かがく宇かんを聴講した、いち市民のレポート/その1 〈期待編〉

正月気分もほどほどに、エンジンをあげていかないとなぁと思っていた2019年1月12日。
中谷宇吉郎雪の科学館の公式インスタグラムアカウントから、こんな催しを案内する投稿があった。


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『かがく宇かん』 公開研究発表会 カガクとクウカン/ときどきクモリ

2019.01.27 [Sun] 13:30
片山津地区会館テリーナホール

[かがく宇かん]とは
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科学者・中谷宇吉郎生誕地であり「中谷宇吉郎雪の科学館」を保有する加賀市と、一般財団法人 中谷宇吉郎記念財団とが協働して実施するプロジェクト。
中谷宇吉郎およびその次女である霧の彫刻として知られる中谷芙二子へと連なる、自然や環境に対するユニークな思想を背景として、2017年にウェブ上の準備室から活動を開始。
造形作家・批評家の岡﨑乾二郎をディレクターに迎え、「科学の心」「環境は知性である。」「学ぶ力を学ぶ」をコンセプトに掲げる。
今後さらに自然科学と芸術の分野で独自の研究教育を実践し、国際的なネットワーク構築と情報発信の拠点となることをめざす。

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片山津温泉の地区会館なんてごくごく庶民的な公共の場に似つかわしくない、ていねいに作られた告知ビジュアルと興味をそそる紹介文。

気になる。
とはいえ告知を読み込んでも今ひとつ内容は掴めない。

主催は「加賀市」「加賀市教育委員会」「中谷宇吉郎記念財団」「urizen」とあり、「中谷宇吉郎雪の科学館」は共催とのこと。

告知画像を拡大してみると、加えてこう記述されていた。

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 かがく とく うかん 
 
 科学と芸術をつなぐものは何か。
 世界の成り立ちを理解する=解きほぐす営みが
 科学であるとすれば、
 その解きほぐすプロセスで生まれるのが
 (あるいはその解きほぐしを可能にするのが)
 時間であり空間である。
 芸術とはこの時間と空間を解きほぐし、
 また編み上げる術であることにおいて、科学にともない、
 また芸術は科学の心に裏打ちされていなければならない。

 科学の心で 芸術の 時間と空間を解く。


中谷宇吉郎 自然科学と芸術による研究教育事業『かがく宇かん』プロジェクト

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ここまで読んでもやっぱりはっきりとはしないけれど、ただただ気になって、どきどきした。

さらに詳細を読み進めると「かがく宇かん研究メンバー」としてアーティストや各方面の専門家の方々が19組記載されていた。

錚々たる、と述べたくなる肩書きが並んでいるけれど、私がその中で知っていたのは中谷芙二子さんただ一人。
その芙二子さんについても、小さな頃から慣れ親しんだ郷土の偉人・中谷宇吉郎の次女であり、宇吉郎の功績を記念した雪の科学館にある「中庭」の作者、という知識しかなかった。

(中庭にはグリーンランドから運んできた石が敷き詰められ、装置によって霧が出されている。子どもの頃科学館へ行くと石の上をかけまわるのが楽しみで、その霧がアーティストによる取り組みだなんて思っていなかった。)



何が話されるかはもちろん、誰が話すのかもわからない。
それでもとにかく、知的好奇心をくすぐられた。

個人的にはここ数年、個人事業主として生きていくための実務に向き合い続けるばかりで、学生の頃のように即物的ではないことや、もやもやした気づきについて考えることから遠のいているのが気になっていた。

今年は隙間をもうけて、はっきりしないことを考える時間を取り戻そう!と考えていたところだったので、“わからない”ことも含めて、わくわくしたのだと思う。

すぐにカレンダーに予定を打ち込んだ。



わからないわからないと言っているが、運営の側からはかがく宇かん 公式WEBサイトも開設されていたので予習することもできたのだけど…(サイトタイトルは「準備室」…そそる。)1月の私はそれこそ実務に追われていたし、いや、というよりそもそも予習熱心ではないから、結局なんの下調べもせず丸腰で当日を迎えた。

(当日のディスカッションのうちにもたくさんのアーティスト名や作品名が語られたが、わかったのはのはジョンケージくらいで。あとから調べようと必死でメモをとっていたが、人名はうまく聞き取れなかったりして難儀だった。。。追えていない人や作品がたくさんある。)

さて、前置きだけで長くなってしまったけど

これから続くレポートは、
“知識はないけど好奇心と考えたい気持ちを持ったいち市民”の視点からのもの。

書き始めたのは「今聞いたこの議論を自分のフィルターを通して言語化して、そこで自分がなにを考えたかも書き記しておきたい!」と思ったから。

ただ、一緒に行った友人はもちろん、その場にいた人と後日話すときらきらした目で興奮気味に感想を語り合うことができたし、そうでなくてもなにかしら批評的な視点を述べたりしてくれた。そうやって、地方の小さな街に暮らす私たちにとってこの催しが相当に濃密な刺激だったことを確かめるにつけ、見られるところに書くことで今後の展開に興味を持ってくれるひとが増えればいいなという思いもわいてきた。

というわけでnoteに。

読まれる用にまとめようとしたものの、あまりに長いので3つに分けて掲載することにした。

ひとつめは、この前置き。
前置きだけでここまで書いてしまったので、お腹いっぱいかなと一旦終わる。

ふたつめは、当日の流れを追った記録。
ところどころ、そのとき自分の頭によぎったことも交えつつ、記録+αくらいのもの。

みっつめは、後日考察。
「準備室」のサイトに掲載された文章なども読みながらディスカッションの内容を再度咀嚼して、自分の考えもまとめる枠。できるだけわかりやすい表現を心がける。

そんな3編にわたる
専門の人たちがした専門の議論。
きっと本当なら考える一員として
開かれているべきいち市民が
そこにいなかった市民へ伝えられたらというノート。

続きは近いうちに。

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