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車の電気系統が故障するとどうなる?よく出る症状や原因の見分け方を解説

3級整備士の闇です!
第70回の今回は車の電気系統について書いていきたいと思います。

〈車の電気系統が故障するとどうなるのか〉

車の電気系統が故障すると様々な不具合が現れます。車のほとんどの部品は電気を動力にしたり、制御されていたりするため数多くの電装品が存在し、その故障する部分によって発生する症状が異なります。

例えば「オーディオの音が出ない」といった比較的軽い症状から、「車の電源が入らない」「エンジンがかからない」といった重大な不具合も起こります。

また、原因を発見すればすぐに改善するものや整備工場へレッカー搬送が必要な場合もあります。

〈車の電気系統に使われている部品〉

車の電装品は、ランプ類やオーディオ、パワーウインドウといった普段から目にするものだけではありません。他にもエンジンを始動させているセルモーター(スターター)や車の充電器であるオルタネーター、貯めた電気を他の電装品へ供給するバッテリーといった数多くの電装品が取り付けられています。

ガソリンを動力としているエンジンも細かな制御は電気で行っているため、コンピューターやセンサーといった電装品がなければ動かすことができません。自動ブレーキなどのシステムも電気で制御されており、車には数え切れないほどの電装品が装着されています。

〈電気系統が故障したときに発生しやすい症状〉

車の電気系統が故障すると原因によって様々な症状が発生しますが、その中でもよくあるのが「エンジンがかからない」「メーター内に警告灯が点く」「ランプ類が点灯しない」といった症状です。

これらについては後ほど詳しく解説しますが、同じ症状でも原因が異なる場合があったり、その原因によって対処も異なります。

〈エンジンがかからない原因は?〉

「車に乗ろうとしたらエンジンがかからない」と急なトラブルに焦った経験がある方は多いかもしれません。

エンジンがかからない原因で多いのが、バッテリー上がりです。そのため、「エンジンがかからない=バッテリー上がり」と考える方も多いでしょう。

しかし、バッテリー以外の部品が不具合を起こしてエンジンがかからない場合もあるため、不具合が発生したらまずは落ち着いて症状を確認することが大切です。原因によっては簡単な操作で復帰する場合もあります。

ここからは、エンジンがかからなくなる主な原因とどのような症状が発生するのか解説していきます。

〈バッテリーが上がる〉

バッテリー上がりとは、車に搭載されているバッテリーの電気が不足している状態のことです。通常、エンジンの始動はバッテリーの電力でセルモーター(エンジンをかけるためのモーター)を回転させているため、バッテリーに電気が十分に残っていないとエンジンをかけられません。

バッテリー内の電気残量により発生する症状が異なりますが、バッテリーが完全に上がっていると、エンジンを始動するときのセルモーターの音がしない、ヘッドランプが点灯しないといった症状が見られます。

わずかに電気が残っていると、セルモーターから「ガリガリガリ」と音がしたり、ヘッドランプは点灯するがいつもより暗かったりします。

バッテリーが上がってしまう主な原因は、「バッテリーの寿命」「バッテリーの充電不足(短時間走行の繰り返しなど)」「オルタネーターの故障」「運転者の操作ミス(ランプの消し忘れなど)」の4つです。

バッテリーの寿命は使用環境によって異なりますが、3~5年ごとの交換が目安となっています。

〈電子キーの電池切れ〉

車によってエンジンをかけるときの操作方法が異なりますが、電子キーを使っている車両はキー内部の電池切れに注意が必要です。

電池が切れると車両と電子キーの無線通信ができなくなるため、電子キーのボタンでドアロックの操作が行えない、スタートスイッチが反応しないといった症状が発生します。

電子キーの電池が切れた場合でもエンジンを始動させる方法がありますが、メーカーによって操作方法が異なるため取扱説明書を確認するといいでしょう。

電子キーの電池は一般的にボタン型電池が使用されており、ドライバーなどの工具があれば自分でも交換できます。電池の寿命は使用状況にもよりますが、1~2年ごとの交換が目安となっています。

