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『SHHisはイカロスの翼で飛翔する』 2022/04/30

SHHisは16歳の「七草ななくさにちかさん」と、24歳の「緋田美琴あけたみことさん」の2人のユニットで、283プロで2人でユニットを組んでいるのは現在、彼女たちしかいない。

2021年3月21日に追加発表されたユニットで、他とはかなり毛色が違い、話の内容がかなり重たいことも散見される。その分、アイドルに対しての姿勢や本気度はどのユニットよりも気持ちが入っている。

特に「七草にちかさん」は283プロ事務者のアルバイト「七草はづきさん」の妹で、「緋田美琴さん」は元々は他事務所から283プロに移籍してきた逸材として描かれ、実際にダンスやアイドルとしての素質は作中でもピカイチ。そして、「緋田美琴」というアイドルは、逆に言えばアイドルの才能以外が明らかに欠如している。

レッスン室に何時間も籠って食事をするのを忘れたり、周りが見えなくなったりと「緋田美琴さん」は普通にヤバい。「七草にちかさん」も初手でプロデューサーに私をアイドルにさせろ!と脅迫してきたので普通にヤバい。恫喝する女子高生。

一番面白い対立構図は七草にちか→緋田美琴への憧憬と、緋田美琴→七草にちかへの無関心さの対比だろうか。アイドルとしての実力が抜群な緋田美琴への劣等感と、七草にちかの人間性に興味が薄いという関係性なので仲はまったく悪くない。斑鳩ルカには関係ない。

実際にはどちらにも違った良さがあって、一般ウケが良いのは「七草にちか」の方である。ダンスなどのレッスンに今まで没頭してきた緋田美琴さんには、他者の目線から見ると、社交性や取っ付きにくさの観点で扱いが難しいようだ。

アイドルとしての経験が浅いが、緋田美琴に憧れ、相方として認められるように日々邁進している「七草にちかさん」と、自分の実力をもっと高めようとして相方の七草にちかさんのことには、あまり肩入れしていない「緋田美琴さん」の構図が美しい。
美琴さんは自分とか他人に興味がないんじゃなくて、アイドルとしてのレッスン以外にリソースをほとんど割くことをしないし、それを何とも思ってないのが問題。

一言で表現するなら彼女たちは「不安定」。その煌きが燦然と見える時もあれば、一瞬でもう再起不能なほどに脆く、崩れそうな時もある。これは気持ちとか方向性の問題が、多くのウェイトを占めてるので絶望的ではないんだけど、いつどっちに傾いてもおかしくない。それでも、お互いの目的のために今は一緒に運命共同体として活動している。

タイトルの「イカロスの翼」とはギリシャ神話の「イカロス」の逸話で、蝋の翼を身に着けて飛行していたが、太陽の熱で翼が溶けてそのまま水中へ落下してしまったという話を引用した。それほどに不安定で、今のままでは飛翔することなく水中に落下してしまうかもしれない。

でも、やっぱりそれが美しくもある。「蝋の翼」はそれはそれで完成されている。もし、お互いの気持ちや覚悟が固まった時には初めて本当の意味で「飛翔」することが出来ると思う。もしくは、水中に溺れてからが本当の勝負なのかもしれない。

個人的におすすめしたいのが「SHHis」の『Fly and Fly』という曲だ。かなりK-POP調で実力派アイドルという肩書きと歌詞がリンクしているので、聞く度に彼女たちの不安定さや苦悩などが垣間見えるが、それでもSHHisとしての力強さや野望をひしひしと感じる。

次はイルミネーションスターズ編で。また今度。


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