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土地に根付いたフェスを体験! トルコの世界遺産カッパドキア 複合フェス『Cappadox 2018』レポート

6月18日から22日にかけて、梅雨に突入せん、と雨雲をたっぷり溜め込んだ東京を抜け出して、カラリと湿気もなく一面に晴天が広がるトルコを旅してきました。(実際は、トルコでも雨も降ってましたが……)最大の目的はトルコは世界遺産カッパドキアで行われるフェス『Cappadox2018』!

初めての海外フェス。初めてのトルコ。初めての複合フェス!『生きているうちにしたいこと[BEST3]』に入るくらい念願だった、トルコの大地を踏むこと。そんな憧れを達成したことを忘れないうちに、楽しかったポイントをメモします。 

Cappadoxとは?

Cappadox(カッパドックス)は、トルコの世界遺産カッパドキアで5日間、行われる複合フェスです。音楽を主体に、コンテンポラリー・アート、ガストロノミー、アウトドア……複数のジャンルにまたがって様々な催しが開かれます。

2015年から始まり、今年は第4回目となる今年のテーマは「静寂(サイレンス)」。音楽フェスのテーマが「静寂」……?と首をかしげるもの。しかし、そのテーマにふさわしく多彩な工夫が、各催しでなされていました。

主催はトルコのイベンターPozitif。メインスポンサーにはVolkswagen、その他トルコ国内外からITやアウトドア、多様な企業が協賛として名を連ねています。

このフェスを知ったきっかけは、ワールドミュージック評論家のサラーム海上さんのラジオ『J-wave ORIENTAL MUSIC SHOW』。この番組のリスナーである友人から誘われ、今回二人でフェスに参加してきました。前年をレポートしていた海上さん曰く「(フェスの客では)日本人が全然いない!」とのことで、はたして今年はどのくらい日本からの客はいるのか?それともトルコ人だらけなのか?ドキドキしながら向かいました。

Cappadoxは広大な谷を有する土地カッパドキアで行われるフェス。その土地の特徴から、それぞれ距離が離れた場所にいくつかのプログラム・エリアが点在しています。各ジャンル、エリアの特徴をうまく活かした催しが開かれています。プログラム数もとても多く、全てを体験できるわけではないので、体験して印象に残ったいくつかのプログラムをピックアップします。

それぞれのシチュエーションが最高な、音楽ステージ

メインステージ [ Perili Ozanlar Vadisi ]

一つの大きなステージと、DJブースを内包したエリアは、四方を岩にかこまれており、Cappadox内で一番大きなステージです。ブース向かいの巨大岩にはプロジェクションされており、サイケデリックな映像が映し出されています。野性味あふれる環境でのVJは初めて見ました!

メインステージを中腹、その下った先のすそ部分にDJブースがあるような、すり鉢状の谷の中にエリアが作られており、小高い位置には休憩スペースも設置されています。ふかふかのソファが並んだそこで、少しの間爆睡してアルコールが回って疲れた体力を回復することもできました。(もちろん手回り品注意)

このメインステージでは、トルコ国内外から、様々なアーティストが演奏していました。


サブステージ [ kskm @cappadox fizy stage ]

カッパドキア名物である「洞窟ホテル」の庭を利用したステージも見られました。メインステージと同様に岩に囲まれてはいますが、さらに範囲を縮めたこじんまりとした印象のサブステージです。ホテルの庭園で開催しているので、会場は洗練された調度品や彫刻作品が集められており、それらを背景にジャズライブを体験すれば、さながら貴族のミュージックサロンのような気分にさせられました。

会場である谷は小高い街の外壁の一部になっており、カッパドキアの壮大な大地に音楽が広く開放されていくような印象でした。


広大な大地が舞台  [ Valley stage ]

早朝帯のみ、開かれるステージもあります。それがカッパドキアの谷で、谷間を目前にして開かれる野外ステージです。

カッパドキアで有名な観光レジャーである気球がたくさん空にぷかぷかと浮かんで、谷間を行ったり来たりしています。それらを背景に開かれるステージは、この時間帯ならではの景色は、演出として最高にメルヘンチックです。

非現実的な光景とそこに鳴り響くアンビエントサウンド。朝から最高かよ、の一言です。………と、感動していたら、その日は機材トラブルで終了30分前倒しでそのまま終了。少し残念なエピソード付きのプログラムとなりましたが、シチュエーションが特に最高だったステージです。

その他にも様々なスポットで、音楽ステージが開かれていました。

朝から晩まで、晩から朝まで。不眠不休でDJが音楽をかけている町中のクラブ内でのステージも。さらに、インフォメーションセンターがある街の公園でもミニバンドの演奏が行われていました。様々な場所で音楽が鳴っていました。

