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還暦おやじのスタディアブロードWith ウクレレ58スタディアブロードの目的

スタディアブロードの目的

目的は自分へのご褒美一人旅

 シャワーを浴びながらケンの言った言葉がリフレインしていた。私のスタディアブロードの目的は実際にはなんなのだろう。

家族には東京オリンピックでボランティアをやるために英会話が必要だからと話してきたが、本音を言えば“自分へのご褒美ひとり旅”だ。

 だからこのスタディアブロードでの英語学習の最終目標は、帰国時の機内アナウンスが聞き取れることでいいと決めている。

 そのため英語の勉強よりも遊びを優先できるので、残りの日々も積極的にいろんなことにチャレンジしたいと考えている。

 代官のlineにお礼をポストしてから、イベントのlineにお疲れ様でしたみなありがとうと投稿してから、スクールlineに今日の食事会の事をかいつまんでポストした。

そして私のスタディアブロードの目的は自分へのご褒美ひとり旅なので、マニラでの残りの日々を楽しむぞって投稿してベッドに横になった。

 朝起きてルーティン後にスクールlineを確認したら書き込みだらけだった。それにそれぞれの投稿は長文だった。

 “何があったんだろう??”と文章を読んでみると、夫々がスタディアブロードの目的について熱く語っていた。そうか、私の書き込みに触発されて皆が本音で書き込みしていたのだった。

日本で事業に失敗してマニラに骨を埋める覚悟

 マサシは、サラリーマン時代に得意の英語で役職を掴み皆から尊敬を集めていたが、皆の前で英語での致命的なミスをしたことがトラウマとなって、人前で英語を話すことに恐怖を感じて喋れなくなった。

 そして、早期退職をして夫婦でペンションを始めたが最終的には経営に失敗してしまい終の棲家を求めてマニラに来た。フィリピンの高齢者施設を見て歩くための拠点を探していたが、妻のショウコが何年か前にこのスクールで会ったチャックと待ち合わせすることを望んだのでここに来た。

 フィリピンで永住ビザを取得して年金で暮らし、余生を楽しみながら二人ともこちらに骨を埋める覚悟だ。というものだった。

 妻のショウコはマサシがTOIECで満点のスコアを持っていたことがかえって、責任感の強い彼にとって大きなストレスになっていたと書き込みをしていた。

娘の事で妻と喧嘩して頭を冷やすためにマニラに

 そして、世界の松下ことマッキは娘のカミングアウトで彼女がトランスジェンダーと云う事を初めて聞かされて、妻と口論となってしまった。今思えば妻に「お前の育て方が悪かったからだ」といったのは言い過ぎたようで後悔しているが、当時はどうしてよいか分からずに喧嘩したままここにきてしまった。

 私はショートテンパーで今まで沢山の失敗をして、その都度後悔してきた。日本語で言うところの短期は損気というのは分かっているのに頭に血が上って自分をコントロール出来なくなってしまうことが多かった。

 その一つが高校生の時に不良の友達と他の高校生と喧嘩して、停学になってしまったことが受け入れられなくって短気を起こして、自主退学してしまった経験だ。

親からすれば悪い仲間たちと縁を切らせることも考えて、僕を家の電器屋に入社させ、滋賀県にある街の電気屋さんの後継者を育てる全寮制の学校「松下幸之助商学院」に一年間行かせた。

 そこで僕は人としての在り方、正しいものの見方、考え方を確立することの重要性を学び、別の地域のパナソニックの販売店にて3年間住み込みで働きながら修業をした。

 その後地元に帰ってきたら高校時代の同級生達は大学生活を楽しんでいるのを目の当たりにして羨ましかった。

学歴に代わる英検1級を取得してブランディング

高校中退という学歴コンプレックスがあったのでビジネスでは誰にも負けないと、趣味ももたずに必死で仕事をしてきたおかげでパナソニックの優秀店として何度も表彰をしてもらった。しかし、本音を言うと学歴に代わるブランドが欲しかった。

それで得意の英会話を活かしてボランティアガイドをしていたが、どうしても英検1級を取得してブランディングしたい。

それで、こちらに何度も来て苦手な筆記を勉強し、何回かテストにも挑戦しているがあと一歩のところで合格出来ていないという内容だった。

義母の介護で疲れたので、長期休暇でマニラに来た

ユリの投稿によると彼女のスタディアブロードの目的は介護休暇という事だった。彼女の夫は町工場を経営していてユリも経理を手伝っている。そして、同居している義母の介護をしていることで、彼女は精神的にも肉体的にも疲れてしまっているが夫の親戚や兄弟姉妹などの反対もあって、義母を施設に入れることが出来ない。

彼らの言い分としては、夫が家も会社も含めて財産はすべて一人で相続したのだからその分母親を最後まで自宅で面倒見るが当然だ。
それに嫁が常に家にいるのだからデイサービスを利用するなどして、母の面倒を最後まで看て欲しいとまで言ってきている。

