マガジンのカバー画像

詩集 ほら、あなたの隣にも

14
運営しているクリエイター

記事一覧

あやとり

あやとり

残り毛糸の赤色で
小指、親指、中指と
まじめな顔して拾います

どこまで取れるかやってみな
あなたの未来はあやとりみたい
こんがらがったらおしまいかもよ

残り毛糸は運命の糸
うまくできればおなぐさみ
だれかが両手を叩いてくれる

どこまで取れるかやってみる?
やってみないと分からない
こんがらがったらおしまいだけど

残り毛糸は運命の糸

恐いもの見たさ

恐いもの見たさ

ゴジラが暴れるスクリーン
楽しく見ているみんなは知らない
小さな小さな幼子は
タンスの陰で震えてる

ガメラが飛んでるスクリーン
身体を震わせ幼子は
小さな両手で両目を隠す
だけど ほんとは薄目を開ける
指と指の隙間がいっぱい

七五三

七五三

神社の境内 二匹の狛犬
祝いのあの子を睨んでる
大人はちっとも見えないの

小さな神社の守り番
祝いのあの子に睨みを利かせ
大きな念を送ってる

片手に大きな千歳飴
祝いのあの子はもう泣きそう
それでも必死に我慢の子

きれいなおべべのあの子はもう
涙はきれいに拭きました
一つ大人になりました

奴がいた

奴がいた

雨戸を開けるときに奴は私の指をかすめた
見えないことをいいことに
奴が私に触ってきた

私は慌てて窓から離れた
奴はさっきからそこにいたらしい
障子の陰から足だけが覗いていた

私は雨戸を開けたかった
だけどそこには奴がいる
どうしよう

誰かがいれば助けを求めるのに
誰もいない
どうしよう

私は慌てて棒きれを持ってきた
けれども奴はもう姿を消していた
だけど雨戸が開けられない
奴が物陰から現れ

もっとみる
孤独を愛しちゃおかしいの?

孤独を愛しちゃおかしいの?

夜が好きだといけないかい
ネガティヴな奴だとつつかれる
独りが好きだとおかしいかい
独りじゃなければそれでいい?
それができない人もいる
できないことにくよくよすれば
それはなおした方がいい
けれども平気な人もいる
だけどそれはおかしいかい
誰かといるのは嫌いじゃないけど
独りでいてはおかしいかい

詩集・ほら、あなたの隣にも から 酒

詩集・ほら、あなたの隣にも から 酒

酒を飲んでいるときにゃ
側にあなたがいるようで
見えないおちょこに注ぎます

酒の香りに包まれて
時は一気に逆戻り
楽しい想いに浸ります

酒の味にはちとうるさい
理屈をこねる癖さえも
すっかり移った私です

酒を飲んでいるときも
酒に飲まれちゃいけないと
酒を勧めた人がいた

詩集〝ほら、あなたの隣にも〟から 大樹と雷雨のはざまで

詩集〝ほら、あなたの隣にも〟から 大樹と雷雨のはざまで

赤い小さな花びらが
雷雨と風にあおられる
大樹に生まれた青葉の群れは
強い心を持ってるが

赤い小さな花びらは
びくびくしながら咲いていた
大樹に生まれた青葉の群れは
赤い小さな花びらに
僕が守ると言っていた

それを聞いてた雷神は
そうはいかぬと暴れ出す
大樹と雷雨の戦いを
そっと見ていた赤い花

争い好かない赤い花
自らひとひら舞い上がり
一心不乱に空頼み
やはり戦さは続きます

争い好かない

もっとみる
〝ほら、あなたの隣にも〟から 夜咲く花

〝ほら、あなたの隣にも〟から 夜咲く花

(台湾民謡「雨夜花」のメロディに乗せて)

見知らぬ街の灯に 照らされる姿が
遠ざかる風のように 小さく消えてく

時計のリズムにこの身を乗せて
待っているのは静寂(しじま)の中よ

南の窓から見上げてみれば
きっと三日月が伝えてくれる

ほのかに照らされる小道を行けば
きっとどこかに小さな花が

夜咲く花は優しい花よ
夜咲く花は悲しい花よ

夜咲く花に涙をあげて
夜咲く花を咲かせてあげて

詩集〝ほら、あなたの隣にも〟から  暑い五月の昼下がり

詩集〝ほら、あなたの隣にも〟から 暑い五月の昼下がり

春がいやだともがいてる
さよならするのを嫌ってる
五月の終わりの昼下がり
もうすぐ今年も夏来たる

春がいやだともがいてる
少しはここにいさせてと
さわやかな風を送り込み
必死になってもがいてる

春がいやだともがいてる
まだまだ春の花開く
だから私はここにいる
花がしおれるその日まで

また来年もいらっしゃい

詩集〝ほら、あなたの隣にも〟から  美味しいラーメン

詩集〝ほら、あなたの隣にも〟から 美味しいラーメン

出前のラーメン
大人も子どもも
同じ器に同じ量
ちょっと食べたら腹一杯
「兄ちゃんにやんな」と母が言う
強情張ったな ちっちゃいくせに
小さな身体でみな食べた

〝ほら、あなたの隣にも〟から 夢

〝ほら、あなたの隣にも〟から 夢

夕べの夢はなんだっけ
楽しい夢だと思ったな
朝げの前に言葉に出せば
夢がホントになりません
ここまで言葉が出てるけど
食べ終わるのを待ってます

〝ほら、あなたの隣にも〟から おじいちゃん

〝ほら、あなたの隣にも〟から おじいちゃん

思い出すのはおじいちゃん
「しんせい」吸ってたおじいちゃん
思い出すのよ おじいちゃん
白髪がピカピカおじいちゃん

使いで板チョコ買いに行け
お駄賃代わりのチョコかけら
期待を胸にお菓子屋さん
お駄賃代わりのチョコかけら
目の前チョコンと正座をしたけど
チョコのかけらは
おじいちゃんの口の方がいいってさ

詩集☆〝ほら、あなたの隣にも〟 から がれきの下で

何でも経験した人は
生きる意欲が目に見える
きれいな心に宿るのは
想像絶する苦労の痕か
がれきの図書館 背景に
光輝くその姿

カメラはそんな生きた心を
いつでもどこでも撮るんだね
生きた心を撮るんだね

詩集 〝ほらあなたの隣にも〟から   風鈴

詩集 〝ほらあなたの隣にも〟から 風鈴

静かな風鈴鳴りません
寒い季節は窓閉めて
冬眠している鈴の音

めったなことでは鳴りません
ここは西向き風もなし
役目を果たさぬその姿

今日は気候も良いようで
窓に垂らした風鈴も
久しぶりねとご挨拶

雀の鳴き声誘われて
風鈴の音に応えてる
明日も鳴るといいのにな