辛い時に筆を取る。

辛い気持ちを吐き出したいとき、
どうしようもない時に私は
筆をとってしまうらしい。
決めつけは良くないかもしれないが、
嵐のように渦巻く気持ちを飼い慣らせない時に、
私は言葉を紡いでいる。
私のことばは全て、
私のものだけれど、
私だけでは産まれない。
あなたがいて、
あの人がいて、
重く湿った残暑の空気があって、
そういう中で産まれる。

愛とは、恋とは、何なのか。
ラジオで、
「作家にとって現実世界とは二次的なものでしかなく、物語の世界こそ本当の世界だったりする」
という言葉があった。
そうか、私は本物にしたいものを
本物にしてしまえるのか。
もう会えないであろう人を心の中に映し出す、
その人の かげ、かたちが色濃くなっていく。
「私を本物にしても良いんだよ」
と囁いてくる。
恐ろしい、と感じた。
けれど、その選択肢があることに私は驚き、感動し、安堵した。
ずるずると、自分を追い込む、「自分」に引きずられていくとき、
落ちるところまで落ちて、抱き合わなければならない。
共に、抱き合い、いたわり、刺し違えながら落ちていく。
底に着いても、身体がめり込んでいく。
もう息ができない、と思ったときに、
ぷつんと意識が切れ、
眠りに落ちる。
目覚めたとき、少し上のところにいる。
私の体の何かが死んで、
何かが産まれたのだろう。

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