摩撫甲介

ノワールや血肉飛び散り人が死ぬ作品が好き。アル中予備軍で人間の屑。 永遠の傍観者。 逆…

摩撫甲介

ノワールや血肉飛び散り人が死ぬ作品が好き。アル中予備軍で人間の屑。 永遠の傍観者。 逆噴射小説大賞2020大賞受賞

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最近の記事

バキラが首都にやってくる

「おーい少尉、しょーうい! デートに来たぞう!」  時速500km超で飛行する機動艦の尻に突き刺さった大型砲弾、それを内側から突き破ったのは筋骨凄まじい巨女であった。  銃撃で応えた三人の兵士を、数秒かけてそれぞれ蹴り、頭突き、こぶしの一撃で昏倒させると、顔面装甲にめり込んだ銃弾を指でほじくり返しながら鉄扉を前蹴りでこじ開ける。続く通路は機動艦の先端に向けて作られている。 「ガロフ少尉、あの女は何者なのです!……失礼」  制御室にいる副官は厚さ100ミリの封鎖扉に棚を被せる

    • 非合法無人傭兵

       まずカメラが回復する。  青空と暗黒雲海。  意識のタイムスタンプを確認。断絶は数秒間。  身体ダメージ診断・軽微。武装・レーダー使用不可。カメラは生きている。  友軍機反応、識別名『エフティー』。800m後下方。後輩の僚機。  インパクト前に入っていた通信の復号完了。ミサオから。《準備完了。北倉庫の地下15階で。妨害警戒》  現在通信機故障。  ブロンソンはエフティーに向け友好的にアームを振る。  エフティーからミサイルが放たれる。  ブロンソンはコンマ遅れつつ撹乱チャフ

      • お正月レバーアタック

        おれのことは摩撫甲介と読んでくれ。この前改名した。「まぶ」だからな。 上の記事のアンサーを書こうと思う。どこの店もやってないから、やることなくて呑んだ酒の勢いで書いている。上のヘッダはAIで作った。 エルロイとダイナー読んでくれたのですか。ありがたい。 エルロイはほぼホワイト・ジャズしか読んでないけどオススメ。文体の電文体がリズミカルでよく馴染む。直木賞作家の馳星周の愛読書だとか。 ダイナーの続編はこちらから(最終更新2019年) 平山夢明の新刊が出た。ありがたい。 中

        • ほほえみを焼き落とせ

          「神野さん、もう悲しむことはありません」  病室のベッドの娘の亡骸に埋めていた顔を引き上げると、仏陀が立っている。  その指が伸びて己の涙を拭うのを、神野は咄嗟に払いのけた。 「なんなんですかアナタ」  仏陀は優しげな笑顔を見せると、娘の額に手を当てた。  そこから放出された金色の光が娘に染み込んだ。仏陀は神野の手を取り、彼女の額にそっと当てる。  温かい。  息の詰まっている神野へ向け、仏陀は表情を変えぬまま言う。 「この礼として、貴方には私に手を貸して頂きたいのです」  

        バキラが首都にやってくる

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        • 逆噴射小説大賞2023ピックアップ
          57本
        • 逆噴射小説大賞
          16本
        • 公開物
          26本
        • 逆噴射2022ピックアップ
          53本

        記事

          鉛のあしゅら

           改造医の河豚は簡単に折れた。  河豚が扉越しに声をかけると、ガラス戸がかっ開き、待たせていたリンドウが端末を握ったまま飛んできた。 「直りますか?」 「ええ、一週間後に手術です」  河豚が言った。  おれが頷くとリンドウは笑顔で礼を言うなり、おれが載せられた四駆台車の取手を押し始める。  医院から出るとすっきりした表通りだ。気取ったスーツどもがビビって道を開けていく。だいぶ背の低くなったおれを見下ろしながら。  リンドウの顔を見上げると、彼女は自慢気に見返した。 「あたし