〈セルモーター(スターター)の故障〉

セルモーター(スターター)が故障すると、エンジン始動時の「キュルキュルキュル」というモーター音がしなくなります。

セルモーターだけが故障している状態だとエンジンはかかりませんが、バッテリーの電気は残っているため車両電源が入り、オーディオやパワーウインドウなどの電装品は通常どおり動きます。

セルモーターが故障するとその場で復帰させることは難しいため、整備工場へレッカー搬送し、適切な修理を行うことが必要です。

セルモーターは頻繁に故障する部品ではないため、他の消耗品のように明確な交換時期は定められていません。

〈ドライバーの使用ミス〉

車は故障していないが、運転者の使用ミスでエンジンをかけられない状態に陥っていることがあります。その場合は、適切な操作を行うことで自力でエンジンをかけることができます。

エンジンがかからない場合、まずは以下の項目を確認してみましょう。

・シフトが「P」に入っているか
・ハンドルロックしていないか
・電子キーが車内にあるか
・ブレーキペダルを踏んでいるか(プッシュスタートスイッチの場合)
・クラッチペダルを奥まで踏みこんでいるか(マニュアル車の場合)

これらのミスが確認できた場合はシフトを動かしたり、ペダルを踏み直したりといった復帰操作を行いましょう。

ハンドルロックしている場合は、ハンドル(ステアリングホイール)を左右に揺すりながらキーを回すとロックを解除できます。

〈エンジンがかからないときはどうしたらいい?〉

実際にエンジンがかからないという不具合に直面すると頭が真っ白になり、何をすればいいのか分からなくなってしまう方も多いでしょう。

「車のことはよく分からないから、整備工場に連絡して任せよう」と考える方も多いかもしれませんが、自分の操作ミスや電子キーの電池切れといった簡単な原因で始動不良を引き起こしている場合もあります。

整備工場の出張診断やロードサービスを利用すると料金が発生したり、すぐに対応してもらえなかったりするかもしれません。そのため、まずは自分で車の状態をチェックしましょう。

ここからは、エンジンがかからないときに行うべき手順を詳しく解説していきます。

〈①自分で復帰できるのか判断する〉

車の状態をよく確認することで、自分でエンジンをかけられる場合があります。その場で復帰できないとしても、車の状態を確認することで自分でも原因を見つけられることが多いです。

具体的には、以下の内容を確認しましょう。

・セルモーターの音がするか
・車両電源が入るか
・ヘッドランプが明るく点灯するか

セルモーターの音がしない、電源も入らない、ヘッドランプも点灯しないといった電気系統が全く反応しない状態では「バッテリー上がり」の可能性が高いです。

車両電源は入らないが、ヘッドランプが明るく点灯する場合は「電子キーの電池切れ」の可能性があります。

車両電源が入り、キーレスもヘッドランプも正常だけどセルモーターの音がしない場合は「セルモーターの故障」「シフトがPに入っていない」「ブレーキやクラッチのペダルを踏んでいない」といった原因が考えられます。

〈②バッテリーが上がっている場合はブースターケーブルをつなぐ〉

バッテリーが上がっている場合は、ブースターケーブル(赤色と黒色の2本の専用コード)を救援車と接続することで電気を供給してもらい、エンジンの始動ができます。

ブースターケーブルを接続する手順は以下のとおりです。

①2台の車のボンネットを近づけて停車し、エンジンを停止する
②ブースターケーブル(赤)を上がっているバッテリーのプラスに接続する
③反対側を救援車のバッテリーのプラスに接続する
④ブースターケーブル(黒)を救援車のマイナスに接続する
⑤反対側を救援される車のボディアース(エンジンやボディの金属部分など)に接続する
⑥救援車のエンジンを始動し、アクセルを軽く踏んでエンジン回転を上げる
⑦バッテリーが上がった車のエンジンをかける
⑧ブースターケーブルを接続したときの逆手順で外す

エンジン始動後はオルタネーターから電気が供給されるため、ブースターケーブルを外してもエンジンは停止しません。

〈③ロードサービスや整備工場へ連絡する〉

上記の方法で確認した結果「操作ミス」や「バッテリー上がり」ではない場合は、自力でエンジンをかけられない可能性が高いため、ロードサービスや整備工場へ相談しましょう。