夫の会社は特殊な技術を持っていて大企業からも注文が来るので仕事は上手くいっているが、義母の介護のことで夫との喧嘩も絶えない。

その為夫がこれからは中小企業も海外との取引の為に英語が必要という理由をつけてくれて、年に2回ほどスタディアブロードをさせてくれている。
私がいない間は介護老人保健施設でロングスティとして、一か月間入所して貰っても親戚は文句を言わない。まぁ仕事の為ならば仕方ないかと思ってくれているそうだ。

しかし実際に海外との取引する場合には、顧問の会計士の先生にお願いするつもりなので、ユリも真剣に英語を勉強する気はないということだった。

夫々の投稿に対して様々な質問や意見が飛び交っていた。Lineでもおしゃべりなのは何時ものようにチャックやショウコにユリだった。

そんななかチエのスタディアブロードの目的は何?という質問に対して、チエも応えていた。

私は、以前聞いたことがあったが、知らない方も多かったようで彼女は丁寧に答えていた。

亡き夫との夢を実現するため

彼女は主人との夢を実現する為にここに来た。ご主人は2年ほど前に亡くなってしまって、今は一人娘と娘婿と一緒に暮らしている。

スタディアブロードは初めだけど娘夫婦に背中を押されてこちらに来た。それに費用も娘婿が出してくれた。

それは娘婿が彼女の娘から父親が口癖のように “お父さんの夢は、東京オリンピックでボランティアをやる事。来日した外国人と話がしたい。その為に、僕が定年したらおかあさんと一緒にスタディアブロードにトライして英会話を勉強したい”と言う父の思いに寄り添ってくれたからだ。

 娘婿は小さいころに母親を亡くして父子家庭で育ったので、彼女の事を本当の母親のように大事にしてくれている。

 本音を言うと韓流ドラマの好きな彼女は、英語より韓国語を勉強したかったが、ご主人は嫌韓で韓国も韓流ドラマも嫌いだったのでそういうわけにもいかなかった。

気持ちでは主人と一緒にマニラに来ていると思っている。

しかしこちらに来てみたら英会話の勉強は楽しくないし、早く日本に帰りたいけど娘夫婦の手前、途中で帰国するという事は出来ないし悩んでいた。そんな時に、ユリと料理教室に参加したり、シゲとマックに食べに行ったりしてこちらの生活も楽しくなった。

 ウクレレのイベントも楽しかったので、少しずつ英語の勉強も楽しくなってきている。

 あと2ヶ月こちらにいるので、折角だから少しだけでも英語が話せるようになり東京オリンピックのボランティアも楽しみたい。
 それに、料理が好きではなかったがこちらで作る楽しさを学んだので、日本に帰ってからも料理教室に通って帰国したら娘たち夫婦の食事を作ってあげたい。
 毎日食事を作ることで家での居場所を作りたいし娘婿に恩返ししたい。

スクールに来た目的は日本人と日本語を話したい

 そして、チャックがショウコに促されて投稿した。彼女はマニラに住んでいて、ストレス解消の為と日本語を話したいからこのスクールに来ている。

彼女はフィリピン人の夫と暮らしていたが、死別して今は一人。このスクールは居心地が良いから気に入っている。食事も日本食だし掃除も洗濯もしてくれるし、日本人とも話が出来て日本の最新情報を知ることが出来て楽しいらしい。だから半年に一度ほど来て1か月位いる。それが彼女のストレス解消法なのだそうだ。今回はスクールで5年前に知り合ったショウコと申し合わせて再会できたので楽しい。

マニラに住んでいるのは、ご主人の夢を引き継ぐためだ。それは、彼女のご主人はマニラのスラム街の出身だったが、たまたま知り合った裕福な日本人から援助して貰って技能実習生として日本に行くことが出来た。

日本で農業を学んで帰国し新農法や農業機械を積極的に導入して、生産から販売までの事業を起こして成功した。そして生産した野菜などを使った中華料理店も経営することが出来た。

ご主人は、同じ境遇で暮らしているスラム街の子供たちを支援したいと考えてボランティアで日本語を教えたり、技能実習生として日本や韓国に行けるようにサポートしていた。それで、貧困から抜け出せた人達も多い。

そしてご主人は彼女が生きてゆくのに十分なお金を残してくれただけでなく、これからの人生の生きがいまで残していってくれたので感謝している。

自分で出来ることは少ないけど、主人が生きている時からやっていたように、家で働いてくれているメイドさん達に日本語や英語を教えている。

日本語や英語が出来るメイドは賃金が高く貰えるから日本語が喋れるようになったらもっと違った仕事に就くことが出来るようになる。実際にそうやって、人生を好転させた人達も沢山いる。

