見出し画像

私の心に突き刺さった見たことない魚の小骨カイロ・レンについて(スターウォーズep8感想)

※ep7、ep8ネタバレ、偏った感想を含みます※

ep7の段階から私は「カイロレン気になって仕方ない勢」ではあった。ちょっとポンコツで中二病的な悪役。この人なんなんだろう…?と魚の小骨のように心に引っかかるキャラ、そんな印象。

だからep8も「スターウォーズの新作楽しみ〜!…ついでにカイロレン見に行くか、気になるし」くらいのトーンで見に行った。

それが映画館から出て来た直後はこうである。

本当にすまなかった。私が間違っていた。

※以下ep7、ep8のネタバレを含みます。※

カイロ・レンといえば、ep7ではダース・ベイダーのようなポジションで出てくる悪役だが、

・ダース・ベイダーに憧れて似たようなマスクを被ってはいるが、それは機能的には意味のないただのコスプレである(多分)。

・失敗した部下への八つ当たりを高そうな計器にぶつけて当たり散らす、反抗期の子供のような行動。他の部下たちからも「うわぁ…またかよ…」と思われている。

・フォースをひとかけらも学んでいないはずの女子にフォース勝負で競り負ける。

・ライトセーバーを一度も握ったことがないはずの女子にライトーセーバー勝負で競り負ける。

などのポンコツ要素により、映画を見た皆の心に魚の小骨のように突き刺さった問題キャラである(※私調べ)。

しかも先日の全米の人気投票では、全宇宙で蛇蝎の如く嫌われていたジャー・ジャー・ビンクスよりも人気が低いことが発覚。もう最高に八方塞がりで、「今後何が起こったら私にとってこのキャラの評価が変わるんだろう?」と思っていたところに、ep8。『最後のジェダイ』。

前述のごとく、私が鑑賞後に手のひら返してカイロレンのライトセーバーを買い狂乱していたのを見て、未見の友人たちが
「…かっこいいんだな?ep8のカイロレンは、前作と打って変わってかっこいいんだな?」と聞いてきたが、違う。全然違う。

そういうことじゃない。

もうさ…

「君の名は」だったんだよ。

カイロレンが「君の名は」だったの!!!

何を言っているか分からないと思うが、スターウォーズで「君の名は」をやりだすんだよ!!!1信じられる!?!?

全く別場所にいるカイロ・レンとレイのフォース的なものが繋がって、二人だけのビデオ電話のようなシーンが始まるの!

スターウォーズ版「君の名は」が始まったの!!

「混線」するタイミングはお互いに選ぶことができない。日常のいろんなシーンでさし挟まれる「あっ…またお前か」「なんなのよ」という憎み合う二人の突然のホットライン!風呂上がり(?)の着替中のカイロレンに唐突に繋がるビデオ通話!IMAXの超高画質でスクリーンに映し出される上半身裸のカイロレン!私は今なにを見せられているんだ!!

しかも裸かどうかよりも、カイロレン、どうしてそんなヘソの上まで隠れるハイライズのパンツを履いているの!?カッコつけるならもっとローライズのパンツ履きなよ!それとも遠い昔はるか彼方の銀河系ではハイライズが若者に人気のファッションなのか!?

レイも当然そこを突っ込んでくれるものと思っていたのに、困惑して目をそらしつつ「何か着るものはないの…?」。

ええっ!なにその反応!?上半身裸の男子なんて古代ギリシャでは普通でしょ!?いや違う今は古代ギリシャじゃない!遠い昔の銀河系だ!もう混乱して意味がわからない!!

誰か今私が見ているものを説明してくれ!!!

「衝撃のスターウォーズ」という触れ込みで公開が始まったから、あらゆる衝撃を予測して行った!だけど、だけど「君の名は」だとは思ってないじゃん…!

なんかもう…なんかもうその後もフォース通信で窓越しに手を重ね合う恋人同士みたいなことをやりだしたり、二人の距離が徐々に近づいていく会話みたいなのが始まったり…。

それで、最終的には……心を通わせた二人の共闘シーン。

もうさ…。私は普段は古代ギリシャ研究をしているので、古代ギリシャ風に言わせて欲しい。この二人の間に流れているものが性愛(エロス)だろうが、友愛(フィリア)だろうが、兄弟愛(ストルゲー)だろうが、もうなんでもいい。

見たい。

この個人的で、ささやかで、ちっぽけなただ一つの愛が、全宇宙を滅ぼすさまが見たい。

ギリシャ神話で、冥王ハデスの恋によって地上が永遠の冬に閉ざされかけた時のような。医術の神アポロンが、息子の敵打ちのために罪のない巨人族を皆殺しにした時のような。

あの時のような、血のごとく鮮やかで氷のごとく鋭い破滅が見たい…!!


ep7が始まったときに、ダース・ベイダーを超える悪役をどう作るんだろう?と思ってた。あれほどに痺れる見た目で、かっこいい設定の悪役を、カイロレンがどう超えるんだろうかって。でも全く違った。カイロレンは強くも冷酷にも悪にも撤せない、ちょっとかっこ悪い悪。誰の色にも似てない。

もうかっこいいとかかっこ悪いとかいう次元を超えてる。

見たことない。こんなキャラ。ギリシャ神話の時代から、彼に似たキャラを見たことがない!この人…なんなの?この人、誰なの??何千年も続く人類の物語史の中の、一体どのポジションのキャラなの?

2017年、私の心に鋭く突き刺さった見たことがない魚の小骨。それがカイロ・レン…!

映画として面白かったかどうか判断つきかねるくらい衝撃を受けているが、SWシリーズの中でも問題作であるのは間違いない気がしている。本当に、いつも新しいものを見せてくれる、新しい体験をさせてくれる、SW…!


そのほか今作は「無重力の宇宙空間で、一定の速度で航行するのに燃料が必要なのか?」「ハイパードライブでそんなふうに攻撃できるなら、なぜ応用した武器を作らないのか?」という部分が初見で引っかかりましたが、ハイライズのカイロレンに脳がやられていて色々見逃していたのかもしれない。

己が見たものが真実だったのか確かめに、また映画館に足を運びたいと思います。

先日の金ローでのep7地上波放送時の様子。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?