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バトロワゲーム”APEX”のグロータワーはなぜあの形なのか?—アグリビジネスで考える

※この記事はマップ解説ではありません。ご了承ください。 2019年2月にリリースされてから、圧倒的な人気を誇っているバトルロワイヤルゲーム”APEX Legends”——そんなAPEXに去年の11月、シーズン7のアップデートで「オリンパス」というマップが実装されました⑴。そのオリンパスでゲームをプレイした誰もが、思ったことがあるのではないでしょうか…?(思ったことがなかったらこの記事は終わってしまうので、いまここで思ってください) EA——APEX公式サイト記事”WELC

    • 山月記の李徴にあこがれる若者も、多いんじゃないか

      中島敦『山月記』は、自己顕示欲や承認欲求が大きすぎると、結局人生が破綻してしまうことを格調高い文章で教示している点で、とても優れた文学作品ではある。『山月記』で悲劇的に描かれている李徴のようになってはならないというのが、この作品の一つのメッセージであろう。 しかし、この李徴のようになりたいと思う者や、李徴のようにすらなれないことに、悩む若者が増えているのではないかと感じられる。理由は二つある。 一つ目は、李徴が「容貌も峭刻となり、肉落ち骨秀ひいで」るほどに、詩作の努力をし

      • 「生産性が低い」のは本当に悪いことか?

        日本は先進国のなかで労働生産性が低いといわれており、OECDデータに基づく2018年の日本の労働生産性は、就業者1人あたり7万7111ドル、就業1時間あたり45.9ドルで、OECD加盟国のなかでそれぞれ23位と20位に位置しています(1)。 批判的な文脈で用いられることの多い、この「生産性が低い」という形容ですが、じつは最近、サービス業についての労働社会学研究の文脈ではむしろ「質の高いサービスを提供していることの証左ではないのか」という成果があがってきています。いったいどう

        • ループ作品における「孤独」を克服したSFゲームOuter Wildsとグノーシア――物語構造の比較論考①

          ※こちらの記事にゲーム『グノーシア』と『Outer Wilds Ventures』のネタバレは含まれませんが、メタ的な物語解釈をしている部分があります。苦手な方はご注意ください。 タイムトラベルを題材とし、物語の中で登場人物が同じ期間を何度も繰り返すという設定を持つゲーム・漫画・アニメ作品——通称”ループもの”(1)。 「時間モノ」とも言われる物語類型の一つで、日本のサブカルチャーやジュブナイルものでは頻出する設定です。半永久的に反復される時間から、何らかの方法で脱出する

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        バトロワゲーム”APEX”のグロータワーはなぜあの形なのか?—アグリビジネスで考える

        • 山月記の李徴にあこがれる若者も、多いんじゃないか

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        • ループ作品における「孤独」を克服したSFゲームOuter Wildsとグノーシア――物語構造の比較論考①

          分業はどの程度が正解なのか?

          18世紀の経済学者アダム・スミスが”Division of Labour”という言葉で示した「分業」は、社会における労働の生産力を高める原因であると考えられてきました。スミスいわく、分業を引き起こす原理とは、人が交換性向というコミュニケーションの原理を持っているからであり、分業の成立に伴って、人は必要なモノを交換によって獲得することができるようになったということです。 しかし、社会を経済的に合理化するこの分業ですが、極端に進みすぎると、様々な弊害が生まれることも分かっていま

          分業はどの程度が正解なのか?

          公正取引委員会の歴史—巨大ITプラットフォーマーの取締りを理解するために

          今月17日、公正取引委員会が公表した報告書は、巨大IT(情報技術)企業に対してネット広告の掲載基準の透明化などを要求する内容のものでした(1)。 広告配信会社では「米グーグルで突然、広告を出せなくなった」「特に中小事業者は巨大ITに命運を握られていて、リスクが高すぎる」「広告の価格設定や効果などがわかりにくい」との指摘が相次いでおり、また消費者の個人情報を広告に利用することが「優越的地位の乱用」にあたる可能性があることから、公正取引委員会は今回の報告書の公表に踏み切ったそうで

          公正取引委員会の歴史—巨大ITプラットフォーマーの取締りを理解するために

          ミャンマーで現在何が起きているのか?——基礎的なQ&A

          ミャンマーで現在起こっている国軍によるクーデターについて、またミャンマー自体についての基本的な知識を得たかったので、新聞記事のデータベースなどを使い、一問一答形式でまとめてみました! ミャンマーってそもそもどんな国?東南アジアの西端に位置する国で、正式名称は「ミャンマー連邦共和国Republic of the Union of Myanmar」といいます。旧称は、1948年の独立から74年まで「ビルマ連邦」、74年から88年まで「ビルマ連邦社会主義共和国」でした。その後一度

          ミャンマーで現在何が起きているのか?——基礎的なQ&A

          キリスト教に潰され普仏戦争で復活したオリンピック

          最近ちょっと忙しく、またしてもしばらく記事が書けていませんでした…なるべく毎日投稿できるようにしたいですね。 最近あったことを振り返ってみると、良くも悪くも「オリンピック」に関係するニュースが色々話題になっていたんじゃないかと思います。 例えば、元首相で東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長は「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」との発言で炎上中(1)で、1月4日の記者会見では菅総理が「人類が新型コロナに打ち勝った証し」として五輪を開催しようとして

          キリスト教に潰され普仏戦争で復活したオリンピック

          大統領制はどのような経緯で生まれたのか?

