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限界独身オタク男性が自作キーボードキットのErog42を組み立てた話

キットを組み立てて慣れない配列とキーマップに四苦八苦する話。

自作キーボードとは

2017〜2018年頃から一部のITエンジニアを中心に流行り始めた文化で、文字通りキーボードを自作するというものです。黎明期は自分で基板やケースを起こしたり、オープンソースの基板データやケースのデータを用いて発注を掛けるとか、手が出しにくい状況だったんですが、最近は必要なものがほぼ全部含まれた後は組み立てるだけのキットが多く出回っていて、かなり気軽に始められる様になってます。

2018年〜の広まり具合はとても凄くて、2020年の夏には「マツコの知らない世界」でも取り上げられたり、秋葉原に専門店がオープンしたりするほどになりました。漫画家の大沖先生もどハマりしていたので、一部の東方好きは見たことがあるかもしれません。

自作キーボードは市販品とは大きく異なる仕様を採用しているものが多く、代表的なところで以下のものが存在します。

・左右分割
・格子配列
・エルゴノミクス配列

また、キーボードのスイッチと、それに被せるキャップを自由に選べるので、自分好みの打鍵感のスイッチやキャップを選ぶ楽しさもあります(沼の入り口でもある)。

今回組み立てたErgo42について

びあっこさんが作成したキットで、

・左右分割
・格子配列
・4行 × 7列 の56キー

という仕様になっています。

「名前に"42"ってついてるのに56キーなのかよ!」と思うかもしれませんが、この"42"という数字はびあっこさん曰く「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」とのことで、どうやらSF小説の「銀河ヒッチハイクガイド」のオマージュらしい。僕は読んだこと無いのでよく分からない。

数あるキットの中からこれを選んだ理由は、

・左右分割
・格子配列
・キー数が少な過ぎない
・セールで安くなってた

辺りだったと思うんですけど、ぶっちゃ忘れました。何故なら買ってから2年近く経ってたので(買うだけ買って放置していた)。今だとTowelというバージョンになってるみたいですね。細かい仕様違いが複数存在してるみたいで、参考にした組み立て記事と一致しない箇所があってちょっと困ったのは秘密。

ちなみに、マツコの知らない世界でも取り上げられた人気モデルらしい。

キースイッチとキーキャップ

上でも書いた通り、自作キーボードは使用するキースイッチとキーキャップを自由に選ぶことが出来、それが楽しみの一つにもなっています。

キースイッチは打鍵感や音等に影響があり、キーキャップは見た目や指を置いた時の感触等に影響がああります。どれも重要な要素なので各社から様々な種類のものが大量に販売されていますが……あまりに多くて入門者としてはどれを買えばいいのか分からない!

困った時の定番品、ということでまずキースイッチはCherryMX互換と呼ばれる規格品から選ぶことに。これだけも大量にあるのですが、低価格帯の定番であるGateronブランドの、45g/リニア/静音のモデルと35g/リニア/静音のモデルの2種類を組み合わせて使うことにしました。

グラム数は押下に必要な重さ、リニアというのは、キーを押下した時にスコッと下まで下がるタイプのことで、他には途中に軽い抵抗があって押した感が存在するタクタイルや、クリッキーと言って押下時にカチッという音が鳴る様なものが存在します。

静音は文字通りの意味で、押下時に鳴る音を小さくしたモデルです。自作キーボード向けのキースイッチはほぼ全て機械式と呼ばれるものなのですが、(リニアやタクタイルだったとしても)押下時に音が鳴るのが特徴です。この音を楽しむために機械式スイッチを使う人も居るくらいですが、職場で使用したかったので今回は静音タイプを選びました。Gateronの静音モデルはあまり打鍵感が良くないという感想を何件か見たのですが、まあ音量には代えられないなと我慢することにしました。実際に使った感想としては、打鍵感が良いとは言えないけど、そう悪いもんでも無いなって感じでした。

と、キースイッチに関してはサックリと何を使うか決まったわけですが、困ったのはキーキャップです。

キーキャップはキースイッチ以上に種類が多く、それだけでも選ぶのが大変なのですが、少量生産やGroupBUYが多いので欲しいと思ったものが売り切れで購入できないことがほとんどです。ショップに在庫があってすぐに購入出来るものは生産数が多いものというよりは単純に人気が無いものが多く、デザイン面が自分の好みにも合わないものばかりでした。

