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『日本人女性を世界で活躍させたい!そして日本を世界一へ!』 デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 金澤 靜香 さん

日本のベンチャー企業を積極的に海外へ送り出す支援をするかたわら、女性起業家に特化した支援を行う金澤靜香さん。女性らしい美しさと柔らかさのある一方で、海外でもバリバリ仕事をこなす実力者である彼女は、どんな想いで今の仕事をするようになったのか。その背景と未来のビジョンを伺いました。

プロフィール
出身:東京都
活動地域:東京都・ニューヨーク
経歴:アメリカの会計大学院を卒業後、ニューヨーク・ロサンゼルスの大手監査法人にて、米国税理士として日系企業米国現地法人の税務申告書作成・税効果会計アドバイザリー業務に携わる。14年間の海外生活を経て日本に帰国。海外で感じた問題意識からデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社(以下、DTVS)に入社し、ベンチャー企業の海外進出支援や女性起業支援を積極的に行い現在に至る。
座右の銘:明るい笑顔と大きな声、それと多少の知性があればたいていのことはうまくいく

記者 よろしくお願いします。

金澤  靜香 さん(以下  金澤  敬称略) よろしくお願いいたします。

『日本の国際競争力をトップにあげたい』

Q .    金澤さんが今目指されている夢はどのようなものですか?

金澤 私の目指す夢は日本の国際競争力をトップにあげたいということです。その手段として、日本で何が必要か考えたときに私ができるのは、日本の眠った力とされる女性による経済活動を活性化させることでした。DTVSはベンチャー支援に特化した会社です。その中でも私は、女性の経済力向上や女性の社会進出が伸び悩んでいるという現状課題の解決に向け、女性起業家の海外展開支援に注力しております。

記者 素晴らしい夢ですね!私も、女性や若者が立ち上がることで、是非とも日本に世界一になって欲しいと思います!

『スキルと自信をつけるアクセラプログラム、資金調達を含むエコシステム構築』

Q. その夢に向けて実践されている女性起業家の支援ですが、具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

金澤 自ら行動している女性に対する支援を心がけています。知識のある傍観者ではなく実際に行動している女性起業家に、具体的な成長のために何が必要かということをアドバイスし、必要であれば実際に海外企業との交渉の場に同行し、商談のサポートをするということも行っています。

またグローバル比較調査で日本の女性起業家成長の課題として挙げられているのが、ネットワーク不足、スキル不足、ロールモデル不足という点です。そして事実日本には女性起業家が集まれる場所、スキルを学べる場所は極めて少ないです。こういった課題に対し、東京都主催、DTVSが運営事務局を務める 女性ベンチャー成長促進事業 APT Women (Acceleration Program in Tokyo for Women) では、日本全国から選抜された、自ら行動する女性起業家を対象にアクセラプログラムを行っています。APT Womenではベンチャー企業のスケールアップに必要な基礎的知識を、専門家による講義を通して学んで頂く事に加え、女性起業家特有の課題、例えば自分自身や事業への自信が無く他者からのフィードバックを恐れてしまう点や、人を巻き込むことが男性起業家よりも苦手な点などを、もっと前に出て自信を持ってほしいと背中を押しつつ、海外展開に必須の基礎的スキルや知識を学んでいただきます。また同プログラム内では、資金調達のためのVC向けピッチ会や、すでに海外展開を成功させている女性起業家による体験談の共有などを通し、各自事業の海外展開準備を進めて頂きます。また定期的なAPT Women卒業生の同窓会開催など、上昇志向の女性起業家たちのネットワーキングの機会を提供し、女性起業家のエコシステムを構築するということを、この1年は注力して来ました。

記者 なるほど。資金調達はイメージしやすいのですが、自信をつけるというところはなかなか難しいと思います。そこはどのような形でされているのでしょうか?