          鉛のあしゅら

          宙、つめたく冷えて

           横薙ぎに椅子を男のこめかみに叩きつける。  吹っ飛んだそいつに椅子を投げつけ、腹の包丁を掴む。滑る。奥歯が割れそうになる。抜ける。  思わずたたらを踏む。  ゆっくり跳ね返ってくるそいつ。壁に押し付け、倒れ込みながら、うなじに包丁を押し込む。硬いものを断ち切る感触があった。  救急テープでスーツの穴を塞ぐ。アドレナリンとエンドルフィン剤の追加ボタンを押す。ヘルメットの血を拭い、浮いている斧を掴む。  死体をどかし、障壁を叩き破る。刃を見る。取り替える必要があるかもしれない

          宙、つめたく冷えて

          空に噛みつく青い鳥

            犬の群れが追う。  ドアを叩きつけ、もつれる手で鍵を刺す。  ロックが掛かり、吠え声と衝撃がドアを貫いてくる。  瑠璃子はバッグに手を差し込みながら、息を吸い、視線を走らせ、足を運ぶ。  バスルーム、キッチン、リビング……  音。  クローゼット。  背後。 「危なかったな」  振り向きざまにバッグを投げる。  受け止めた男の鉄仮面に照準が重なる。  銃火。金属音。  伸びる腕。  銃弾が潰れ落ち、革手袋が拳銃をもぐ。  手刀が男の手首を打つ。弾かれた手をおさえる。冷た

          空に噛みつく青い鳥

          ホールケーキはもう出ない

           母さんは昨日のことが嘘みたいなニコニコ顔のまま、お皿を2つ、僕とカナの前にそれぞれ置いた。 「ごちそうさま」 「…ごちそうさま」  また平手だった。  カナ。次に僕。  母さんが空っぽのお皿を持ち上げた。  僕は窓を見る。 「母さん」  背中が止まった。 「なあに?」 「父さんの出張、いつまでだっけ」 「お昼すぎには帰ってくるって言ってたわ」 「うん」  次は土鍋が来た。  母さんが蓋を持ち上げる。いやな蒸気が膨れ、上がった。  お玉が中身をかき回し、すくったそれを僕ら

          ホールケーキはもう出ない

          逆噴射聡一郎先生からコロナビールが届いたぞ

          おれのことは摩部甲介と呼んでくれ。 クリスマスプレゼントがあった。(文庫本は個人情報隠蔽用だ) 送り主は当然、この人だ。(送り状の抜粋) そう、大賞の品だ。 いまからこいつをボロニアソーセージとやって、祝う。 計算サイトによればコロナ一本は2時間で抜けるそうだから、外出時間までに充分間に合うはずだ。 こいつらはじっくり呑み進める予定。 小説の続きは先の記事に書いた通り、読みたい人はじっくり待っていてくれ。 逆噴射聡一郎先生、ダイハードテイルズさん、そして作品を読んでいた

          逆噴射聡一郎先生からコロナビールが届いたぞ

          逆噴射小説大賞2020大賞、受賞

          朝起きてツイッターを見ると通知があった。 大賞おめでとうございます!だと。 記事に飛んだ。 読んだ。 勝った。 しかもダブル受賞だ。 呑みたかったが買い物の予定があるので、仕方なくボロニアソーセージを齧りレモン汁を口中に垂らす。 栄光はおれのもの。 コロナビールはおれのもの。 コメントがとても嬉しい。 いくつか問題がある。 逆噴射聡一郎先生が、続きを読みたがっている。 サイバーパンク2070(通称:サイパン。誰も呼んでくれない)を買ったばかり。 あの子の方は短編を意識し