フィリピンでは英語は公用語だがスラム街の子供達の中には、十分な教育を受けられない子も沢山いて、英語を話せない大人も沢山いる。それが貧困の連鎖を生んでいる。

フィリピン人は基本的に貯金をする文化がないから、手元にお金があれば欲しいものを次から次へと買ってしまう。そしてフィリピン人はお金を持っている人がサポートをするのは当たりまえという認識なのでお金に困っている仲間がいれば援助するし、自分が仲間を助ける代わりに、自分が困った時もきっと誰かが助けてくれると信じているから努力しない。

 そんな現状を身近なところから意識改革させてあげて、貧困から抜け出させてあげたいと日々頑張っているので、ストレスが溜まってしまう。その為、定期的にこちらで解消しているということだった。

このスタディアブロードの目的は何?については、何日もlineで投稿が続いていた。途中からはサトエもケンもメンバーに加わったことで、新たな展開になった。

 それは、サトエが2週間の体験入学を終えて帰国することになった時の投稿が発端だった。

専門学校を卒業したら地元の観光協会に就職が決まっている

 サトエは、専門学校を卒業したら地元の観光協会に就職が決まっていて、入社後は会社から費用を出して貰って半年間スタディアブロードすることになっている。

 そのためこちらのスクールとセブのスクールとに体験入学をすると決めていた。

このスクールはONE ON ONE(日本語だとマンツーマン)でセブはスクール形式という違いがあるのでどちらが自分に合っているか見極めたいというものだった。

 それに対して色んな意見が投稿されて議論になったが、私は、自分がやってほしい授業をプランニングして先生に頼むならONE ON ONEが良いと思うと投稿した。

 サトエはその言葉にすぐに反応して、詳細について質問をしてきた。

 私はサトエが観光協会の職員として英会話を学びたいのなら英語によるツアーに参加して、英語の表現方法などを実際に学ぶことが良いのではないか。それにフィリピンの観光協会で研修させて貰ったらと提案した。

そう考えるとマニラには観光スポットがないので、セブの方が良いのではないか。尚、私はスタディアブロードを計画し、色々調べた時には、セブにもONE ON ONEの授業を行っているスクールはあったので、チェックしてみてと投稿した。

 私の投稿にサトエはチェックしてみますといってその話題は終了した。

TOIECで900点以上のスコア保持者となり人生を変えたい!

 Lineへの書きこみで一番多かったのは、ケンの投稿に対するものだった。

 彼は会社を辞めてこのスクールに来たのでTOIECで900点以上のスコア保持者となって、人生を変えたいというものだった。

 彼は4人部屋で生活していて他の3人は授業がない日は遊びに行ったりしているが、彼はそれには参加せず土日も8時間の特別授業を受けている。

 特にやりたい仕事はないが一流企業に入社して、英語力を活かして仕事をしたい。しかし、彼は人と話すことが得意でないので営業は出来ないと考えているという事だった。

 それに対しては、私は若いうちにじっくりやりたいことを探すのが良いよねと大人の書き込みをした。

 しかしマサシは何時もの彼らしくなく英語は道具なのでそれで人生を変えることは難しいと思うと辛辣な意見を投稿し、合わせて英語の勉強よりも自分が本当にやりたいことを探すことが重要でありそのためには、色々な人と接することや積極的に外に出てゆくことが必要だと書き込んだ。

 マッキは自分の会社の会計士の例をあげて投稿した。それによると彼の会社の会計士は、資格を取ればお客が頭を下げてどんどん仕事の依頼にやってくると考えていたというものだった。

しかし世の中には会計事務所は履いて捨てるほどあり中小企業には、夫々に顧問の会計事務所が既にある。

資格取得は他の会計事務所と競争するためのスタートラインに立ったことに過ぎない。そこからは他の事務所と違う得意分野を持たなければ勝負にならない。

彼の会社は従妹いとこからどうしてもと頭を下げられて仕方なく、甥っ子に顧問になってもらっているが、会計処理の事しか出来ないので不満に感じている。

それというのも甥っ子は社会の動きなどにも関心がないので、世間話も出来ないし経営に関するアドバイスも出来ない。

息子に言わせれば会計処理だけならパソコンがあれば充分で、入力も妻が出来るので会計士は毎月来てくれなくても良い。

決算もパソコンソフトを使えば自分たちで出来るので、会計処理だけの会計士には費用を払うだけもったいない。

もし断れるなら顧問契約を解除して、以前の会計士のような幅広い人脈や広い知識を持った先生に頼みたい。

マッキとしては、甥っ子が新規顧客を獲得することが出来ないようだから、出来るだけ顧問契約を続けてあげたいと考えているが、会社を息子に譲ったらそうはいかないだろうと考えている。

もし甥っ子がTOIECで900点以上のスコア保持者になっていたら、海外進出を計画している中小企業に紹介できるのだが、甥っ子は英語を勉強する気はないようだ。

マッキが言いたいのは、英会話は他の専門的な能力とセットで初めて武器として生きるということだろう。

彼は地元の観光スポットで外国人の為のボランティアガイドをしているが、その場合でも歴史的背景などを説明できる知識やスキルがない人は英会話が堪能でも役にも立たないと書き込みをしていた。



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