在庫切れのキーキャップでも待ってれば入荷されて在庫が復活することもあるのですが、正直いつ入荷されるか分からないものを待つのも辛かったので、当時在庫があったモデルの中から一番マシだった奴を選びました。

これです。本当はもっとカラフルな奴だったり、刻印が日本語キーボード用だったりする奴が欲しかったのですが、まあ入手出来ない以上しょうがないですね。これはこれで良いものだったので買い替えは多分しないと思います。キーキャップも高価いし。

組み立て

楽しい楽しい工作のお時間です。

内容としては基板へダイオードやスイッチ、マイコンを半田付けしたり、アクリル製のケースにハメ込んで行ったりするだけなので半田付けの経験がある人なら、ネットに転がってる作例を参考にしながら組めば楽勝だと思います。実際楽勝でした。ダイオードの足を曲げるのがちょっと面倒だったくらい……?

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これだけの数のダイオードのはんだ付けが必要

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ダイオードはこうやって曲げました(ピンぼけ)

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ダイオードだけじゃなくてキースイッチのはんだ付けも必要です

半田付けの経験が無い人にとっては量の多さも相まってちょっと大変かもしれません。特にマイコン周りがちょっと大変だと思います。そういう人は半田付けの練習をしてから挑戦したり、組み立てサービス(そんなのもある)を使うとかすると良いと思います。

マイコンと言えば、自作キーボードに使用されるマイコンはProMicroというArduino互換機なのですが、これの基板に付いているUSB-Microのコネクタが非常にもげやすいらしく、もげマイクロとか呼ばれてました。もげた場合の修理は困難な上に、ファームウェアの書き換え等でそこそこ抜き差しする頻度が多いことから、もげ対策を行うことにしました。と言っても内容としてはシンプルで、ダイソーに売ってた2液式の接着剤でコネクタ周りを固めるだけです。「ProMicro もげ対策」で検索したら出てきた手法です。

「接着剤が変なところに流れ込まない様にちゃんと養生してやれよ!」って書かれてたんですが、言うて大丈夫っしょwwwと思いながら接着剤をつけたら見事に基板の穴に流れ込んで半田が乗らなくなりました(アホ)。幸い使用しないピンに繋がっているところだったので問題ありませんでしたが、皆さんはちゃんとマスキングテープで養生してから接着剤を流し込んでください。

ファームウェアの書き込み

(ものに寄るのかもしれませんが)自作キーボードキットに付属するProMicroや、別途購入したProMicroには何もプログラムが書き込まれていないため、キーボードをキーボードとして動作させるためのファームウェアを書き込む必要があります。

ProMicroで動作するキーボードファームウェアとしてはqmk_firmwareというものが(多分)有志によって開発されており、大抵の自作キーボードはこれを採用しています。そのため、ファームウェアを書き込むための環境づくりを解説したサイトも多く、余裕で出来る……と思っていたのですが、見事に沼りました。まさかここまで苦労するとは。

ファームウェアは基本的にソースコードの状態で配布されているため、それをProMicroに書き込むには一度コンパイルということをしてしてProMicroに書き込める形式に変換する必要があります。このコンパイルをするための環境作りで見事にハマッてしまいました。

このqmk_firmwareのコンパイル環境はWindowsやMacOSでは構築出来ず、UNIXライクな環境を用意する必要があります。LinuxやMacOSではこのUNIXライク環境が最初から用意されているため、コンパイルに必要なものを集めてくるだけで済むのですが、Windowsにはそんなものは存在しないため、まずはこのUNIXライクな環境を準備する必要があります。

Windowsで使用出来るUNIXライク環境としては主にMSYS2というものがあり、qmk_firmwareの公式ドキュメントでもこれを使用した手順を記載しています。なので、それに従ってMSYS2を使った環境構築を試したのですが……ドキュメントに記載されている通りに進めても、なぜかエラーが出て環境構築が上手く行きません。エラーメッセージを読んでみると、どうもインストールに必要なファイルのDLが上手く行ってないらしく、向こうのサーバが応答していないっぽい雰囲気を出していました。そんなんどうしようもないやんけ!