          しばらく投稿できておらずすみません!今回はリハビリかねてごく短い記事です。 ーーーーーーーーーーーーー 中公新書公式アカウントさんが、ちょっと前にこんなことをツイッターで発信されていました。 いまだに陰謀論などに惑わされて「バイデンは選挙で不正をした!」と宣う方々はアメリカにも日本にもいっぱいいますが、それはさておき。 首長制の一つでもある「大統領制」、私は大学でアメリカ史専攻だった割によく知らなかったので、今回は大統領制について調べ、考えてみました。 大統領制はアメ

          大統領制はどのような経緯で生まれたのか?

          第一次世界大戦の勝利には「冷凍食品」が不可欠だった?

          サムネイルのバック画像はIWM(Imperial War Museum)”TRANSPORT AND SUPPLY DURING THE FIRST WORLD WAR”よりお借りしました。 今日のお昼に食べたマルハニチロの冷凍食品「石焼風ビビンバチャーハン」がめちゃくちゃうまかった(ダイレクトマーケティング)ので、今日は冷凍食品について調べてみました(なんで…?)。 (上の画像だと12個入りですが、スーパーだったらバラ売りで税抜き278円で売ってたので、そっちで買ったほ

          第一次世界大戦の勝利には「冷凍食品」が不可欠だった?

          保険制度は「旧約聖書」と天文学のおかげでできた

          今月13日の会見で、菅首相が「国民皆保険の見直しに言及した」とする投稿がSNS上で広がりましたね⑴。 このニュースを新聞紙面上でとりあげているのは、今のところ全国紙の中では朝日新聞だけなので、この件自体についての是非はこの記事では問わず、静観したいと思います。 が、ふとおもったことがあったので、この記事の執筆に着手しました。それは——「私たちが、あって当然のものと考えている国民皆保険、もっといえば”保険”という大きな制度が、どのような経緯で生まれたのだろう」ということです

          保険制度は「旧約聖書」と天文学のおかげでできた

          老化とアンチエイジングの人類学—”淘汰”にあらがう意義とは

          東大・九大・新潟大などの研究グループが、老化細胞を選択的に除去するGLS1阻害剤が、加齢現象・老年病・生活習慣病を改善させることを証明したというニュースが今朝、話題になっていましたね(1)。 このような研究は、老化の防止を助け、加齢によって自然に起こるシミやシワ、骨や筋力の衰え、動脈硬化や癌 (がん) をはじめ、生活習慣病の影響でリスクが高まるさまざまな病気など、その原因を抑制することを手伝う「抗加齢医学」の一種であると言えます(2)。ビジネスの文脈では「アンチエイジング」

          老化とアンチエイジングの人類学—”淘汰”にあらがう意義とは

          ヒトは陰謀論にハマるように進化してしまった

          今月の6日、米連邦議会でバイデン次期大統領を選出する会議を開いていた連邦議会議事堂内に、反対するトランプ大統領の支持者が大量に乱入しました(1)。トランプ氏が集会で支持者に議事堂に向かうよう促していたとされ、議事堂が約3時間にわたって占拠される、民主主義国にとって異例中の異例といえる事態となりました。 これらの勢力は、アメリカ合衆国で「Qアノン」と呼ばれる陰謀論者の扇動によって動かされたものでした(2)。Qアノンは、ネット上で「Q」を名乗る正体不明の投稿者が2017年、リベ

          ヒトは陰謀論にハマるように進化してしまった

          https://note.com/skybluebooks/n/nd9631be26423 『「ロジカルシンキングが重要」という主張の薄っぺらさ』、ありがたいことに大変好評です!お読みくださった皆さん、ありがとうございます。 まだ読まれてない方も、是非ご一読ください。

          https://note.com/skybluebooks/n/nd9631be26423 『「ロジカルシンキングが重要」という主張の薄っぺらさ』、ありがたいことに大変好評です!お読みくださった皆さん、ありがとうございます。 まだ読まれてない方も、是非ご一読ください。

          「生産性が低い」は本当にわるいこと?—サービス産業から考える

          日本は先進国のなかで労働生産性が低いといわれており、OECDデータに基づく2018年の日本の労働生産性は、就業者1人あたり7万7111ドル、就業1時間あたり45.9ドルで、OECD加盟国のなかでそれぞれ23位と20位に位置しています(1)。 批判的な文脈で用いられることの多い、この「生産性が低い」という形容ですが、じつは最近、サービス業についての労働社会学研究の文脈ではむしろ「質の高いサービスを提供していることの証左ではないのか」という成果があがってきています。いったいどう

          「生産性が低い」は本当にわるいこと?—サービス産業から考える

          新成人にお勧めの本

          昨日は成人の日でしたが、コロナ禍で成人式に行けなかった方もいるのではないかと思います。今回は「新成人にお勧めの本」と題して、新しく成人を迎えられた方あてに、おすすめの本をご紹介したいと思います。 少しでも、読んだ本で成人の思い出ができれば幸いです。 ーーーーーーーーーーーー 山口周『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社) 「すぐ役に立つスキルはすぐ役に立たなくなると同義」など、新しい視点で仕事ができる”ニュータイプ”的な人材が求められることを示した一冊。 常識を相対化す

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