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銀皮88 役者インタビュー #1 谷内一恵

空降る飴玉社のクラシックシアター
『銀皮の中のY(M)は、88℃の熱さを知っている。』
役者インタビュー #1 谷内一恵

Q. 今作で演じる役はどのような人物ですか

谷内:私、演劇関係者じゃない人にチラシ渡したりするんですけど、大体、一番上に名前が来ると「主人公!?」って言われるんですね。群像劇っていうと大袈裟かも知れないんですけど、作品自体がそんな感じのストーリーなので、もしかしたら私の役が一番観客に近いんじゃないかって。個性溢れる人たちが登場するんですけど、その登場人物たちとお客さんとのパイプを繋げればいいなと。頑張りますね。

−他の役者とはまた違う立ち位置といった感じなんですか?

谷内:他の人たちの中では一人だけ枠外にいると思っていて。あくまで主軸となるストーリーというか、話が進んでいく中での一本ではあると思うんですけど、そこで出会った人たちを受けてっていうお芝居が多くて。主人公なんですけど、「私が、私が!」っていう主人公では全然なくて、それ(周りの人)を受けている芝居をするシーンの方が多いんですよ。自分の台詞が少ないというか。

−私も谷内さんが主人公なのかと思って読んだら「あれ?そうでもないな」って

谷内:結構W主人公制をとることが多い。『ランプアイの唄』も、私めちゃめちゃ台詞少なくて。Wヒロイン制になっていて、始めのヒロインから後半になったらヒロインが入れ替わって私になっていたんですけど。今回も基本は私が主軸で主人公をしているんですけど、ラストのシーンを締めるのが別の役がくるっと反転して出てくる構成になっている。

−空降る飴玉社のイメージがもっと分かりやすいドラマかと思ったら、意外と人間関係が複雑? というか、何だろう…

谷内:細かいですね。繊細と言えばいいのか。飴玉社は人をちゃんと描く芝居だと思っていて、私の演じる役よりかは他の8人の演じる人たちのほうがより人間味があって、そこにいてくれることで主人公が主人公として立てるのではないかと。周りの人によって描かれたもので浮き出る主人公。


Q. 作品のテーマにまつわるご自身のエピソードがあれば教えてください

–珈琲について何か思い出とかありますか?

谷内:あんまりないんですよね。元々紅茶か珈琲だったら珈琲なんですけど、体調悪かったら紅茶に逃げちゃうし(笑)最近までずっと甘い珈琲しか飲めなくて。ミルクめっちゃ入れる、砂糖めっちゃ入れるっていう珈琲しか飲めなかったんですけど、ドリップとかをやり始めると意外といけるってことに気付いて。

–ご自身でやられてるんですか?

谷内:最近ちょっと家で。役作りも一環で。知り合いもちょっと興味があったから一緒に始めてみたり。それで飲むとインスタントよりかは全然やっぱり……。今までちゃんと飲んだことがなかったんだなあって。ビールも苦手だったんですけど、会社で飲むようになってから飲めるようになって、むしろ今好きだし。なんかもう、そんなもんなんだろうな。

−ちなみにお盆とか送り火とかの思い出とかありますか?

谷内:母の祖母が岡山だったので、お盆の時期は岡山に行くことが多かった。だから夜に家を出発して車で高速に乗ってドライブするイメージがあります。

–実家ってあったかいですか?

谷内:私の?(笑)

–作中でも家族のやりとりが多いと思うんですけど、兄弟とか家族とか…

谷内:ぶっちゃけトークになりますけど、両親が仲悪くて冷戦状態で、子ども挟んでしか会話しない。その分妹とは仲良くならざるを得なかった感があった。でもたまにねぇ「本当に私ここの子かな」と思うぐらい家族と価値観が違って(笑)なので私もそんなに平和な家に生まれていないとは思うんです。

−作中の弟はどうですか?

谷内:一緒にいて楽だけど若干手間がかかるな。っていうイメージでやっていますね。


Q. これまでの空降る飴玉社の作品と比べた今作の印象を聞かせてください

谷内:ちょっとずつ変遷していっているというのは感じる。私が最初出させてもらったのが飴玉社としては珍しくハートフルコメディー的なやつだったんですよ。ドタバタコメディーの4姉妹の話で。それも異例だと聞いていたんですけど、そのあとも加藤さんが書いているのを見ていて、前回のオリジナル作品『ランプアイの唄』が転機になっていて。自分の書き方を常に更新して書かれてはいるんですけど、前回ガラッと変わった印象を受けた。
今回オリジナルが1年ぶりで変遷期だと思っていて、お客さんに見守ってもらいたいなとは個人的に思っています。
今作はがむしゃらに頑張れる人を応援するような作品。がむしゃらに頑張るって最近見ないなと思う。自分を犠牲にするようながむしゃらさじゃなくて、本当に何か一つのことに一生懸命になっているがむしゃらさを見る機会ってなかなかない。それができるっていうのも才能だと思って、「そういう人たちの応援には絶対になるよな、これ」って。
前提におきたいんですけど、決して加藤さんはそういうのをいい作品として描こうとはしていないんです。でも結果的にやっている人間や観ている人間からしたらそういうふうに感じるところがある。

–いろいろなところで思うんですけど、作家と演出と役者個人とスタッフそれぞれと制作とで伝えたいことや観客に与えたいことって違うと思うんですよね。この作品に出ようと思った理由は?