スターターやオルタネーターといった部品が故障している場合は整備工場へレッカー搬送し、修理をする必要があります。

自力でエンジンをかけられた場合でもエンジンがバタバタと振動し、加速しづらい場合はエンジン関連の部品が故障している可能性があります。他の交通の妨げになったり、走行中に突然エンジンが停止したりすると危険なので無理に走行するのはやめましょう。

〈電気系統が故障したときに点灯しやすい警告灯と対処法〉

電気系統が故障すると、エンジン始動後のメーターパネル内に警告灯が点灯(点滅)することがあります。普段は消灯している警告灯が点灯もしくは点滅する場合は、整備工場へ相談して診断してもらいましょう。

「修理が終わるまでは、警告灯が点灯している状態で乗っていても大丈夫?」と疑問に思うかもしれませんが、警告灯には様々な種類が存在するため点灯している警告灯ごとに対応が必要となります。

警告灯の色で危険度を判断することができ、「緑(青)は安全」「黄色(オレンジ)は要注意」「赤は重大な異常」であることを示しています。

ここからは、電気系統が故障したときに点灯しやすい警告灯を紹介していきます。また、それぞれの対処法も解説します。

〈バッテリーの警告灯はオルタネーターの不具合〉

赤いバッテリーの警告灯(長方形の中にプラスとマイナスのマーク)が点灯している場合はすぐに運転を中止し、整備工場へ相談しましょう。

バッテリー警告灯は、車両の充電系統に異常が発生すると点灯します。充電が正常に行われないため、そのまま走行しているとバッテリーの電気が徐々に減っていき、最終的には全ての電装品が動かなくなります。エンジンにガソリンを送っているポンプなども動かなくなるため、エンジンは止まってしまい再始動できません。

充電が行われない原因にはオルタネーターが故障しているか、オルタネーターを駆動しているベルトに異常が発生しているケースが多いです。

〈エンジンの警告灯がついたら〉

黄色(オレンジ)のエンジンの警告灯が点灯した場合は、エンジンの動作に異常がなければそのまま走行が可能です。

エンジンには「水温センサー」「エンジン回転センサー」「O2センサー」などの多くのセンサーが取り付けられており、各センサーが異常を検出するとエンジンの警告灯が点灯します。

故障する部分によってエンジンの作動に与える重要度が異なるため、現れる症状が異なります。そのため、エンジンに不調が見られる場合は、走行せずにレッカー搬送してもらいましょう。

エンジンに関わる警告灯には、エンジン警告灯の他にオイルランプや水温計も存在します。これらは電気系統の不具合ではありませんが、赤いランプが点灯している場合はエンジンに重大な異常が起きている可能性があります。すぐに走行をやめ、整備工場に相談しましょう。

〈他にはどんな警告灯がある?〉

電気系統に関わる警告灯には他にも「エアバッグ」「ABS」「アイドリングストップ」などがあります。これらの警告灯が点灯している場合は自走できないほどの不調が発生する可能性は低いですが、それぞれの系統が動作しないため早めに修理をする必要があります。

例えば、エアバッグ警告灯が点灯している車を修理せずに使用を続けた場合、事故が起きたときにエアバッグが展開されないため危険です。

ABSも急ブレーキ時に作動しなくなってしまうので、警告灯が点灯しているときは早めに診断してもらいましょう。

〈電気系統が故障するとランプ類が点灯しない場合がある〉

車の電気系統が故障すると、以下のようなランプ(灯火)類が正常に点灯しなくなることがあります。

・ヘッドランプ
・スモールランプ(車幅灯)
・ウインカーランプ
・フォグランプ
・ストップランプ
・テールランプ
・バックランプ
・ライセンスランプ(ナンバー灯)

それぞれ重要な役割を果たしているため、常に正常に点灯するようにしておく必要があります。

ここからは、なぜランプ類を装置しなくてはいけないのか、ランプ類が点灯しない原因について説明していきます。

〈ほとんどのランプは法令で装着義務がある〉

車の多くのランプは、法律によって装着することが義務づけられています。故障して点灯しないランプをそのまま使っていると、罰則を受ける可能性があるため速やかに修理しましょう。

