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Suzuki Voltyを買う

昔から同世代のものに対して特別な思いがあった。自分が過ごしてきた時間の長さを知っているから、同じ時間を共有したものに、それだけで特別な関係が生じているような気がする。

さて、車や楽器、カメラといった、趣味性が強く、さらに自分にとっての"相棒"となり得る存在を、自分と同い年のものにしたいという感覚は、割と多くの人々の中に存在しているように感じる。

自分と同い年の相棒を手に入れることは、それだけで人生にとって特筆すべきストーリーとなる。機械は時間が経ち、ビンテージと呼ばれる年式になれば入手が困難になってしまうため、できるだけ人生の相棒は早めに買っておきたい。

この春、新しくバイクを買う機会が訪れた。中古バイク屋で出会った1998年式のスズキ・ボルティーだ。

光り輝くメッキパーツが眩しい

完全な同い年では無かったが、1999年生まれの私と一歳違い。25年前のバイクにしては驚くほどに綺麗で、店に入荷したばかりだと言う。

タイプTという特別仕様車で、現在では中古市場でもあまり見かけないモデルだ。高校時代から憧れていたボルティー。直感的に自分の相棒だと感じた。

タイプTは通常仕様と違い、リアキャリアやロングシートによって、よりクラシカルかつ、ブリティッシュバイク的な存在感を纏っている。それでいて童夢によるキュートな曲線美のデザインは健在だ。

タイプTの初期型にのみ装着される特別なエンブレム

免許を取ってから初の250ccクラス。今まで乗っていた125ccのホンダ・グロムと比べ、より自分が"バイクに乗っている"という感覚が強くなる。それでいて足つきは良好。タイヤサイズが大幅に大きくなったことにより、ハンドルのヘビーさを感じるものの、走り出すとそれが安定感を生み出す。

前オーナーによりタコメーターが追加されている。スポーティな印象のハンドル周り。

80年代にリリースされたDR250Sからの流れを汲む単気筒エンジンは、驚くほど軽やかに加速していく。ミッションも非常にスムーズ。5速ミッションはかなり加速に振ったギア比ではあるものの、キャンプなどで大きい荷物を載せることや、下道での運用がほとんどであることを考えるとちょうどいいバランスだろう。

古いワイヤースポークのチューブタイヤ。キャブレターエンジン。燃料計の無いシンプルなメーター。現代のバイクと比べ、あまりに古臭く不便なバイク。状態はいいが、所々に錆や経年劣化が見られる。しかしながらそれが生産から25年という時間を感じさせ、むしろ勲章のように輝く。自分と(ほぼ)同い年の新しい相棒との冒険がこれから始まる。

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