谷内:一応座付きのメンバーになっているので公演をやるってなったらスケジュールを押さえる。劇団員ではないので飴玉社がどんな作品をやるかってところは口出ししない。スケジュールを押さえて出るってだけの役割なんですけど、飴玉社に一番最初に出たのは、私4年芝居を休んでいてそろそろ復帰したいって思って、でも4年経ったらガラッと入れ替わってて「知らない人ばかりだ、やばい」ってときに募集を見かけて。大体「オーディションします」とか書くじゃないですか。そうじゃなくて、「一緒に作ってくれる人いませんか?」みたいな、わりと謙虚な書き方をされていて。私はオーディション受けない派なので。苦手で。で、いいなーと思って。それで『ボルガライスは、Que buena!』に出させていただいて。その時、募集年齢制限してたんです。「オーバーしてますけど大丈夫ですか?」「大丈夫です、見えるんで!」って(笑)
一緒に作っていくなかで、作り方が私とすごい似てるなと思った。中学から演劇をやっていたんですけど、大学で演劇をしてカルチャーショックを受けた。「演劇ってこんななの?」って。ずーっと苦手意識があったまま続けていた。中学のときは演劇の基礎ががっちりしていて、いろんな考え方やメソッドをある程度見て、中身も考えて作る。突き詰めていく。大学はわりとスタイリッシュだなって。キャパが違うからこそ細かくしたほうがいい。体育館では細かいことやっても伝わらないんですよ。身振り手振りも。だから、逆に小劇場はここが見せられるのにもったいないなってずっと思ってた。でも演出から受けるダメ出しは「もっと早く喋って」。「え、もうそれあとで調整すればよくない?」っていうことばかりのダメ出ししかなくて。良いと言われる役者さんの評価も違って、自分を出せて自分自身を表現できる人が人気が出るんですね。私基本それできない人間なので「やっぱり苦手なんだな」と思ってずっと過ごしてたんですけど、加藤さんと出会って芝居の作り方を見て、その空間にいる当たり前さをどう表現するかとか、この人とこの人との関係性でこういう引っ張り合いがあるからこういう台詞が出るんでしょとかそういうところをきっちり作っていきたいというところに共感した。

−うん。空降る飴玉社はそこなんだなって。なんかそれを谷内さんから聞けただけで、今日ここに来た甲斐がありました。本当にありがとうございます。

2019.7.20
インタビュイー:谷内一恵
インタビュアー・編集:しき(來來尸來)

公演情報

空降る飴玉社のクラックシアター
『銀皮の中のY(M)は、88℃の熱さを知っている。』

脚本・演出:加藤 薫

《公演日時》
2019年8月15日(木)14:00/19:00
8月16日(金)13:00/18:00
8月17日(土)13:00/18:00
※開場は開演の30分前です。
※満席時はご予約にて日時指定頂いたお客様優先となります。

《料金》
当日 1,500円
前売 1,300円
Twitter割引1,000円

《会場》
人間座スタジオ
〒606-0865 京都府京都市左京区下鴨東高木町11

《予約》
https://www.quartet-online.net/ticket/ginpi_88

《Cast》
谷内 一恵
音蔵 乙葵
大谷 彩佳(同志社小劇場)
青木 琴音
出町 平次(來來尸來)
坂口 弘樹(勝手にユニットBOYCOTT)
ナカメキョウコ(エイチエムピー・シアターカンパニー)
藤村 弘二

菱井 喜美子(人間座)

《STAFF》
舞台監督 :長峯 巧弥
照明 :御手洗 幸助
音響 :鈴木 邦拡
舞台大道具:ユー(劇的集団忘却曲線/トイネスト・パーク)
舞台美術 :塚田 縁
衣裳 :松崎 雛乃
小道具 :加藤 薫
宣伝美術 :えび天(劇的集団忘却曲線)
イラスト :吉村 紗奈
制作・広報:吉田 香月(LPOCH)、しき(來來尸來)、田中 直樹(劇団ひととせ)、かづちやえ(演劇Unit∮Ring)

《あらすじ》
何百回も何千回も淹れた珈琲は、シンクに捨てられた。

毎年五山の送り火の夜に、祖母が大切な人たちに振る舞う珈琲は、人と人を繋ぐ力がある。たとえ離れてしまっても編んで繋いでいく不思議な力。
私にもいつか、そんな珈琲を淹れることが出来るだろうか。

ある日の夕方、実家にいる弟から電話がかかってくる。

ばあちゃんが怪我をして病院に運ばれた

淹れかけの珈琲をそのままに、私の夢が詰まった店に「closed」の看板をかけて深夜バスに乗り込んだ。

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