「優しい」とは

今回は「優しい」について勉強する。みんなに聞くが、「優しい」とはどのようなイメージがある?
「誰に対しても親切でいること」か。成程な。あ、これはテストに出ないからメモを取らなくていいぞ。取りたければ取ってもいいがな。他には?
「どんなことで受け入れて拒まないこと」ね。そういうのもあるか。他は?
ははは、「相手にとって都合がいいこと」か。先生は嫌いじゃないぞ、その意見。

一通り意見が出たな。さて、次の質問にうつろうか。今回は多数決だ。
此処に母親と子供がいたとしよう。子供は所謂問題児で手が出る子という設定である。子供が母親に対して暴力を振った時、母親がこの行動を許す行為は果たして君達がいう「優しい」に当てはまるだろうか。当てはまると思うものは手を挙げて欲しい。
おや、あまりいないね。「どんなことでも受け入れて拒まないこと」が「優しさ」と結びつくのならこれも含まれるのではないのかい?
「暴力は注意すべき。これは躾の放棄だ」ね。暴力が駄目なのは他者に迷惑をかける行為だからだよね。「暴力を振るう人間は相手にとって都合が悪いから、暴力を振るわないように教育をすべき」ってことかな。
なんだい、その嫌そうな顔は。ははは、先生は意地悪をしたつもりはないぞ。

次の質問にうつろう。
優しい人間がいたとしよう。今回の優しいは辞書に書かれていた「穏やかで、好感が持て、思いやりがあり、心が優しい人間」というのを前提にするぞ。誰から見ても優しいにカテゴライズされるこの人間が新しく新社会人として初舞台に立った。さて、この後どうなったと思う?
「そんなの分からない」だと? もっと想像力を働かせろ。まぁいい。この人は一ヶ月で駄目になった。
いじめとか会社がブラックだったのかって? 「そうじゃない」って言ったら君達は驚くかい?
ははは、そんな顔をするなよ。安心してくれよ、こんなの大人になったらそこらへんにごろごろいるぞ。

さて、「優しさ」について色々とみんなと一緒に考えてもらったが、みんなが言う「優しさ」を持つには実はあるものが必要なのだ。

それは、「強さ」だ。

強さのない優しさは火がつかないマッチや刃がないナイフみたいなものだ。「優しさ」は「強さ」を伴うことによって初めて「武器」になるのだ。「優しい人間」というのがどんどん生き辛くなっているのは「優しい」しか持っていないからだ。
私は、いや此処の学校の全教師は思っているのだよ。君達には本当の「優しい」人間になってほしいとね。

では、どうやって「優しい」を身につけていくか。まずはそうだな、色々な経験をするといい。勉強でもいい、友達と遊ぶでもいい。とにかく色々だ。そして、それらを通して自分に何が出来て何が出来ないかを理解し把握しておくといい。なに、全てをこなせる人間などそんなにいないから安心しろ。
あとはそうだな、「無理」をしないことだな。自分の限界点を理解したほうが自分のためにも相手のためにもなるぞ。
あ、そうそう。健康でいることも大事だからな。

今、「先生、適当だな」って思っただろう。そりゃあそうさ。だって先生は優しい人間ではないからな、ははは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?