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瑛人の『香水』がクソ客LINEの歌にしか聞こえない

 こんばんは。『香水』で有名な瑛人さんの、紅白出場が決まりましたね。おめでとうございます。
 歌でも、映画でも、小説でもそうだと思いますが、幅広い層から人気が得られる作品というのは、それだけ多くの解釈がなされる作品でもあると思います。
 私にとって瑛人さんの『香水』は、お店の女の子にクソ客LINEを送る男性の歌に聞こえてしかたがないので、そんな私の一解釈をここで紹介させて頂ければと思います。


夜中にいきなりさ いつ空いてるのってLINE
君とはもう3年くらい 会ってないのにどうしたの?

 夜中にいきなり『いつ空いてるの?』ってお店の女の子にLINE。もう3年も会ってないのに、急にLINEしたくなっちゃって、俺、どうしたの? と、自問自答するところから始まります。
 夜中に自分からLINEしておいて「どうしたの?」とすぐさま自分に問いかけるという、いきなり精神の限界状態を感じさせるシーンです。もう少し踏み込んで解釈するならば、自分がLINEを送っているのか、自分の男性器がLINEを送っているのか、自分でも見分けがつかない...。そんな状況でしょうか。巷ではこういった深夜の唐突なLINEのことを「勃起み溢れるLINE」なんて言うみたいですが、まさに、その「勃起み」が溢れ始めている歌い出しです。

あのころ 僕たちはさ なんでもできる気がしてた
2人で海に行っては たくさん写真撮ったね

 お店の女の子と海に行って、写真を撮る。3年前は、かなりいいところまで行きました。もしかしたら、女の子が営業用の日記にアップする写真をいっぱい撮らされたという話かもしれませんが、それでもお店の女の子と海に行けるなんて、凄いことです。
 「なんでもできる気がしてた」というのは、店外デートをしている時の男性の気持ちを端的に表現しているフレーズですね。お店で遊ぶ時には、そのお店の中での遊び方のルールというものがある。だからこそ店外デートでは「なんでもできる気がして」くるというのが、一般的な客心理ですね。

でも見てよ今の僕を クズになった僕を
人を傷つけてまた泣かせても 何も感じ取れなくてさ

 ここは詩的で抽象的な表現になっていますが、この部分が何を表現しているのかと言うと、

よかったら、また久しぶりに海でも行こうよ😆

おーい、既読無視ですか⁉️😅汗

エッチしたい!😁🏩

って、立て続けにLINEを送ってるって意味なんですよね。そのようなLINEを送信している時の男性の気持ちが「でも見てよ今の僕を クズになった僕を 人を傷つけてまた泣かせても 何も感じ取れなくてさ」ってことなんです。
 それにしても、不思議な歌詞です。「人を傷つけてまた泣かせても 何も感じ取れなくてさ」と言っていますが、人を傷つけているということを理解できている時点で、何も感じ取れてないわけではないですよね。自分は何も感じ取れてないというのはただの言い訳であって、傷ついている相手の気持ちよりも、自分の中で優先してる何かがあるというのが、本音なのでしょう。そしてそれはきっと「エッチしたい!😁🏩」です。

別に君を求めてないけど 横にいられると思い出す
君のドルチェ&ガッバーナの その香水のせいだよ

 ここは意味を読み取るのが一番難しいところかもしれません。しかし、ここをうまく読み取れると、飛躍的に『香水』がクソ客LINEを送る男性の歌に聞こえてくるエモいところでもあります。
 「別に君を求めてないけど 横にいられると思い出す」の部分。「別に君のことなんて求めてないのに、君が横にいると、昔のことを思い出しちゃうよ!」って意味だと捉える方も多いと思いますが、「横にいられる」の部分は受身の意味ではなく「横にいることができる」という可能の意味で、「思い出す」は、過去のことを「思い出す」のではなく、ある気持ちを「思い始める」という意味で解釈すると、「別に君のことなんか求めてないけど、僕は君の横にいることができると、思い始めてしまうよ!」って意味に解釈できます。
 自分が相手の女の子のことを好きだという気持ちを「別に君のことなんか求めてないけど、僕は君の横にいることができると、思い始めてしまうよ!」という、めちゃくちゃ回りくどい方法でしか考えられなくなってしまったという、どうしようもない気持ちが表現されています。
 その原因となったのが「ドルチェ&ガッバーナの香水」。お店の女の子がホームページの日記に「仲良しのお兄さんから、ドルチェ&ガッバーナの香水もらいました〜!」って写真と一緒にアップしちゃったから、嫉妬心で気持ちが引き裂かれてしまったんでしょうね。
 もう一点、注意深く読まなければいけないのは「別に君のことなんか求めてないけど、僕は君の横にいることができる」と考えることができるのは、それは相手がお店の女の子だから、という理由もあるということです。自分の気持ちや相手の気持ちとは関係なく、お金を払えば横にいることができる。それが、お金で一緒にいる時間を買うことのできる、夜のお店のシステムです。
 要するに、一つは嫉妬心のために、二つは夜のお店のシステムのために、自分の感情は引き裂かれているんだ、ということを叫んでいるのですね。
  しかし、この歌の中の「僕」は、夜のお店のシステムによっても自分が苦しんでいるという、そうした環境要因に対しては自覚的ではありません。自分の感情が引き裂かれているのはあくまで「君のドルチェ&ガッバーナのその香水のせい」なのです。複雑な環境要因を無視して、相手の女の子のせいだけにする。短い歌詞の中で、クソ客LINEを送ってしまう男性の本質が抉られている箇所だと思います。

