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そしてイズムは続く

福岡市は天神にある商業施設イムズが本日8月31日を以て閉店する。

一度、福岡へ旅行に行った時フォロワーに案内して貰った時のことを今でも良く覚えている。
とにかく第一印象は地下二階から吹き抜けになっているホールの中央にあるスケルトンのエレベーター。
お洒落なエレベーターでまるで切子のグラスを上下につけた様なあざやかなライトが上下するさまはいつか未来予想図で見た宇宙エレベーターの移動ポットの様だった。このままどこか遠く連れてってくれるのではないかと眩いライトに照らされたホールは子供の頃に夢見た魔法のお城の様だった。
丁度「おしまイムズ」という閉店カウントダウンイベントで「おしまい」にかけて様々な姉妹の写真が飾られていてその中に叶姉妹のポスターがあったのを覚えている。
エレベーターに乗り込むとアラサーは階層が上がるにつれ子供になっていく。フロアのライトで全体が照らされどこかリゾートホテルの様にも思えた。入場料取ってもいいと思える程に夢のように眩しいエレベーターだった。

「屋上から推しの解体される様子が見えるんです」とフォロワーが教えてくれ、屋上に行くことにした。
少し暗い階段を上がっていると南国のような植物を見た。造花かなと思って見ると本物だったので驚いた記憶がある。
屋上に上がりビル風の風圧で重たいガラス戸を開けるとちょっとした椅子とテーブルのある休憩スペースがあった。スカイガーデンというらしい。
天神の街を眺める大型のガラス窓に近寄ってフォロワーの指差す方を眺める。よくある工事現場の解体と思うと「推しが解体されているところです」との発言のあまりの訳のわからなさに笑ってしまった。
訪れた2020年11月、既にフォロワーの推しであった天神コアは閉店して重機によって鉄骨の骨組みとコンクリートの肉片を崩していくさまをイムズ屋上にあるスカイガーデンから眺めた。ガラス越しに遠くから聞こえる解体の音に寂しさと今立っている足元もいつか同じように消えていくのかと少し悲しくなった。振り返ると風雨に晒されていないタイルが太陽に照らされ黄金に光った。

時は流れて8月になり閉店のカウントダウンがどんどん短くなっていく。コロナ禍の中、前述のフォロワーは閉店カウントダウンイラストをアップしたり外壁に使用されている予備の有田焼タイルや閉館記念のグッズを買ったりしていた。
予備の外壁タイルも売るのかと驚いたし、開店記念はともかく閉店記念とは何なんだと困惑しながら8月を過ごした。そして閉店の日が来てしまった。

ギンギラ太陽'sという劇団が福岡にはある。
市内にある商業施設をはじめ新幹線や地下鉄車両のかぶりものをかぶって演じる。座長は大塚ムネト氏。
このギンギラ太陽'sで最初に登場したのが大塚ムネト氏のイムズマンであった。
最初非公式であったこのイムズマンがイムズ閉店のCMに出演して、この閉店CMが余りにも賑やかで楽しくて本当にこんなに楽しい施設が閉店してしまうんだろうかと混乱する。
あまりにも明るく、悲しさを感じさせない次のステージへ進むための別れなのだと。

とにかくCMを見てほしい。吹き抜けにドローン飛ばすビルは数あれどワイヤーアクションをするビルはイムズくらいだと思いたい。
1日訪れただけでCMでイムズマンがステップを踏むだけで泣いてしまう人間がここにいるのだ。地元福岡で通ってた人はもう泣くどころじゃないだろう。それ程に私の中にイムズは1日で大きな存在になったビルであった。

イムズはおわる
イズムはつづく

西日本新聞「イムズマンのIMSモノ語り」
商業施設ってこんなに愛されるんだ…!?と混乱した連載

一度立ち寄っただけですがたくさんの人たちから見送られ、多くの言葉に送られる姿。夏の終わりに1つ素敵なものを見せて貰いました。
きっと天神の他の商業施設にもイムズのイズムは受け継がれて行くんだろうな、とぼんやり思うのでした。

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