          逆噴射小説大賞2020大賞、受賞

          逆噴射小説大賞2020 第一次&二次突破したからもう一杯酒を呑む

          喰いかけのボロニアソーセージを齧りながら安スコッチをちびちびやっていると、通知があった。 投稿した4本のうち、3本が選考を突破。 驚きがあった。 自信作の「牙に生え変わるとき」が落ちたからだ。 不満だが選考メモを読み一人合点する。 こいつはすごく予告編じみている。 大藪春彦要素と某モンちゃんを元ネタにした男を出せて満足したらこのざまだ。 続きは書くかもしれないし書かないかもしれないし書かないだろう、多分。 それとなにか、昨年に続き一番スキをもらった作品が落とされてるのは

          逆噴射小説大賞2020 第一次&二次突破したからもう一杯酒を呑む

          地獄も投げ出した家にて

           ナカモトの家の玄関は広く、すっきりとしていた。新品のスニーカーが1足だけ。起爆装置のひとつやふたつはあると思っていたのだが。 「手応えのねえ扉だな。高級エンジニアにしては防犯意識が低過ぎら」  荒事屋のブルーザーがブッターギルン社の電ノコを止めて言った。 「仕事は楽な方がいい」おれは言った。  売れっ子にはおれの気持ちはわかるまい。おれにはあと28時間しか残されていないのだ。それまでにナカモトからデバイスの在り処を引き出さなければ、バラされて市場に流されるのはおれの方だ。

          地獄も投げ出した家にて

          牙に生え変わるとき

           まず通帳を、次に結婚指輪をフロントガラスに投げつけた途端、リョーコは閃光と轟音にやられた。  耳鳴りが遠ざかると、ゆっくりと目を開けて目の前を見た。  銀行の窓という窓は消滅し、そこから黒煙が噴き出している。路上では数人が血まみれで倒れ、身動きひとつしない。  バン!  びくり、と飛び上がった。見る。運転席の窓、血の手形。髪と髭がぼうぼうの大男。全身黒く汚れている。  目が合った。  男がさっと消え、後ろのドアが開く。なんで。締め忘れ?バカ!  まず子供程もある大きなパンパ

          牙に生え変わるとき

          そしてあの子はいなくなる

           昼過ぎに玄関のチャイムが鳴った。  家事を終えたばかりのアリアが玄関の戸を開けると、黒いジャケットを着た大男が立ち塞がっていた。 「ダイモン……」絞り出すような声でアリアは言った。  茶と菓子をテーブルに置く。そばには、夫が買ってきた花が花瓶に生けられている。  ダイモンはソファに腰を静かに下ろすと、ジャケットの胸をはだけた。  アリアはそれを見た。  むき出しの皮膚に、窪みが14。うち2ツには黒い艶のない石が嵌められている。 「もう2人も……誰と誰を」 「1人目はガニア

          そしてあの子はいなくなる

          英雄の証明

           警告灯で赤く染められた階段を駆け下り、地下3階へ。上階からの悲鳴と怒号がここまで響いてくる。T字路。地図はインプットされている。右へ。  人影。  病院着を着た長身の男が壁にもたれ掛かり、血まみれの右手を抑えながら呻いている。 「ルパン」  駆け寄ったターミネーターは自身の病院着を破り、彼の右手にきつく巻く。純白の布が瞬く間に深紅に染まる。  ルパンを背負い、歩き出す。脂汗の量が背中越しにわかった。 「よお、やられちまったぜ」 「誰もいないはずだ」 「それがいたのさ、とびっ

          英雄の証明

          動物の殺しはもうたまらない #呑みながら書きました

          ストゼロのピーチをやりながら書く。ひと缶では足りないのでふた缶にする。さらにマリブ、今日買ってきたV.O、J&B、ベンチマークをショットダブルでやる。  特に書くこともないので、ゲームのことについて書く。勢いで書く。知ったことか。  近頃はThe Hunter:Call of the Wild というゲームに凝っている。銃を使い、動物を殺すのが楽しい。クソを見つけては一喜一憂し、足跡をつけ、笛で誘い出し、獲物を視認し、照準越しに覗き込み、心臓めがけて引き金を引き、死体のランク

          動物の殺しはもうたまらない #呑みながら書きました