわざわざ使うことは無いでしょうから、スペックが低いからといって欠点とは言いづらいです。Zoom等のビデオ会議用途にしか使わないのであれば、処理を軽くするという観点でインカメラのみの95万画素というのは十分な感じします。おおよそ1200x800相当の画素数96万から有効画素数を考えて95万と計算しているように思えますが……。そうだとするとこれ、C101PAの画面pixel数と同じなんですよね。

C101PAの正統なる系譜

 さきほどのカメラ画素数といい、USBポートが3つといい、microSDスロットといい、ひょっとしてもしなくても同メーカー同シリーズということもあり、このフリップはC101PAの系譜、後継機種という感じがします。

 かつてのC101PAは液晶画面の上下左右に幅がそれなりにあったのですが、今回のフリップはベゼルが下部分以外は細くなっています。この太い下部分も、タブレットモードで使用するときに握る部分として便利です。

 タブレットという話に関連して、別売の「USI(Universal Stylus Initiative)規格ペン」を併用した際の使い勝手も良いです。デタッチャブルにも内蔵ペンがあったのですが、購入後にGoogle Keepアプリの仕様が変わってしまい、ペンを使用するにしても若干のモタつきがありました。フリップでUSIペンを使用するぶんには特にそういったモタつきは感じません。ちなみにELECOM製のものを使っています。

 とはいえ、電池が要るのですよね、USIペン。ペン側が無電源で軽いWacomのデジタイザだったらよいのにな、と思います。Hi-uni DIGITALをキングジムのフリーノ(デジタルメモ)で使っていますが、とても書き味が良いので……。

結論:現状の最適解

 この項目のタイトルどおり、ASUS Chromebook Flip CM3は、ぼくにとって現状の最適解かな、と思っています。小ささや軽さにおいてデタッチャブルを完全に置き換えるものではないですが、性能の良さ、画面の見やすさではフリップに軍配が上がります。

 据え置き機的なハイグレードを求めると、それはかえってWindowsやMacで良いということになりますし、それらならもっと性能の良いものを選ぶことができます。逆に、Chromebookで14インチ以上のハイエンド機ってむしろ「WindowsならできることがChromebookではできない」という比較をしたくなる瞬間が増えてしまうわけですよ。相当な理由が無い限り、無理をしてハイエンドを狙わないほうがよいと考えられます。

 モバイル用途かつクラウドで仕事などがすべて成り立つ環境であれば、このASUS Chromebook Flip CM3は購入の選択肢となると言えます。3:2という画面比率の地味な利点ですが、タブレットモードにすると日経新聞アプリの紙面ビューアがかなり見やすいです。

 欲を言えば、毎度のことながら直接SIMカードが挿さるようにしてほしいというのはあります。ですが、スマホは必ず持ち歩いていますし、テザリングで困ることはない上に、USB機器も接続できるため、目をつぶってよいかなと思います。

 というわけで、今回は同じCM3という型番を与えられているため紛らわしいですが、フリップタイプでCPUがMT8192のほうを紹介いたしました!

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