ということで他にも方法が無いかと調べて色々試したのですが、結局どれもダメで発狂してました。ほんとふざけんな。あまりにも上手く行かなくて諦めかけてたのですが、最後の最後に「QMK MSYS」というWindows用にqmk_firmwareの環境構築をしてくれるパッケージ?を見つけて無事にコンパイル環境を構築することが出来ました。

DLしてインストールしてコマンドを一発叩くだけで環境構築が完了して、ほんと今までの苦労は何だったのかと……。実はこの名前自体は環境構築を始めた時に目にしていたのですが、MSYS2の古いバージョンだと思いこんでたんですよね。もっと早くに試せば良かった……本当に……。ちなみに導入方法は以下のページを参考にしました。

キーマップの作成

ファームウェアのコンパイルと書き込みが出来るようになったので、次は楽しい楽しいキーマップの作成です。

あ、一応説明しておきますが、キーマップというのは「どのキーを押したらどのアルファベット/記号/数字が入力されるか」というのを示すものですね。

Ergo42を始めとした自作キーボードは、普通のキーボードと比べてキー数が少ないものが多く、そのままだと数字の入力すら危ういものもあったりします。そのため、レイヤーというものを設定して、「あるキーを押したまま(あるいは押した後に)他のキーを押すと数字が入力出来る」みたいな仕様にしているものが多いです。Shiftキーを押したまま入力するとアルファベットが大文字になったりすることや、ノートPCのFnキーなんかをイメージして貰うと分かりやすいと思います。

このレイヤーの設定や、メインとなるアルファベット以外のキーをどこに配置するかによって使い勝手が大きく変わってくるため、キーマップの作成は非常に楽しく、そして悩ましかったりします(ちなみに、一部の変態はアルファベットの配置も変えたりしてるみたいです)。

自分も散々悩みましたが、最終的には次の様な配置になりました。

作ったキーマップ

レイヤーの切り替えキーと、全角半角切り替え用の変換無変換キーを同じキーに割り当てたかったので(押しっぱなしでレイヤー切り替えキー、単発押しで変換無変換キー)、マクロを組む必要がありましたが、これはネットに転がってたコードをそのまま書くだけで一発でした。まあ何がどうなってそう動くのかを理解しようとしてめちゃくちゃ苦労しましたが……(こいついっつも苦労してんな)。

実はWEBサイト上でGUIを使ってキーマップを設定すれば後はコンパイル後のファイルを書き出してくれるというサービスもあるのですが、それではマクロが設定出来ないので頑張って環境構築をしてたんですよね。ソースコードのコンパイルは難易度が結構高いと思うので、最初はそれを使うといいかもしれません。

使い方はググれば大量に出てくると思います。

しばらく使ってみて

いやーなんて言うか……不便ですね……。格子配列は3日くらいでそこそこ慣れましたが、数値入力や記号入力は慣れるまでに結構時間が掛かりました。1ヶ月くらい?単純に文字に比べて入力頻度が少ないからですが。

問題なのは親指周りのキーでして、とにかくめちゃくちゃ押し間違えます。レイヤー切り替えやエンターにバックスペースとかの重要キーが多く配置されているので、押し間違えるとそれはもう面倒くさいことに。いやまあそういうキーマップにしてる自分が悪いんですが。半年くらい使い続けても未だによく押し間違えます。とは言え、20年ほど親指をほとんど使わないタイピングをしてきたことを考えると、もう半年くらい使い込めば押し間違えも減ってくるかなーと思ったり思わなかったり。キーマップを変えることも考えたのですが、利便性を考えると今のまま押し間違えを頑張って減らした方が良さそうだなと。

それ以外は中々良好ですね。打鍵感はもう一歩感ありますけど悪いわけじゃないのでストレスを感じるレベルでは無いですし、肩を開いてタイプ出来るのはかなり良いです。肩こりに効果があるのかはちょっと分かりませんが。キーマップを工夫したおかげでホームポジションからあまり手を動かさずに色々入力出来るのもめちゃくちゃ良いですね。ほんと親指周りのキーの押し間違えさえなければ……。

親指周りを押し間違えしにくい様な自作キーボードキットも存在しているのでそれを導入すれば今の悩みも結構解決しそうなのですが、他の趣味にお金を使ってしまってて予算が確保出来ないんですよね。導入するとしても来年以降かな。

みなさんもどうですか?自作キーボード

ということで自作キーボードキットを組み立てた報告でした。「キーボードにお金を掛けるならRealforceかHHKBのどっちかにしておけば幸せになれる」みたいなことはよく言われますが、こだわりが強い限界独身オタク男性みたいな人には自作キーボードもおすすめです。好きなパーツを集めて自分だけの最強キーボードを組もう!

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