金澤 個別メンタリングを隔週で行っており、ベンチャー企業に並走するメンターをアサインし、個社に応じた課題解決に努め、着実な成長を促すことで自信に繋げて頂きます。また講義に先輩女性起業家を招き、自信を失いそうな時の克服法など、具体的な体験談もお話しいただきます。女性経営者の傾向として、資金調達や市場性を過小評価したり、ご自身の事業にいまいち自信を持てずにいる点があります。ですので、自信を持って事業を推進できるよう、良いアイデアには共感し、褒めて応援するということは、常日頃心がけています。女性は共感力が高いので、理解し背中を押す仲間がいると、力強く自走をはじめます。そういった特性を抑えた女性特化型支援を増やすことで、日本の女性起業家は量的・質的双方に厚みを増すと信じています。

記者 共感は大切ですね!支援を通して起業家たちは自信を身につけられますか?

金澤 そう認識しています。例えば自身の事業計画を人に話すことで、分散していたアイデアが整理され優先順位をつけられることは多々あります。ネガティブフィードバックを恐れず事業計画を第三者に話し、意見に耳を傾け、事業計画に反映させることが出来る女性経営者は、加速度的に成長しています。結果的に自信にも繋がるわけです。

記者 そんな蓄積があると変化していきますね!

金澤 そうなんです!ひとたび自信を身に着けると女性はものすごく変わります。目の輝きと目力が増し、表情が自信に満ちて、アクセラプログラム終了後には海外展開や資金調達など、目覚ましい成果を出していただいています。ベンチャー業界は世界的に見てもまだまだ男性の多い環境ですので、その中で共感を得て、周囲に応援してもらうノウハウは特有です。女性特化型のアクセラプログラムや支援家は必要で、今後も継続的に支援することが重要だと日々感じています。

記者 女性起業家を取り巻く環境が元気になるイメージがわきます。これからが楽しみですね。

『日本人としての誇り、ガラスの天井』

Q.    女性起業家の支援を通して日本の競争力をトップにしたいと思われるまでの日常は、どんなことに着目されて過ごされていたんですか?

金澤 私は大学院で留学して以来14年間アメリカ・イギリスで仕事をしてきたのですが、日本人として日本に住むということはこんなにも恵まれているのかと、海外に住み初めて実感しました。アメリカは移民の国で制度・文化的に外国人が住みやすい国のひとつですが、それでも当初は大変な苦労をしました。電話で問い合わせをし、担当をたらい回しにされ2時間待っても解決しないのは序の口で、真冬のニューヨークで突然お湯が出なくなり友人宅に数日シャワーを借りる生活を強いられるも、マンションの管理会社は補償しないどころか謝罪もない、修理屋がいつ来るのかも分からないなど、日本では経験したことの無い「ありえない」をたくさん経験しました。医療費も非常に高額で、具合が悪くなってもなかなか病院にいけません。大手企業が加入する良い保険に入っていても、病院の敷居は高かったです。救急車を呼ぶと数千ドルの請求が届くので、保険に入っていない方は倒れながら「救急車は呼ばないでくれ」と言う世界です。日本人の健康長寿は国民健康保険で守られ、当たり前に受けていた基本的な権利は世界ではちっとも当たり前でないことを、外に出ることで初めて気づき、日本への感謝や尊敬の念が増しました。

余談にはなりますが、友人の中にはとても大変な思いをしながらアメリカに住む方もいて、イラクからの移民の友人は9.11の直後、自分はトルコ人だと言っていました。一部の親しい友人にはイラク出身だと伝えていましたが、それを知られると迫害の恐れがあるから言わないでねと必ず念を押していました。世界には母国を隠しながら生きねばならぬ人、母国への誇りを決して口に出来ない人もいるのだと初めて知り、日本という世界的に信用の高い国に生まれて私は大変ラッキーなのだと思い知りました。日本人として日本に生まれた時点で、世界的には恵まれた一握りであり、海外で戦うにはアドバンテージであることを、日本人にはもう少し認識してもらえるといいなと思います。

記者 中にいては分からなかった日本の良さが、外から見たからこそ分かったのですね。

金澤 女性活躍に関しては、ガラスの天井という有名な言葉があります。それに関しては私も日本帰国後に随分考えさせられました。自分自身もそうですが、周囲の大企業で働く女性、起業家たちの声を聞いても、女性の発言権が弱く、昇格昇給しにくいなど、社会でのやりにくさを感じる方は多いです。どうしても本人の実力ではない点で正当な評価を受けられない、という日本の現状は残念な課題であると思っています。その息苦しさの中で、活躍を望まない女性も少なくないことも目の当たりにしました。