また、ランプが点灯しないと周囲の車が困惑し、事故を起こす危険性もあります。法律ではランプの灯光の色や明るさ、取り付け位置といった細かな基準も定められているため、自分でカスタマイズするときは法律に違反しないか確認する必要があります。

〈ランプ類が点灯しない原因〉

ランプ類が点灯しない原因は「電球切れ」が多いでしょう。電球切れの場合は新しいものに交換するだけで改善するため、費用や時間は少なくて済みます。

しかし、まれにランプの操作スイッチやソケット(電球の差し込み口)、点灯状態を制御するためのコンピューターなどが故障している場合もあります。これらが原因の場合は、電球を新しいものに交換しても改善しません。

修理費用が高額になるケースもありますが、ランプ類は正常に点灯させることが義務づけられているので車を使うためには修理が必要です。

〈電気系統の故障を予防するために〉

これまで解説してきたとおり、車の電気系統が故障すると走行できなくなるほど重大な不具合が起きたり、法令違反になったりすることがあります。

しかし、電気系統は突然故障してしまうケースも珍しくありません。症状が発生してから部品の劣化に気付くことも多いでしょう。

その中には自分で予防できることもあり、適切な予防を行えば突然の不具合を防げる場合もあります。ここからは、車を所有する方ならやるべき予防方法を具体的に解説していきます。

〈定期的な点検をする〉

車の故障を予防したり早期発見したりするためには、定期的な点検が欠かせません。整備工場で半年や1年ごとに点検を受けているという方も多いかもしれませんが、自分でも日常点検を行いましょう。

ランプの電球切れのような突発的に起こる不具合に対しては、半年や1年ごとの定期点検だけでは不十分です。日常的に車を使用している方が点検する必要があります。

道路運送車両法という法律でも「使用者の点検及び整備の義務」という規定があります。つまり、使用者にも運転する車を日常的に点検し、安全な状態を維持する責任があるということです。

〈消耗品は適切な時期に交換する〉

バッテリーや電子キーといった消耗品はそのまま使い続けていると、いずれ使えなくなってしまいます。消耗品にはそれぞれ交換目安となる年数や走行距離が決まっているので、交換時期を迎えたら不具合が発生する前に交換しましょう。

不具合が起きてから消耗品を交換すると、車を使えない時間が発生したり、他の部品にも悪影響が出たりすることがあります。

自分で全ての消耗品を把握して管理するのは難しいため、専門的な部分は定期点検を受けたときに確認してもらうといいでしょう。

〈ブースターケーブルを用意しておく〉

バッテリーが上がった場合は自力ではエンジンをかけられないため、ブースターケーブルを用意しておくと安心です。周囲に救援できる車がいればブースターケーブルを接続することでエンジンをかけられます。そのため、整備工場へ移動したり、バッテリーを購入しに行ったりすることができます。

周囲に救援できる車がいない場合やそもそもブースターケーブルの使い方が分からないといった場合では使用できないので、注意が必要です。ブースターケーブルは接続する順番や端子の向きが決まっています。

間違えるとケガをしたり車両が故障したりする可能性があるので、使用の際は注意しましょう。

〈車が古い場合は買い替えも検討しよう〉

「新車から10年以上経過している」「10万キロ以上走行している」といった車は、車自体の買い替えも検討することをおすすめします。

電装品には定期交換部品ではないものも多く存在し、古くなっている車は自動車整備士のようなプロが見ても故障を予測できない場合があります。

モーター類やコンピューター、オーディオ関係などは古くなってくると突発的に故障することも珍しくありません。無理に使用を続けると「大きな修理をしたばかりなのに、また違う部品が壊れてしまった」といったケースも想定されます。

そのため、修理費用が積み重なる前に車の買い替えも選択肢に入れて検討したほうがいいでしょう。

〈まとめ〉

①車には多くの電装品があり、故障すると様々な症状が発生する

②多い不具合は「エンジンがかからない」「警告灯が点灯する」「ランプが点灯しない」

③同じ症状でも原因が異なる場合があり、自分で解決できない場合はロードサービスや整備工場に相談する

④電気系統の故障を予防するためには、日々の点検と整備が大切

今回は車の電気系統について話させていただきました。
ぜひまた見に来てください!

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