Cappadox参加アーティストの楽曲はSpotifyで


トルコ国内外から様々なアーティストが集まっているCappadox。今回の参加アーティストを集めた公式プレイリストがSpotifyで公開されています。馴染みのない音楽家が多い私にとって、どのステージを見るか選んだり、お気に入りアーティストを探すのにとても役立ちました。もちろん現在も公開中ですので、行った気分を二度味わえます。


ガストロノミーやアウトドアも世界遺産のなかで体験

シェフによる伝統的なトルコ料理をいただける [ Open fire cooking ]

トルコの有名なシェフを呼んで、歴史深いトルコが持つ伝統的かつ原初的な料理をコースで楽しめるイベント「Open fire cooking」。カッパドキアの谷間に建つ、お城の小庭のような場所で開かれる。前菜からデザートまでのおおよそ6品が順番に振る舞われるコースの見どころは、メインの子羊の丸焼き。料理している風景から見学でき、なかなか見ることができない体験ができる特別感のあるイベントです。

ワインも、料理に合わせて計4本の種類をペアリングしてくれるので、みんながほろ酔い状態で楽しめます。滋味深い素材を組み合わせた料理の数々は、素朴に感じられるかつ未経験の味覚で、とても美味しいものでした。


今回、たまたま取材で訪れていたサラーム海上さん御一行お会いし、席をご一緒させていただきました。海上さんやそのご友人の方々から様々な料理や本イベントにまつわるお話を伺えた、貴重な時間です。(ちなみに、参加者についても伺ったのですが、日本より参加している方は昨年よりも増えたそう。今後益々身近なフェスになるのかな、と感じました。)

そして、このプログラムで最も印象的だったのは、ひとしきり料理を楽しんだ後にDJの音楽に誘われて20名程の参加者みんなが踊りだしたこと。DJスペースに早変わりしたレストランスペースでは、DJが持っていたグレイテスト・ヒッツが鳴り響く、最高の食後となりました。


カッパドキアの原っぱでピクニック [ Picnic Program ]

カッパドキアが持つ谷間の草原で開かれるピクニック・プログラムはランチタイムに開かれます。ビュッフェ形式の正統派トルコ料理が揃います。メニューは、ケバブやトルコのペリメリなど、一般的な品々。とくに気に入ったものは、特産品であるさくらんぼです。

庭に用意されたレストランスペースは広く、長閑な風景です。スペース横ではミニバンドがアラビアン・ジャズを披露してくれます。

牧歌的で穏やかな空間は、昼時に酔っ払うにはぴったりの嬉しいプログラムでした。

土地の歴史と国外作家の革新が交差するコンテンポラリー・アート

メインエリアから車で20分程遠い、閑静な住宅街を抜けた谷間で開かれているアートエリア。オランダ出身の建築スタジオRAAAFによる、夜間だけ開かれるインスタレーション作品展示があります。

聖職者の住居跡であるカッパドキアの遺跡郡を利用して、かつて人々が住んでいた部屋に松明が焚かれている様子を外から一望できる作品です。人工的な光、音を一切に締め出すことで当時の生活を思い起こさせます。本展示にはアーティストが滞在しており、本人の解説を聞くチャンスに恵まれました。彼曰く、「夜には星の光しか届かなかった当時を再現したい」というコンセプトから作られたそう。

カッパドキアの深く、長い歴史を感じさせる本作品。虫の声が大きく聞こえる程の静けさは、本年度Cappadoxのテーマである「静寂」をまさに体現するものでした。この体験からは強く想像力を湧きたてさせられ、アートが持つ影響力を改めて感じさせる、私にとって非常に感動的なプログラムでした。

この作品以外にも、昼間には同じ場所でトルコ国内外から集ったアーティストによる、様々な作品が展示されています。四時間にも及ぶガイドツアーも行われているようでしたが、時間の都合で今回は断念しました。

ワークショップからショッピングまで 多彩な体験

その他にも、国内外のアーティストが開くハンズオンワークショップ(行って、その場ですぐに体験できる形式のワークショップ)が数多く開かれていたり……。

インフォメーションセンターのある中央広場では、ハンドメイドマーケット街ができていて、トルコの伝統的なアクセサリーから、絵画などの作家独自のアート作品が売られていたり……。

Cappadoxは、様々なジャンルが膨大に交差するイベントでした。

Cappadox、土地の規模がすごい

このように、世界遺産である「カッパドキア」が持つ特徴活かしたフェス『Cappadox』。広大な土地に点在する各エリアをそれぞれシャトルバスが結んでいました。夜も遅く朝も早いプログラムを案内をしてくれるスタッフの数も非常に多く、参加者よりスタッフの方が多いのでは?と勘ぐってしまうほど。

また、自分たちが参加したいプログラムの詳細を確認できるスマホアプリも用意されており、それを利用しないと迷子になってしまうような規模でした。


ここまで土地に寄り添った複合フェスは初めての体験。世界中を探せば、同じように世界遺産をうまく活かしたフェスがあるのかな、と今後の探索が楽しみになったフェスでした。

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