一方で考え方を変え語弊を恐れずに言うと、戦後日本の経済復興はほぼ男性のみに担われ、人口の半分の経済活動によりアメリカに次ぐGDPにまで成長しました。これまで社会で活かされなかった力の半分、つまり女性たちの経済活動が活性化すれば、本気で世界一目指せると思っています。これほど伸びしろのある国は無いとワクワクすらします。

だからこそ私は、日本人女性に自信を持って社会で活躍してもらい、その後は海外でも活躍してもらいたいと思います。日本人女性は良い結婚相手の候補と欧米で認識されています。おしとやかで素直で従順な日本人女性の特性は素晴らしく、私もそんな日本人女性の美徳に癒される一人ですが、日本人女性はそれだけじゃないですよね!しなやかさの中に賢さと強さがあること、信念を持てば海外でも活躍できることを、今後世界中に証明したいです。そのような日本人女性のロールモデルたちを、我々の支援の中からどんどん排出していければ最高です。

記者 そうですね、従順で素直で楯突かないけどそれだけじゃありませんから!って言いたいですね!日本人女性の良いロールモデルが生まれて欲しいです。

『世界でのプレゼンスを持てるはずなのに、海外でのビジネスのコツを知らないだけで、評価されないことが本当に悔しい!』

Q.    どんな経験があってその夢を持つに至ったのか、その一番最初のキッカケを教えてもらっていいですか?

金澤 欧米での日本人の印象は、概ね「真面目」「信用できる(時間を守る・ビジネス交渉で嘘をつかない)」「あまり話さないけどナイス」です。日本をよく知らない方でも、自己紹介時に日本を肯定してくださる方は多く、それが母国への誇りと、応援する気持ちに繋がりました。また、様々な国籍の同僚たちと働く中で、日本ほど国民が高い水準の教育を受け、平均層が粒ぞろいに優秀な国民は無いなと感じました。また日本人の優れたチームワーク力にも注目です。人類史では、賢いネアンデルタール人、身体能力の高いクロマニョン人が滅び、そのどちらも劣っていたホモサピエンスが生存競争で勝ち抜いたのは、コミュニケーション能力が高くチームワークが出来たからだと言う説があります。私は海外でも日本でも働いているので、日本人のチームワーク力は世界レベルだと自信をもって言えます。世界でのプレゼンスを日本はもっと持つべきであり、日本は世界一のGDPを狙える国だと本気で信じています。

しかし日本流のやり方そのままでは世界には通用しないのも事実です。海外でのビジネスの手法を知り、自身と競争相手のそれぞれの強み・弱みを把握する必要があります。海外展開の基礎的なノウハウを知るだけで、日本企業の海外進出はぐっと成功率が高まります。そのノウハウを知らないがために、欧米からクライアントの日系企業が撤退してしまうのが悔しく、悲しく、その思いがDTVSに転職した原動力となります。ニューヨークのタイムズスクエアや、ロンドンのピカデリーサーカスにある日系企業の看板が、次々に日本以外のアジア系企業のものに変わっていくのを目の当たりにし、日本への帰国を決意しました。今はやりたかった日系企業の海外展開支援と女性支援に携われているので仕事にやりがいを感じています。

記者 自分でも誇りに思うし、外国の人も認めているのに、評価されず撤退していくというのは本当に悔しいですね!それが今のお仕事や今後の夢に繋がっているのですね。

本日はありがとうございました。

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金澤さんと、東京都主催APT Womenに関する情報はこちら
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●APT Women
https://apt-women.tokyo

■編集後記
インタビューをさせていただきました岸本 & 黒田です。金澤さんとお話してみて受けた印象は、言葉だけにとどまらない豊かな表現と、ひとつひとつのとても丁寧な言葉使いから、人として魅力があってポテンシャルの高い方だなということでした。そして時々垣間見える無邪気なところが、より一層魅力を引き立てているように思えました。またアメリカに長くいらっしゃったことからアメリカがお好きなのかと思えば、日本に対する誇りと悔しさをしっかりと持たれていて、とても感心しました。これからは女性が活躍する時代なので今まで以上にご活躍いただけることをお祈りいたします。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36


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