殺したいと思うこと

 今までの人生の中で嫌だった出来事のほとんどが姉絡みである.従って彼女の存在を知覚することは,そのような人生の負の記憶を想起することと同義である.同じ家で暮らす姉のことを疎ましく思っているが,特にストレスが溜まっている時は姉のことを殺したいとさえ思う.これをもうずっと生まれてこの方続けている.限りある人生の中で誰かのことを憎み,荒んだ気持ちで過ごすことが良いこととは思えない.自分の負の面と向き合い,自分の人生を前に進めるために,文字に起こして整理したいと思い,この文章をしたためた.
 私からみた姉の嫌なところを正しく言葉にする.物事の二面性を捉えるのが苦手である.思いこみが激しい.自分から謝らない.マウントをよく取ってくる.嫌味が多い.詳しいエピソードをここで話しても仕方がないので割愛するが,これらがまず私から見た事実としてある.物心ついた時から私に取って姉は嫌な人で,性格が悪い人間であった.兄弟の仲が悪いのが当たり前のことだと思っていた.私にとっての事実は本当に私にとってでしかないのは重々承知しているが,本当に私に取って姉はこの上なく悪人であった.
 以上の理由から姉のことを嫌い続けてきたが,そんな姉が体調不良を理由に休職した.微熱が収まらず,原因がわからず,両親から思い病気であるようなことを仄めかされた私は神はいるのかもしれないと思いながらも,訳もわからずしばらく泣いた.ずっと死んでほしいと思ってはいたがいざ死ぬとなると勝手に涙が溢れてきた.これほど憎んでいて,ずっとストレスを与えられてきた人間に対して,まだ涙を流してしまうこと,今まで苦しんできた過去の自分達がバカみたいで悔しくて,でもそんなに本当に死んで欲しいとは思っていなかったのかもしれない.そのようなことをぐるぐると考えていた.死んで欲しいと思うことが当たり前すぎてそれを急に否定されてしまって,よくわからなくなって,ただ悲しくて泣いている状況を否定はできなくて今でも正しい言葉は見つからない.ただ,今になって思えば本当に姉が病気になって死んでいれば,私は姉のことを許して悪くない関係で終われたのかもしれない.
 結局姉は死ぬ病気ではなかった.自律神経失調症とうつ病らしい.より難しくなった.私は姉のこと心底憎んでいて悪人だと思っているから,その人間が精神病を理由に福祉を受け,親の助けを借り,のうのうと生きていることを受け入れるのが苦しい.姉以外の人間が生活保護を自給しようが,働かず親の脛をかじろうが,本当にどうでもいいが,姉は別なのである.本当にどうしようもない人間だと自身の頭がそう認識しているから,その人間が世界に許されていることが納得いかないのである.それを近くで見なければならないのも苦痛である.どうして姉のことを考えるたびにここまで強いストレスを覚えるのか,うまく言葉にできずにいたが,今の所の最終結論はこれである.姉は自己主張できない幼い自分を殺した犯罪者なのである.犯罪を犯した過去を消すことはできず,犯した罪を認めないから私への謝罪もない.
 ここまで述べて結局私は何がしたいのか.どうすればこの悩みは解消されるのか.家を出ることも考えたが,学生の身分で家賃を稼ぎながら一人暮らしする気概は持てず,また姉を理由に一人暮らしをすることが,それでうまくいかなかったときに姉のせいにしてしまいそうだからという理由でできていない.どうしたらいいのか.姉に謝ってもらえれば済むのか.殺したいとは書いたが,犯罪であること,両親が悲しむこと,私の社会的評価が地に落ちるという理由で殺しは絶対にしないと思う.そんな勇気も度胸もないからダラダラと悩み続けたまま大人になってしまった.殺したいと思うこと,死んで欲しいと思うこと,どこか自分の知らないところで幸せに生きてもらうこと,どれでもいいから消えて欲しい.自分の人生に一切の干渉をしないでほしい.結局答えは出ない.もう悩みたくないが,また進展があればここに書き足していきたいと思う.

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