今さら君に会ってさ 僕は何を言ったらいい?
「可愛くなったね」 口先でしか言えないよ

 お金を払えばいいのだから、隣にいようとするのは簡単だ。でも、いざ相手の女の子と会った時のことを想像してみると「可愛くなったね」と口先でしか言えなさそう。お金を払っている関係に対して、自分がどこかで引け目を感じているからでしょう。3年前は海にまで遊びに行けたのに、一度距離ができれば再びただのお客さんとなって、「可愛くなったね」と口先でしか言えなくなってしまう。お店の女の子を好きになる辛さが、凝縮されています。
 この、お店の女の子との距離感について歌っている部分を聴いた後に最初の部分を振り返ってみると、一番最初に送った「いつ空いてるの?」というLINEも「仕事はいつ休みなの?」という意味ではなく、「お店で予約空いてる時間いつ?」という意味で送っていると、解釈することもできますね。

どうしたの いきなりさ タバコなんかくわえだして
悲しくないよ悲しくないよ 君が変わっただけだから

 もうここら辺になってくると、現実と妄想の区別がついているのかも怪しくなってきます。この部分は、夜中にお店のホームページ上の女の子のプロフィールを眺めている中、プロフィールの項目でよくある「タバコ」の欄のところに「吸います」って書かれてるのを発見してしまったところの描写ですね。3年前は「吸いません」って書かれていたのに...。タバコを咥えはじめる相手の像が目の前に思い浮かぶ。悲しくないよ、悲しくないよ、君が変わっただけだから...。

でも見てよ今の僕を 空っぽの僕を
人に嘘ついて軽蔑されて 涙ひとつもでなくてさ

来ました。BメロはLINE送信部分ですね。相手の女の子が喫煙者であることを知ってしまったショックからか、また衝動的にLINEを送ってしまったようです。

おーい❗😆エッチ🏩したいとか急に言って,ごめんね😅💦

でも、このまえ同じお店のルナちゃん指名したけど、ルナちゃんはプライベートでえちえち😘させてくれたんだけどな〜❗👀笑

いっぱいサービスしてくれないなら、お店行くのも考えものだな(^_^;)

こういうLINEを送っている時の男性の気持ちが「でも見てよ今の僕を 空っぽの僕を 人に嘘ついて軽蔑されて 涙ひとつもでなくてさ」なのです。えちえちを目指しても決して自分の人生は変わらないのに、それでもえちえちに拘ってしまう自分の空っぽさ。「このまえ同じお店のルナちゃん指名してたけど、ルナちゃんはプライベートでえちえち😘させてくれたんだけどな〜❗👀笑」は完全に嘘なのですが、人に嘘ついて軽蔑されても、もう涙ひとつも出なくてさ...。

別に君を求めてないけど 横にいられると思い出す
君のドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ
別に君をまた好きになる ことなんてありえないけど
君のドルチェ&ガッバーナの香水が思い出させる
何もなくても 楽しかった頃に
戻りたいとは思わないけど 君の目を見ると思う
別に君をまた好きになる ことなんてありえないけど
君のドルチェ&ガッバーナの香水が思い出させる

 もう完全に精神を追い込まれ、君のことを求めてないだの、横にいることができるだの、また好きになることもありえないなど、同じ一つの苦しみを色んな言葉で叫んでいます。
 この箇所の歌詞からわかる新情報といえば「君の目を見ると思う」とあるように、相手の女の子はHPのプロフィール写真で目をモザイクで隠さないタイプの女の子であるということと、「僕」は一方的にLINEを送りながら延々とプロフィールを眺めているということですね。

別に君をまた好きになるくらい君は素敵な人だよ
でもまた同じことの繰り返しって 僕がフラれるんだ

 薄々そうだと思ってましたが、やっぱり「僕」は、お店の女の子が「仲良しのお兄さんから、ドルチェ&ガッバーナの香水もらいました〜!」と日記に書いたのを読んで、自分は「フラれた」と思ってしまっていたんですね。クソ客LINEを送ってしまう男性の根底にある被害者意識が最後に叫ばれるという、悲痛なラストです。

 というわけで、瑛人さんの『香水』の解釈が完遂されました。

 以上のように、瑛人さんの『香水』は、3年前の「ドルチェ&ガッバーナの香水日記事件」によりフラれた(と思い込んでいる)「僕」が、お店の女の子のプロフィールを眺めながら、自分でもどうしてかわからないけど夜中にLINEを送ってしまい、その後も嫉妬心や被害者意識に苛まれて「エッチしたい!😁🏩」とLINEを立て続けに送ってしまうという、クソ客LINEを送る男性の心理を見事に描いた歌であると思います。
 
 最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。この文章を読んで頂いた方の『香水』感が、少しでも変わってくれたら幸いです。

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